後味が悪い話
妊婦が転んで……。
2018.03.31 ドワーフの背の話を訂正。
◇ヒトリ島・12日目◇
朝起きて天気を確認すると、雨だった。
「じゃあ、今日は、肉を解体して貰おうかな?」
「おう」
解体ナイフセットを140DPで交換。
残りは、100DPしかなくなった。
でも、それを使ってマツの部屋を血液自動吸収設定に変更した。
スプラッターは苦手だから、仕方ないね。
これで、0DPです!
「って、豚とか交換するDPが無い!」
「マスター……」
マツが、可哀相なものを見る目で私を見ている気がする。
「だって、しょうがないじゃない! 見たくないんだもの!」
「DP少ねえんだからさ」
「判ってたけど!」
交換の事が頭からスッポリと抜けてしまっていた。
「あ~……。晴れたら、釣りお願いします」
「おう」
さて、後は何をしようか?
食事は、『たまご』が産む卵があるから良いとして。
「マツは何をするの?」
「……素振りでもするかな?」
マツは、解体ナイフセットを見ながらそう答えた。
「剣とか出せなくてごめんね。ハードモードだからリストに無い」
「仮に有っても、DPの無駄だろうが。これで良いよ。これで」
「苦労かけるねえ……」
ローグなのに、良い人だねえ……。泣けて来るよ。
「私は……。掘るか」
そんな訳で、私の部屋から東へ向かって掘り、新しい部屋を造る事にした。
勿論、ダンジョン化は明日以降になる。
そうして、掘っていた所、ガツンと硬い手応えが有った。
「何だ、これ?」
周りの土を退けてみれば、それは鉄の箱だった。
「何でこんな物が?」
考えても判らなかったので、後で水海に見て貰う事にした。
『馬鹿なの?』
夜。コールしてくれた水海にDPが0になった事を話すと、呆れられてしまった。
「返す言葉もございません」
『危機意識が無いと思うの』
「真に仰る通りで」
幼児(見た目)に説教される情けない大人の図。
『で、他には何も問題は無いの?』
「えっと、部屋を増やそうと掘っていたら、鉄の箱が出て来たんだけど」
私は、箱の側にしゃがみ込んだ。
「これです。何でこんな物が埋まっていたんだろうね?」
『多分、昔在ったダンジョンのでしょう』
そう言えば、この島には十年前までに別のダンジョンが在ったんだった。
「そっか。で、開けて大丈夫?」
罠が無いかと水海に確認する。
『うん。大丈夫。多分、武器とか防具とか金目の物だろうね』
中身は何かとワクワクしながら開けると、銀色に光る鎧の胸当てが入っていた。
「おお……!」
『ミスリル製だね』
「これが!?」
ファンタジー金属ミスリル!
「あれ? でも、この大きさだと、マツには小さいな……」
マツはオーガだから身体が大きいのだ。
『大丈夫だよ。サイズ変更のエンチャントがあるから』
「そうなんだ。ハードモードでそんな物、どうやって手に入れたんだろう?」
『強奪したか、購入したか』
購入だって難しいのではないだろうか? あ。冒険者達の所持金……。
『ドワーフ製だから、輸入品かな~? ミスリルも神国じゃ採れないしね~』
「ドワーフも居るんだね」
『うん。あ。この世界では、ドワーフ=ダークエルフだから』
「そうなの?! 何で?!」
私は、一般的なドワーフとダークエルフをイメージして、共通点の無さに、どうして同じなのかと驚いた。
『さあ? ダークエルフを略してドワーフとか?』
略して「ドワーフ」になるか? 「らっしゃーせー」みたいな?
「ダークエルフ」→「ダールフ」→「ダーフ」→「ダアフ」→「ドアフ」→「ドワーフ」?
「ドワーフがダークエルフって事は、魔法使えるの?」
『使えるからこそのエンチャント』
「あ。そうか」
『まあ、エルフ程の力は無いらしいけれど』
「で、体型は?」
果たして、どちら寄りなのか?
