6歳はもう大人
食事マナーのレッスンが終わり、ナツはクレマチスを探していた。
そう、ナツはクレマチスに“恋”をしているのだ。
3つの時に自国の王子の許婚となったナツであったがそんなことは関係ない。ナツはクレマチスが好きなのだ。
一回り以上も年上であり、使用人であり、何でも出来る憧れの人であり、想い人である。
もちろんクレマチスも他の使用人もナツの気持ちを知っている。
それでもそれを放って奥のはナツはまだ幼く、次期女王だと言う自覚がないからのだ。
「いた!クレマチス!デートの話だけども後にするわ。今からMrs.カレンがパーティーのドレスを見立ててくださるの。」
「それはようございました。Mrs.カレンにお伝えください。お嬢様を美しいレディに見立ててください。と。」
駆け寄り声をかけると、クレマチスが微笑み予想だにしない返答をしてきた為にナツは呆気にとられ、口を閉じてMrs.カレンの元へかけていった。
昼を過ぎると屋敷から一台の馬車が出てきた。
中には、ドレスを纏った6歳の少女ナツとその使用人クレマチス、それにMrs.カレンが乗っていた。
本日のパーティー会場である宮殿に向かっていた。
何故主役のナツが招かれる側かと言うとそれは次期女王であり、王子の許婚である姫君だからなのだ。
宮殿よりもはるかに小さな屋敷でバースデーパーティーはあげられない。単にそう言うことである。
国民が道脇によって馬車を見送る。皆が姫を認めている証拠だ。それを見たナツも悪い気はせず、ましてや良い気ばかりしていた。
「Mrs.カレン、みんながこっちを見ているわ。」
「えぇ、お嬢様は次期国王のモラ王子の許婚ですから。」
「私、王子とは結婚しないけど、こう言うのは嫌いじゃないわ。」
私達まだ6つですもの。と付け加えて俯いてしまった。
宮殿はそう遠くないはずだったが何しろ庭が広く、門をくぐってもまだ馬車は先を行く。
「ねぇ、Mrs.カレン、あなたはどうやって結婚したの?」
突然の質問にMrs.カレンも驚いた様ではあったが、夫との恋人時代の大恋愛を語り、6歳の娘と40の婦人は盛り上がる。
少々の疎外感を感じていたクレマチスは馬車が止まると同時に先に馬車を降りエースコートする。
パーティーは始まっていた。
6歳の姫の誕生日会と言うものはそう大それたものではなく、挨拶の後、高見でパーティーを見物するだけのものだった。そこは自他国から貴族が集まり、姫を一目見ようと国民の一部が宮殿を外から見上げていた。
元々、他国の王女ではなく自国の貴族を王子が許婚にするなどめったに無い話なのだから皆気になり集まるのも仕方のないことだった。
宮殿へ入ってしまえばあっという間だった。
皆最初は興味を向けていたものの時間と共にメインは国の貿易話、国王の仕事の場へと変わっていた。
ナツはもう目に見えて不機嫌だった。
それは隣に座る許婚、モラ王子のせいである。
食事作法はなっておらず、ナツにしつこく話かけてくるのだ。
6歳はもう大人、こんな子供じみた人と会話なんて交わしたくないわ。とナツは精一杯背伸びしていた。