新たなる侵入者
◇ヒトリ島・4日目◇
翌日。
最初の部屋に移動して、外に出ようとした私は、通路に水が溜まっている事に気付いた。
「雨?」
水を吸収して外を確認すると、やはり雨が降っていた。
100DPを消費して、この通路が雨を自動吸収する設定にする。
残り、1,080DP。
「今日は雨だから、外に出られないよ」
『たまご』達にそう言って、さて、今日は何をしようかと考える。
あれ? そう言えば、此処って偽装用の部屋だったよね?! こんな寝床在ったら、不自然!
良し! 今日は、『たまご』達の部屋を創ろうか!
そこで、ふと、部屋の場所を創り間違ったらどうするんだろうと思った。諦めるしかないのだろうか?
【ヘルプ】を見てみると、DPを消費して並べ替えられる事が判った。
蜂部屋・虫部屋・コア置き場を北東方向に移動して、最初の部屋と私の部屋を地下一階に変更しようかな?
必要DPが多かったので、前者のみ実行。
残り、580DP。
次は、『たまご』達の部屋を用意する為に、私の部屋へ移動。
東方向に、新たに部屋を掘ってダンジョン化した。
私の部屋の荷物を新しい部屋に移す。
そして、私の部屋だった所を『たまご』達の部屋にした。
最初の部屋から此処に繋がる通路は、干し草で隠してある。完全に隠れていると良いけれど。
更に、トイレ部屋への移動が大変なので、私の部屋の北東方向にトイレ部屋を創った。此方のトイレは偽装に関係無いので、用を足したらダンジョンに吸収する事が出来る。
これで、残りは560DP。
「ん? 何?」
『たまご』達が、何か要求するように私の足を軽く突いた。
「……あ! 餌!」
私は、慌てて餌箱と鳥の餌(虫)を各10DPで交換した。
残り、540DP。
「ごめんね! 忘れていて!」
『たまご』達が餌を食べるのを見ながら、虫部屋の虫達の餌も忘れていた事に気付いた。
しかし、あれは何度も見たい光景では無い。
自動餌やり設定とか出来ないかと【ヘルプ】に目を通す。
眷族の食事
眷族は、食事の代わりにDPで生命維持が出来ます。これは、一日一回自動で消費されます。
消費してたっけ? あれだけ居るのに、1DPにも満たないのかな?
メニューを閉じようとして、私は『モニター』タブに気付いた。
選択してみると、ダンジョン内の好きな場所を見る事が出来ると判った。
現在は、入口付近が映っていて、外が見えた。
これなら、一々入口に行かなくても外の天気が判る。便利だな。
って、あれ? ダンジョン内なら何処でも見られるって事はつまり……。トイレ部屋も見れるって事で……。此処には私しかいないけれど、他のダンジョンには……。
この件を深く考えるのは止めよう。
取り敢えず、ペット部屋・蜂部屋・虫部屋も一応、排泄物自動吸収設定にした。
DPは、残り240DP。
後は、何して過ごそうかな? 雨は止みそうにないし……。
私は、交換リストを眺める事にした。
へー。魔力で動く電化製品か~。レンジ欲しいな。
電力で動くのが60DP・魔力で動くのが160DPか。
残りDPを確認した私は、今日は交換しない事にした。
そう言えば、偽装はあれで大丈夫だろうか?
まだ何か必要なものがあるんじゃないだろうか?
そんな事を考えながら、ノドが乾いたのでコップに水を注いで飲む。……これだ!
でも、小舟で持って来られる水なんて限られているよね?
何か良い方法が無いか、夜に水海に聞いてみよう。
他に必要な物は……後は、鍋? とお玉か。皿と箸も。って、箸文化じゃないかも。
これも水海に聞こう。
『私、考えたんだけど』
夜。コールを受けて早々、水海が言った。
『鳥の【コドク】が絶滅したと解ったら、島に来る人は居なくなるんじゃないかな? 聖剣使いに見付かるのが一番ヤバいんだから』
「確かに、そうだね」
多少強化した所で、焼け石に水だものね。
『出来ればコドクも見付からないようにして。誰が聖剣使いの仲間なのか、判らないんだから』
「解った」
ダンジョンを探す諜報員が居るかもしれないって事かな?
「それで、偽装部屋なんだけど、水を置かないと不自然でしょう? 海水を真水にする方法とか知らない?」
『えっと……』
水海は、横に視線を向けた。
『大鍋に海水を入れて、その中央にコップを置く。蒸気が漏れないよう布で鍋に蓋をする。中華鍋に海水を入れて鍋に乗せて、焚き火にかける。蒸気が中華鍋の底で冷やされてコップに溜まるよ。でも、日持ちはしないらしいから、鍋とコップさえ置いておけば、水は無くても不自然じゃないかも』
「そうなんだ。ありがとう」
私は、薄い木の板(10DP)の上に、大鍋(40DP)・中華鍋(40DP)・布(10DP)を交換して乗せた。
これで、残り140DP。
「それと、もう一つ。この国って、箸を使う文化かな?」
『うん。そうだよ』
食器セット(40DP)を交換して、箸とコップと皿一枚を板の上に乗せる。
余り多過ぎても不自然だろうしね。
後は、まな板(20DP)とお玉(10DP)を交換。お玉は二個セットだったので、一つだけ置く。
後、70DP。
「後は何も無いよね?」
『ランプは?』
「あ」
オイルランプ(植物油入り)を20DPで交換して、未使用だと不自然なので【着火】で火を点ける。
「後、50DPしか無い~!」
私は、DPが残り僅かと言う事実に、思わず叫んだ。
『……どんまい』
「気にせずに居られるか~!」
その夜は、10DPで空腹と渇きを癒した。
◇ヒトリ島・5日目◇
翌朝になると雨は止んでいた。
しかし、まだ波は高かったので、釣りはしない事にした。
スズメバチに鳥を狩って貰う。しかし、鳥の数は少なかった。
現在、DPは80。
昼過ぎ、私は侵入者が島に入った事を察知した。
しかし、その人物は何時まで経っても其処から動かなかった。
不思議に思って見に行くと、波打ち際に男性が倒れていた。
船が難破して打ち上げられたのだろうか?
「大丈夫ですか?」
私は警戒を忘れ、思わず声をかけてしまった。
「う……」
男性が目を覚ます。
「此処は……? 私は一体……? そうだ! 船が転覆して!」
最初、男は記憶が定かでは無かったようだが、途中で何があったか思い出したらしい。
「貴女が助けてくれたのですか?」
私に気付いてそう尋ねる。
「いいえ。打ち上げられているのを見付けただけです」
答えながらも、声をかけるべきでは無かったと内心反省する。
「そうですか。ところで、此処はヒトリ島ですか?」
「……名前は知りませんが、島ですね」
「それは困りました。どうやって帰ったら良いのか……」
男はそう言って、陸地の街を見詰めた。
「私の筏を使って良いですよ」
先日の侵入者達が乗って来た船は、既に流してある。
「良いんですか?! 助かります! 村に戻ったら返しに来ますから!」
安堵の表情を浮かべる男を見て、私は、何故彼は首輪をしているのだろうと思った。
「ところで、私は身重の妻に精を付けさせようとコドクを捕まえに来たのですが、貴女もコドクが目当てで?」
「……いえ。私は人が居ない所で暮らしたくて」
「そうなんですか? 何があったか知りませんが、人は独りでは生きていけませんよ。一緒に陸に戻りませんか?」
男は私を説得する。
「いえ。今は……。戻りたくなったら戻ります」
「そうですか……」
「それより、身重の奥さんがいるのに危険な事をしたら駄目ですよ」
「はは……。そうですね。これ位の波なら大丈夫だと思ったんですよ」
男はバツが悪そうに苦笑した。
◆所持DP◆
80P
◆覚えた魔法(現在Lv2)◆
Lv1:浄化・着火・散水
◆所持品◆
懐中電灯・筏(偽装用)
【最初の部屋=偽装部屋】
シャベル・草刈り鎌・釣竿・餌・バケツ・タオル・タモ・盆ザル
木の蓋(トイレ用)・ボロいマント・干し草・オイルランプ(植物油入り)
木の板・大鍋・中華鍋・布・箸・コップ・皿・まな板・お玉
【ペット部屋】
猫用ベッド四つ・餌箱
【コドクの部屋】
寝袋・マット・保温シート・ラグ
ミニ七輪・オガ炭・包丁・まな板・小型の鍋・小型のフライパン・お玉
食器セット・食器セット(箸・皿一枚・コップ抜き)・ボウル
塩・醤油・ピッチャー(飲料水入り)・食用油
カラーボックス・ハサミ
◆眷族◆
スズメバチ(群):眷族になった事で毒がパワーアップしている。
キラーホーネット:スズメバチ型モンスター。幼児大。
コドク:眷族になった事で、メスは毎日卵を産むようになった。
ローグゴブリン:モンスター化したゴブリン人。
ローグオーガ:モンスター化したオーガ人。
◆食料リスト◆
生魚(数種)・焼き魚(数種)・干し魚(数種)・スズメバチ(成虫)
コドク(成鳥)・コドクの卵(生)・コドクの卵(固茹で)・コドクの卵の卵焼き(醤油)