『小柄で、細身』
細身なのか。
「マッチョじゃないんだね」
『そうだね。採掘用魔導具か機械を使っているから、筋肉付かないんじゃないかな?』
「なるほど。そりゃ、そうか」
技術力があるんだから、便利にする機械とか造るよね。
『背が低いのは、大人になる前に成長が止まるからだって』
「ユティ神国にエルフは居るの?」
『さあ? 一人や二人は居るかもしれないけれど、歴史上要職に就いた人はいない筈。そもそも、かつて神と呼ばれた種族が、ユティ神以外の神を邪神とするユティ神国に行きたい訳が無い』
「それもそうだね」
邪神として殺されるか。可能かどうかは兎も角。
水海とのコール後、マツに鎧を渡したら、とても喜ばれた。
◇ヒトリ島・13日目◇
翌日は晴れたので、マツに釣りをして貰い、私は海に潜った。
DPは、70になった。
昨日掘った部屋をダンジョン化し、私の部屋を其処に変更・ペット部屋を私の部屋だった所に変更・ペット部屋だった所をマツの部屋に、そして、マツの部屋だった所を多目的部屋にする。
◇ヒトリ島・14日目◇
今日も同じように過ごし、DPは120になった。
その夜。
水海とのコールを終えた後、マツの部屋でマツと雑談をしていた私は、船着き場方向に侵入者を感じた。
「こんな時間に?」
「俺が出るか、マスター?」
「ううん。なるべく安全に行きたい。虫を使うよ」
私は、【土掘り】でスズメバチ部屋への通路を広くし、マツの部屋の前の通路とトイレへの通路を土で隠した。
これで、侵入者は素直にスズメバチ部屋へ向かうだろう。わざわざ隠し通路を探したりはしない筈。
虫達を起こし、迎撃に備えさせる。
そこへ、侵入者が入って来た。
「サクリム……」
モニターに映る出入り口からの通路を、ランプと剣を手にしたサクリムが降りて行く。
「手にしているの、聖剣かな?」
「あれは、ただの銅剣だと思うぜ」
横から見ているマツの言葉に、一先ず安心をする。
サクリムは、夫が寝付いた隙に家から出て来た。
夫であるファンは、まさか妻が妊娠中に邪神討伐に行くとは夢にも思わず、彼女にヒトリ島の新ダンジョンについて話していた。
彼女も、話を聞いた時には、邪神討伐に行こうとは思わなかった。
しかし、邪神の可能性が高い少女と会い、これなら勝てると思った事。
そして、彼女と聖剣使いについて話し、邪神を討伐出来なかった悔しさを思い出した事で、討伐したい気持ちが湧き起こったのだった。
最初は、妊娠中である事を自身に言い聞かせ我慢していたが、思いは募る一方で、とうとう、「あんな弱い奴、聖剣使いだった私なら妊娠中でも問題無く倒せる。実力差があるから呪いも大丈夫」と言う慢心から、この島にやって来たのだった。
まあ、当然の事ながら、邪神はファンが建てた家には居なかった。
ダンジョンの入り口から、立って歩けない高さの通路を降りて行くと、途中から通路は曲がり、登りになった。
直ぐに立てる高さの小部屋に出たので、腰を伸ばしたサクリムは、ランプの明かりに照らされた無数のスズメバチを目にした。
「ヒエ~!」と言う悲鳴を上げ、サクリムは倒れた。
妊婦が腰を打ったら、どうなるか?
「後味悪いわ~」
サクリムとか銅剣とかを吸収した私は、そう呟いた。
DPは、2,050増えて2,170になった。
「どんな死に方させるにしろ、腹の子も死ぬだろう。マスター?」
「そうなんだけど、流産して錯乱する女性は見たく無かったなって」
聖剣使いに選ばれる程の人間が、まさか、スズメバチの大群に驚いて転ぶとは思わなかった。
キラーホーネット部屋まで行くだろうから、キラーホーネットとパラ……、パラパ……、パラ……何とかで殺すつもりだったのに。
これで、聖剣使い来ちゃうよね? あ~!
虫に弱い人ばっかりだったら良いのに!
◆所持DP◆
2,170P
◆覚えた魔法(現在Lv4)◆
Lv1:浄化・着火・散水
Lv2:土掘り・潜水・衣類乾燥
◆所持品◆
懐中電灯・筏(偽装用)・木の蓋(トイレ用)
【小屋】
シャベル・草刈り鎌・釣竿・餌・バケツ・タオル・タモ・盆ザル
ボロいマント・干し草・オイルランプ(植物油入り)・布の袋・風呂敷
木の板・大鍋・中華鍋・布・食器セット・まな板・お玉
【マツの部屋】
干し草・毛布・オイルランプ(植物油入り)・布の袋・風呂敷
解体ナイフセット・ミスリルの胸当て
【ペット部屋】
猫用ベッド四つ・餌箱
【コドクの部屋】
寝袋・マット・保温シート・ラグ
ミニ七輪・オガ炭・包丁・まな板・小型の鍋・小型のフライパン・お玉・土鍋
食器セット・ボウル・ピッチャー(飲料水入り)
塩・醤油・食用油・バター・味醂・砂糖・料理酒・酢・味噌(だし入り)
カラーボックス・ハサミ・ダイビングマスク
◆眷族(下記以外の虫は省略)◆
スズメバチ(群):眷族になった事で毒がパワーアップしている。
パラポネラ(群):眷族になった事で、毒がパワーアップしている。
キラーホーネット:スズメバチ型モンスター。幼児大。
コドク:眷族になった事で、メスは毎日卵を産むようになった。
ローグゴブリン:モンスター化したゴブリン人。
ローグオーガ:モンスター化したオーガ人。
◆食料リスト(一部省略)◆
魚(塩焼き・干し魚・刺身・バター焼き・煮付け)
貝(生・バター醤油焼き)
コドクの卵(生・固茹で・卵の卵焼き)
蕪・じゃが芋・にんにく・炊いた粟
ワカメ(酢の物・味噌汁)




