その2
久しいとは言えないかもしれないし、言えるかもしれない。それは読者諸君が先のページを読み終えてからこの場面にまで来るのに要した時間による。よって一概には言えないのだ。
何はともあれまた会えたな。いや、また見てくれたな。嬉しいよ。一方的にとはいえ、自分の発信する意図の通りに見てくれるとうれしいものがあるのだ。
さて、それはそうと、私は用意された仕事をしなければならない。この語り部である。私自身この物語に出ているので、何とも恥ずかしいものがあるが、残念ながらこの世界は役割のみで動いているようなものであるので、それを放棄することは存在の放棄であり、そもそも放棄などさせてくれない。まさに畜生のような存在として生まれてしまった。チクショウめ。
大体、自分の意志が誰かによって無理矢理発信、もしくはそう思うように誘導されたのならそれはもはや、自分の意志とはいえない。他人によっていいように変えられた意志であるから、他人の意志、あるいは誰の意志でもない宙に浮いた意志である。
私はそんな不確かなことしか発信できぬ哀れな操り人形である。糸をクイクイしている者は近くて遠い場所に存在している。もし手が出せるのなら掴みかかって質問攻めにでもしてやりたい。聞きたいことはいくらでもある。
そう考えると、このページの最初で言った自分の意図はもはや、誰かしらの意図になってしまっているわけだ。
と、そんなこんな事を言っているうちに、このページでの仕事が終わりそうだ。本来の物語の冒頭を紡ぐという責務を果たし損ねてしまった。
まあ、つぎのページにてゆっくり果たすとしよう。今回は、今回も、私の愚痴になってしまったな。すまないすまない。
またしても私はいったん下がるとしよう。語り部でいる以上、次のページにいるのも必須なのだがね。