表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/23

9.白星の予言


 小松が加わり、4人となった一行は、相も変わらず、魔の森を彷徨っていた。

「なんで、こんなところに来ているんだ、私たちは……。街とは正反対じゃないか」

渚沙が、そんな言葉と共にため息をつく小松に、何度目かになる説明をする。

「しかたあるまい。咲耶が行くと言ったのだから」

 何度聞いても同じ答えを返す渚沙に、あきれた様子の小松。

「だから、なぜそこで咲耶が出てくるのだ?」

渚沙は、物わかりの悪い子供を見るような、じとっとした目で小松を見た。そのあと、諦めて、リィへと視線を移す。

「ン? 説明役を俺に丸投げする気カ? エ~。面倒だナァ」

糸のように細い目は、相変わらず、笑っているように弧を描いている。しかし、眉は眉間によっていた。

「そうはいっても、リィしか予言を知るものがいないのだから、しょうがないだろう」

「予言、とは?」

小松に、そこからか、と眉を歪ませるリィ。かなり大雑把に省略された説明をする。

「時の予言のコト。時見が見た“時”を予言として周囲に伝えた物を、時の予言と言うんだヨ」

「……して、その予言とは?」

小松の瞳は、らんらんと輝き、好奇心に満ちあふれていた。佐保と、さほど変わらないくらい幼く見える。

「……面倒」

リィが、ぷいっと、そっぽを向いた。

 小松から非難の目を向けられた渚沙が、説得にまわる。

 散々説得された後に、リィは渋々言葉を紡ぎ始めた。



 ――白星に聞いた、と言う設定(こと)にしてあるからネ。


 仕方なく、白星の予言を、記憶から、言葉に直す。目を絶対に開くまい、と力を入れた。



     ――時は、災厄の子供に導かれん。

     されど、その子供、力をなくしたりて、自らの意思も不確かなり。

     その子供、目覚めさせるは星なり。

     王に背く汝ら5人は、闇星なり。

     子供の元に星が集うとき、世の理は乱れん。

     行き先は、子供が示す。

     星は子供の元へと集い、子供は自らの力へと星を導く。

     災厄の子供が目覚めるとき、世は崩れ、乱世とならん。


     されど、時の傍観者が来ん。

     その人は、時を動かする人なり。

     その人の事は我にも分からざるが、世界はその人をもって動かされん――



「それが、時の予言か」

 小松の言葉をきっかけに、沈黙は破られる。

「“白星の”時の予言ネ。時の予言は、時を見る者によって、立場や、その鮮明さも変わるかラ」

リィは、些細なことでも大切なことなんだ、といって訂正する。

 渚沙も初めて時の予言の全てを聞いたので、かなり驚いた。


 ――白星から聞いたものよりも、長くて、言葉遣いも違う。やはり、あれは、唯の伝言だったのだな。


 そんな中、咲耶が、ぽつり、と言った。

「意味が全然わかんない」

その言葉に、リィがピクリと反応した。

「まぁ、予言の言葉遣いのままだしネ……。でも、知らなくてもいいことダ」

「えー。でも、咲耶だけ分からないんでしょ?」

咲耶はだだをこねる。困ったような顔をして、咲耶をさとすリィ。


 ――いつも目の細さは変わらないのに、よくあんなに表情豊かに表現できるな……。


 聞いた時点で予言の内容が理解できる渚沙は、そんな余分なことを考えてしまう。

「分かるときまでは、知らなくていいんだヨ。いずれ、分かるようになるかラ」

 その言葉を聞き、リィのとった行動が、咲耶自身のためであることに、渚沙は気づいていた。


 ――本人に、“災厄の子供”の意味を教えたら。咲耶が、忌み子であることを知ったら。優しい心を持つ咲耶は、きっとものすごく傷つくから。


渚沙の心の声は、リィの言葉と重なる。


「だから、咲耶は、まだ知らなくていイ」


目を開けまい、とするリィ。

リィの持つ時見の杖と、「白星から聞いたということにしてある」と言う言葉――。

早くネタバレしたい! してしまいたい!

最終回は遠いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