ケンカ友達
意外とお気に入りです。
「鬱陶しいぞ、お前。俺の視界から消えろや!」
「少し静かにしたらどうです?できなければ貴方こそ僕の前から消えて下さい」
「ふざけんな!んなことしたら仕事になんねぇだろぅがよっ」
「その言葉、ソックリそのままお返ししますよ」
「この冷血×××(ピー)野郎、てめぇなんざ大嫌いだっ」
「奇遇です。それすらも嫌ですけれど、僕も同意見ですね」
「あ~、マジで殺してぇ。神様、今ここでこの鬼畜野郎が側溝に足を突っ込んでコンクリに頭をぶつけて死んだら、俺、真人間になるわ」
「そのどちらも可能性は無いですね。貴方こそ神様を冒涜した罪で自らコンクリに頭をぶつけてみなさい。少しはまともになれるかもしれませんよ?」
ワックスで流し、まるでライオンのような髪をしたガラの悪い男が、銀縁のスラリとした男に噛みつく。
「またやってる。ホントに仲が悪いよなぁ、あの二人」
二人の補佐についてきた男は、深いため息を吐いた。
これで何度目だろうか。
「お二人とも、仕事、仕事っ!」
こうして仲裁に入ることも。
70年後―――。
「なんでわしのお気に入りの場所にお前がいるんじゃ!」
「ここは皆の縁側ですじゃ。おぬしの好きにさせてたまるかの」
ぽかぽかの日差しが差し込む縁側に、おでこのきわまでハゲあがった頭の後頭部にライオンの名残がある老人と、バーコード頭に銀縁の眼鏡をかけた老人が座っている。
「まぐまぐ…羊羹は美味じゃな」
「わしがヨーコさんからもらったお菓子を勝手に食うな!眼鏡ジジィ」
「はぁ?耳が遠くて良く聞こえないのぉ」
「ボケジジィ、わしの可愛いミケまで手なずけおって!何十年経っても気に食わんっ」
「それは嬉しい限りじゃ。おぬしが好かんのは変わらんからのぅ」
お互いに口が渇いたのか、縁側に置いてあるそれぞれの湯呑みに口をつける。
ずずず、と、縁側に二人の渋茶をすする音が優しく響いた。