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ルナベルク王国の王宮物語。

私は王妃。

作者: 池中織奈

 陛下からの寵愛を無くしたにも関わらず、王妃としての責務を全うし、もう一度寵愛を受けようとしている健気で可哀相な王妃様。


 それが、私を直接的に知らない人達の見解らしい。










 私、リナーシャ・ルナベルクはルナベルク王国の王妃だ。今から20年前の13歳の時に後宮入りし、その3年後に第一王子であるルシアを身籠った。その頃、私は陛下であるウェオス・ルナベルクの寵愛を受けておりそのまま王妃となった。

 陛下の事は情熱的な愛と呼べるほど愛してはいけないけれどもそれなりに愛しているし、王妃となったことで実家の公爵家に利益があったからよかったと思っている。

 今私は33歳。一人の王子、ルシアと一人の姫、リオに恵まれ幸せだ。王妃としての責務は大変だけれどもやりがいがあるし、元々大人しくしてる性格でもない私は王妃としての仕事が楽しくて仕方がない。

 側妃だと仕事なんてないし、お茶会して自分を磨くだけの生活なんてつまらないじゃない。だから、正妃になれて仕事ができるのがうれしいわ。

 「母上! 父上は何故母上がこんなに一生懸命仕事をしているというのに、あんな女に!!」

 「ルシア、そんな言い方はよしなさい。ユリア様は現在陛下の寵愛を受けている方ですよ? あんな女呼ばわりしてはいけないわ」

 いきなり王妃の執務室で、そんな風に怒っているのは息子のルシアだ。

 私と同じ黄金に輝く髪に、陛下譲りの藍色の目が特徴的で、親のひいき目なしに美形である。

 私は現在、陛下からの寵愛は受けていない。8歳になるリオが生まれた頃、丁度私が25歳あたりから陛下は私に飽きたのか他の女の元によく通うようになった。数年に一度思い出したかのように私の所に来るが。最後に陛下が私を抱きに来たのは三年以上前である。

 それでいてコロコロ変わる寵妃なのだが、今陛下が夢中なのはまだ17歳である小国の王女であるユリア様だ。ユリア様は黒髪の可愛らしい女性で、穢れのない雰囲気を纏っており、好感の持てる方だ。

 「でも、母上は美しく、優しく、そして有能で完璧なのに、何で父上はっ!!」

 「いい加減、母親離れしなさい。それに私は陛下の寵愛は別になければないで構わないといっているでしょう?」

 書類に目を通しながらも、私の事で怒っているルシアに答える。

 まったく、ユリア様にいつかこの子がひどい事を言ってしまわないか不安になってくるわ。そもそも陛下は女好きなのよ。私に寵愛があるといっても、他の側妃の場所にも通っていたわけだし。後宮の側妃達の数もどんどん増えていくわけだしね。

 今は25人かしら。確か。そうなのよね、寵愛を受けるっていっても他の妃よりもよく足を運んでくれてるってだけだもの。そもそも、私が寵愛を受けてた期間が長くて異例だっただけだと思うわ。陛下は若い子が好きなんじゃないかしら。私ももう30過ぎだし、もっと若い子を相手にしたいんだと思うわ。実際寵愛を受けてる側妃達は皆10代か20代だもの。

 「ああ、お労しい…」

 「ルシア、変な妄想しないでほしいわ。私は別に悲観なんてしてないわよ?」

 「わかってます、わかってます! 母上は私の前だから強がっておられるのでしょう。本当は父上を愛しておられるというのにっ」

 「本当にわからない子ね、ルシア。私は本当に強がってもないわよ?」

 私の身近な人達って皆大体私が別に悲観してない事わかってるっていうのに、この子だけはこうなのよね。何て言うの、思いこみ? 妄想? 私の事に関してだけこうなのよね。

 強がってもなければ、寵愛がないからって嘆くほど陛下を愛してるわけでもない。

 今ののんびりと王妃の仕事をしながら読書をしたり趣味にはげむ日常に割と満足している。それなりに陛下を愛してるから、来てくれれば嬉しいけれど、来なければ来なくてもいい。

 他の妃達は陛下の寵愛をめいいっぱい受けたいって子ばかりなのだけれども、私は特にそんな思いはない。陛下の寵愛を失って嘆いてる子のケアをしたりして、仲良くなっておしゃべりするのも楽しい。ギスギスした嫉妬に満ちた関係なんてあんまり好きじゃないの、私。だからなるべく良好な関係を築いているのよね。

 「母上は優しすぎます!」

 「そう? それはともかくとしてユリア様とか、寵愛受けてた側妃達に酷い事をいったり態度を悪くしちゃ駄目だからね」

 「うぅ、本当に母上はなんて優しい…」

 「うん、ルシア。もう少し私の話聞こうね? 私は別に悲観なんてしてないからね?」

 本当に私の話を聞きなさい、と言いたい。

 ちなみに話しながらも書類に目を通しているのだけれども。仕事やるの楽しいから私色々やってるのよね。孤児院に訪問したりするのも楽しいわ。子供って好きなの。

 側妃の子の子供たち――要するにルシアの異母兄弟にあたる子達と話すのも楽しいわ。最初は警戒されたり、親が私を敵視してるからって睨んでくる子もいるけど子供って可愛いわ。

