その1
初めまして。読者諸君。早速だが、これは小説というよりは、ジャンル分けのない作品である。強いて言うなら作品というジャンルである。それを念頭に置いてほしい。したがって、諸君らが想像する様な山場や見せ場なるものは、ないかもしれないし、あるのかもしれない。それは諸君の感受性次第である。ここまではご理解していただけだろうか。賢明な読者諸君なら容易く理解しただろう。してくれただろう。
ちなみにではあるが、私はこの作品の主人公ではない。そもそも矢面に立つのが苦手な人間だ。いや、苦手な人物だ。しかし、この作品を成立させる以上は登場せざる得ないわけであり、それは絶対なのだ。したがって、私はこの作品上に登場しているし、このように語り部として存在している。このように私の意見を尊重する気もなければ、聞く気もないような鬼畜外道な輩には本来であればしかるべき場に出て、しかるべき手続きに時間を費やし、しかるべき言論の闘争へと事を運ぶ所存でもある。
それができないのがこんな世界に生み出された弱みである。所詮は傀儡なのである。嗚呼、無情。
これ以上私自身の境遇に嘆いていても仕方がない。早速始めるとしよう。語り部を務め、作中にも登場するこの私は、日之影 影一である。私以外の人物はおいおい紹介して行くとする。
では、これにて私はいったん下がるとしよう。なに、すぐ会えるさ。次のページとかで。