表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

宴と恋心

「結論から申し上げます。ドラグナーの竜とその駆り手は発見できませんでした。墜落点と思われる場所には魔族の魔法痕跡があった為、その場で撤退術式を発動したものと思われます」


 あの後、俺たちは客室に案内され、三人一部屋で腰を休めていた。

 大きめのベッドに「わーい」と飛び込む煌城さん。

 ソファーに座って靴を脱ぎ、足を延ばす澪。

 俺は普通の椅子に腰かけ、持っていた木刀を置いた。


 しばらくだらだらと時間を過ごし、日が傾いたな、なんて思っていた頃。部屋がノックされる。


「失礼します! 客人の皆様にも現状の報告を兼ねた説明をされるとのこと! わたくしめが案内をさせて頂きます!」


 と、騎士の人が迎えに来た。んでついていった。玉座の間とは違う、また広い場所に案内され、最前列に立たされた。

 そして、さっきの報告がシルヴィアさんに行われているのを見ていた。


「現状、敵のドラグナーはあの一体のみ観測できている。であるなら、今回敵に与えたダメージは甚大なはずだ」


 そういえばあいつにやられた。みたいな事を言っていたような気がする。それを撤退にまで追い込んだ。結構大きい戦果のはずだ。


「えー、それでだな。本来は異世界の勇者召喚を出迎える祝宴を予定していたが、変更。というかついでに、だな」


 え、なんか思ってた流れと違うな。


「敵に一矢報いた! それを──この勇敢なもの達を労おうではないか!」


 シルヴィアさんが俺たちの所へきて、んで(なぜか)俺の手を掴んで挙げさせた。なんで?

 うおおおお!!と歓喜の雄叫びを上げる騎士たち。

 まあ、今までやられっぱなしだった所で一発し返してやった、という爽快感は分からないでもない。はしゃぎたくもなるか。


「どうだ。自分たちが守った者を見るのは」


 シルヴィアさんが声をかけてきた。

 俺たちが守った。まあそうなんだろうけど、実感はない。だって自分たちの事で手一杯だったわけで。それに、「俺は」何もしていない。


「煌城さんとかたのしそうだし、いいんじゃないでしょうか」


「何故そんな他人事なんだ? お前だって貢献したじゃないか」


 何もしてなかったわけではない、が。かといって貢献したかと言われると微妙なところだろう。澪を上手く動かした、といえばそうなのかもしれないが。


「あの時私に尋ねたな。何か出来ることは、と。随分な謙遜だ。あれほどのサポート能力もあったなんて」


 サポート? そんな言われる様なことは出来てないはずなんだが。


「あの時、ミオの魔力量が爆発的に上昇した。お前と会話をして、だ。そうさせたのはお前だろう?」


 首を傾げるのは心の中だけにした。あんまり「知りません」と言い続けるのは印象が良くない。

 もしかして自覚がないだけで俺にもバフを渡せる能力があった。のかもしれない。


「っと。私も失礼する。束の間の祝宴だが、お前たちも楽しんでくれ」


 そう言ってシルヴィアさんは別の人の方へ行った。

 周りを見る。煌城さんは・・・・・・騎士たちに囲まれている。「訓練場の魔法はどうやって──」「あの防御魔法はどんな構築で──」など、質問攻めにあっている。

 それに対して「いや〜よく分かんないんだけど、こう、ぎゅ〜ん、って」みたいな彼女らしい回答をしていた。それを聞いた騎士たちは「おお・・・・・・」と。いやそんな感心するものでもないと思うが。


「やっぱああいうギャルって、どんな世界でもモテるのかね」


 隣に澪が来ていた。手にドリンクを持って・・・・・・。


「・・・・・・ワイン?」


「ぶどうジュースだよ」


 そりゃ良かった。と一拍おいてから彼女が話しかけてくる。


「・・・・・・あの子がモテるの。ちょっと心配?」


「? 心配、とは?」


「騎士たちって言っても男子なわけじゃん? 内心穏やかじゃないのかな〜って」


「・・・・・・? いや、煌城さんはああいう人望があるタイプじゃないか。むしろ必然というか」


「へぇ〜、そう」


 なんだその心理テストみたいなのは。でもまあ、彼女のことが好きなら、穏やかではいられないのかもしれないな。

 逆に、澪があんな風に囲まれていたら・・・・・・、うん、ちょっと嫌だな。


「確かに。澪がああなったら、嫌かもな」


「ああって?」


「ほら、色んな人に囲まれて、さ」


「え・・・・・・? ・・・・・・ふーん」


 それきり会話が途切れる。澪は前髪をいじったり飲み物を煽ったりと落ち着きがない。

 そしてため息、のような深呼吸したのち、俺の背を押してきた。


「なんだよ?」


「あんたもあの中に混じってきなって。多分ちやほやされるよ? あんたの人生にあるかないかのちやほやが」


「なんていうけど。お前なんか顔赤くないか?」


 そう指摘するとぷいと横を向いた。


「いいから行ってこいって。私がしばらく一人になりたいの!」


 まあ、そういうなら。と澪の元を離れた。ったく、ちょっといい感じで話せてたのに。


 ***(視点変わって)


 壁際で一人、宴会場と化した広間を引いて見ていた。色んなところで色んな人が会話に耽っている。これは日常的行われているものでは無い。本当にたまたま、今日迎撃が成功したから、みんな嬉しいのだろう。


(・・・・・・はぁ)


 周りにはバレないようにため息をつく。

 悠馬を送り出し、彼はおどおどしながらも話についていっている。

 そんな彼の隣には、キラキラ眩しい煌城さんの姿があった。並び立つ二人を見て。


(お似合い、じゃん)


 と言葉にするでもなく、思ってしまった。頭に抱えた言葉というのは、意思に関わらず反芻するものだ。彼らは・・・・・・。


(・・・・・・。私、ヤな女だ)


 自分も、無視できない程度には、彼の事を思っていると自覚がある。

 魔法については知らんぷりで通してきた。でも本当はなんとなく感覚は掴んでいた。


 掴んだのは最初。私だって魔法を見た事がないわけじゃない。子供の頃に少しは触れている。

 もっとキラキラしたものだとかは、少し思い違いを起こしたが。破壊も出来た。なんとなくをここで掴んだ。


 でも一番は、「悠馬の負け姿は見たくない」という願いだった。そう強く願ったら、ホントに強くなった。その時にコツみたいなのは掴んだ。


 だから本当は、迎撃の時、どうやって攻撃するかは分かっていた。でも。


 無知な方が構ってもらえるから。と少し手を抜いた。

 悠馬の言う通りに従って、ボロが出そうならそこだけ自分で修正して、と考えた。


 ここまでは理想論。


 でも発射の直前。煌城さんが体勢を崩し、それを庇いに悠馬が走った。

 それを見て、「ああ・・・・・・」と。何か、泥っぽい感情を感じた。

 『嫉妬』だ。


 向こうを見る。いつもと変わらない、かっこいい悠馬。隣にはそう劣りはしない女の子。

 本当に好きなら、ここから見守れよ。


(私には──似合わない)


 そう確定しろよ。そうだと納得しろよ。それで終わりだ。

 終わり・・・・・・。──何の、終わり?

 その先は考えてはいけないと無視パス無視パス無視パス


(悠馬──)


 私の胸の小さな火種。大火と化す前に、消してしまいたい。


 ──好きだよ。悠馬。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