 自分磨きで精一杯で子供に構わない妃もいるから、そんな子はルシアやリオと一緒に可愛がるの。陛下はあんまり子供が好きじゃないのか時々しか子供に構わないから。ルシアは王位継承権第一位だし、仕事を色々教わってはいるけど。ただルシアは陛下が嫌いみたい。マザコンなのよね、本当。

 子供は愛情をもらって育つべきだと思うのよ。王宮は私の家だもの、だから王宮の子供たちは誰の子供だろうと私にとって可愛い子供なの。兄弟同士で王位継承争いなんてなるべくしてほしくないの。仮にも、片方だけでも血のつながった兄弟だもの。

 王宮は暗殺とか、陰謀とか色々と物騒な事がやっぱりあるけれどなるべくそういうのがない方がいいじゃない。皆仲良くなんてできないけど、私は王宮の空気をよくしたいもの。

 「母上…」

 「わかってないわよね? 何を涙ぐんで感動したようにこっちを見てるのかしら。はぁ、本当に仕方ない子ね」

 私と親しくない面々や、親しくてもルシアに関して言えば私が健気で可哀相らしい。健気に仕事をこなすいい王妃様なのに、陛下の寵愛を受けておられないと、嘆いてる人達は多い。

 本当に悲観なんてしてないのに、私の言葉に感動したように見てるルシアみたいな考えの子多いみたいなのよね。本当に慕ってくださってるのは非常に嬉しい事だけど、私は別に健気でも何でもないのにねぇ?

 城下町では私と陛下の小説まであるらしいの。陛下を愛しているけど振り向いてもらえない。だけれども健気に仕事をこなし、いつでも笑顔な私。そして、私を見ずに寵妃を作る陛下。という、何か振り向いて欲しいのに彼は振り向いてくれない、みたいな切ないストーリーになって話題らしいわ。

 変な風に盛り上がってるのよね。王都の視察を変装してする時もあるのだけれども、そういう噂とか小説のせいで『王妃様はおかわいそう』と皆思って、『陛下は何て残酷だ』ってなってるらしいわ。別に悲観なんてしてないのに私の株があがって、陛下の株が下がっているのよね。

 本当に私現状に満足してるのにね。人の噂って面白いわよね。

 「ルシア、隣国のお菓子を最近もらったから一緒に食べる?」

 「もちろんです!」

 話をしながら、区切りがよい所まで仕事を終えた私の言葉にルシアは勢いよく頷くのであった。

 これは隣国の王妃であり、仲良くしているセラフィがわざわざ送ってくれたお菓子なの。このお菓子大好きだから本当に嬉しいのよね。

 その後、私はのんびりとルシアとそして呼んできたリオとか子供たちと一緒にお菓子を食べてしばらく過ごすのであった。




 私は王妃。

 (城下町では可哀相な王妃様らしいけど、私は現状に満足しているのよ?)

リナーシャ。

王妃。『可哀相な王妃』と結構認知されてるけど、本人は特に悲観していない。

王妃の仕事が楽しい。仕事をこなして、人当たりもよいので評判はいい。他の側妃の子供も疎まず可愛がってる。臣下や側妃(敵視してくる一部以外)や側妃の子供には結構慕われている。

陛下の事はそれなりに愛してはいるけど、寵愛がないからって嘆くほど愛してるわけではない。来ないなら来ないで別にいいかと思って王妃生活を満喫している。金髪碧眼で、美人。

息子がマザコンで理解しないことが悩み。


ルシア。

マザコン王子。母親至上主義。気にしてない本人の意見無視に寵妃や陛下が嫌いらしい。母親の事に対してのみ若干思い込みが激しい。

「母上はあんなに優しいのにっ」と陛下に怒ってる。口を開けば母親の事ばかり。マザコンだけど有能。基本何でもできる。欠点はマザコンすぎること。美形。


リオ。

八歳の娘。美少女。こちらも母親大好き。よくリナーシャに甘えている。兄も大好き。てか、家族大好き。陛下とはあんまりあっておらず、家族って認識はあまりない。母は好きだけど、兄のマザコンぶりの若干呆れてる。


陛下。

女好き。一人の正妃、25人の側妃がいる。若い子が好きらしい。話には出てきていない。仕事方面に関しては有能。



ユリア。

寵妃。小国の王妃。あんまり堂々とした性格ではない。黒髪の可愛らしい人。

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― 新着の感想 ―
[一言] 国王陛下は真性のペド野郎であられるようで(嘲笑
[一言] 誤字? あとがきでユリアが小国の王妃になってますよ。 王女?
[一言] 読解力の無い、見た文を見たままにしか理解筈の私ですら行間から『陛下から妃殿下への一方的な寵愛』が伝わってきて思わず苦笑いしてしまいました。
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