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運命



パーティーも終盤、ナツの隣には許婚が座っていて、後ろにはクレマチスが立っていた。

Mrs.カレンは貴族達に混ざっていた。


するとナツを真っ直ぐに見つめ、階段を登ってくる女をクレマチスが先に次にナツが気づいた。


「ごきげんよう。姫様、御両親はお目覚めになりませんか?」


当たりが凍り付くようだった。ナツの両親が深い眠りについていることは極一部の人しか知らないのだ。

何故この女性からそのような言葉が出てくるのか理解出来なかった。

そのとき女性を警戒していたクレマチスの視界の片隅に今にも零れ落ちそうなナツの涙が映っていた。


あぁ、やっぱり我慢していたんですね。


どこかで呑気にそんなことを考えていた。

それもつかの間女は笑い出した。

甲高い笑い声もパーティーの雑音でモラ王子にすら届かない。

完全に三人の空間だった。


「西に向かいなさい、そこに私はいるわ。」


その言葉だけを残して女は突然に消えた。

わけがわからなかったが、何かわかったきもしたがナツはその場にはとてもいられなかった。

気付いたときには走っていた。行き止まりで足を止めた。国を見渡せるバルコニーであった。

もちろんクレマチスは姫を追いかけ追いついていたが、そんなことは気にする余裕はなくナツは声を上げて泣いていた。

その声は紛れもない6歳児の泣き声だった。


そのときクレマチスはたった6歳の女の子が2年間もの歳月を強がり続けていたことを知った。


「ナツお嬢様。」


ひとしきり泣き終えた所を見計らって声をかける。


「クレマチスッ…あら、いたの。さっきの女性は何だったのかしら。父母の事を知っていたわ。」


6歳の女の子は尚も気丈に振る舞ってはいるが声からは不安が伝わってきた。

クレマチスはナツに歩み寄り目線を併せるべく床に膝をついた。


「お嬢様、朝のお約束覚えていますか?」


クレマチスの突拍子もない言葉にナツは驚きを隠せなかった。もっと話し合うべき事があるじゃないかと幼心に怒りがわいてきたがクレマチスの唇は次々と言葉を吐き出す。


「デートの話です。行きたいところはありますか?それともまた、お庭デートでしょうか?もし、行きたいところが無いのであれば私が決めてもよいでしょうか?」


クレマチスに圧倒されてしまった。無理もない。ナツはまだ6歳。これでも普通の6歳児よりは大人のつもりだが、クレマチスは一回り以上年上なのだ。圧倒されて当たり前だ。


そのときクレマチスが人差し指で(くう)を指す。

つられてその先を見た。街のずっとずっと奥に山が見える。


「私が行きたいところは、“西”です。きっとそこに何かがあります。また、泣くのを我慢して笑うおつもりですか?御父様御母様にまた、抱き締めてもらいたいのではないですか?」


そっと小さな手をとる。


「あの眠りは間違いなく魔法です。魔法は掛けた本人にしか解けません。他の方法もあるかもしれませんが…どちらにしろ先程の女にもう一度会うのが不可欠です。西に向かいませんか?」

「…でも、危険がいっぱい。私達まで魔法にかけられるかも。」

「お嬢様、これはここの人達には秘密ですよ。」


クレマチスの言葉に首を傾げたそのときナツの手を握っていたクレマチスの手から妖艶な光が溢れだした。


「私も魔法使いです。」


植物のツタや葉がみるみる溢れてきてあっという間にナツを囲んだ。


「私が貴女を護ります。」






青紫の花がそっと咲いていた。





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