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俺とギャルと異世界転移

 俺、笛木ふえき悠馬ゆうまは人生初の骨折をした。

 右足を折り、松葉杖を使う生活を余儀なくされた。不便な事この上ない。

 原因という程思い当たる節があるわけでもないが、所属する剣道部で少し無茶をしたかな、といった程度。情けない。

 松葉杖も邪魔だし……面倒だ。


「あっ」


 机に立てかけた松葉杖がある女生徒に引っかかり倒れてしまう。

 その女生徒は煌城きらめぎあかり。クラス、いや学年トップレベルのキラキラを持つ女の子。俺なんかとつり合いなど取れそうにないキラキラギャルだ。

 金髪にインナーカラーとして薄いピンクが入った髪。ギラギラのネイル。まさしく今をときめくギャルだろう。それに……。


「ごめんね。大丈夫?」


 俺みたいなヤツにも優しく接してくる。内面も完璧なギャル。その生き様、在り様はとても美しい。


「って笛木じゃん。どしたのその足。ヤバくない?」


「ただの疲労骨折だってさ。部活忙しくしてたから」


「そうなの? って話変わるけど、前借りてたラノベ返すね」


 彼女はとても明るい。それに今だって辛気臭い話から話題を変えようとしたのだろう。とても気の回るいい子だ。

 俺から離れ自分の席に向かう煌城さん。他の女子たちから小声で色々言われている。俺みたいなやつと絡んで、とかなんとか。

 実際俺はイケメンでも無ければ垢抜けてもない普通の学生だ。俺と絡むメリットなんて無いだろう、というのが俺の考えだが──。


「えー、あいつの貸してくれる本面白いよー」、なんて。堂々と言ってしまう。本当にいい子なんだ。そんな彼女を好きにならない男はいないだろう。・・・・・・でも俺は──。


「ふふ、朝からいい感じじゃん」


 そう俺の席の後ろから声がかかる。高校までなんやかんや一緒にいる女子、黒羽くろはね みおが話しかけてくる。

 煌城さんとは別の、真逆とも言える感じのギャル。黒髪のロングで艶やかな髪に、装飾のない爪。気だるげな彼女の雰囲気もあって、ダウナーギャル、というのが最もらしい気がする。


「べ、別になんでもないだろ」


「そうかなぁ。クラス一の美人に話しかけられて、鼻の下伸びてるのはどういうことかなぁ?」


 とっさに自分の鼻を擦る。それを見て澪はカラカラと笑う。からかったな。

 彼女を澪、と呼ぶのは幼なじみだからだ。小学校、中学、高校となんだかんだ一緒だった。


「でも良かったじゃん? 煌城さんと話すのは男子の憧れ〜、なんでしょ?」


「それは・・・・・・そうかもだが」


 俺は言葉に詰まる。


 先にはっきりしてしまおう。俺は煌城さんの様なキラキラ女子より、目の前の黒羽澪の事が好きだ。その事は、まだ内緒だが・・・・・・。

 そうと言えない俺はなんとなくの話の流れに任せ、「煌城さんに思いを寄せている」という設定に落ち着いた。複雑な心境だが、しかし彼女に本心を見抜かれるよりかは、なぁ。


 横からツンと頬を突かれる。


「顔赤いぞ〜」


「・・・・・・っ」


 誰せいでこうなったと思っている。

 この仲の良い友人のような、付かず離れずの関係が心地よくて、でも俺は彼女のような自然体で懐っこい人あたりに惹かれて・・・・・・。

 と、ここでチャイムが鳴った。何を言うでもなく俺たちは各々前を向く。


 ・・・・・・静かな時間が流れていく。平和そのもの。ラノベ読みとしては日常にも刺激が欲しいなぁなんて感じたり。


 ──そんな時だった。


 スン、と教室が真っ暗になった。何の前触れも予兆もなく、まるで異世界にでも変わったかのように。

 教室はパニックになった。しかしそれも一瞬で、「全員廊下に出ろ! 教室の外は普通だ!」という教師の声で皆が外へと向かっていった。


「く……」


 だが俺だけが、真っ暗になった時に松葉杖を見失い動けなかった。

 片足だけでもなんとか、とけんけんで移動しようとしたが、教室は暗くなっただけで机などはしっかり存在しているようで、机につまずいて倒れてしまった。


 その時に、本来何もないはずの床が怪しげに、紫の光を放っていることに気付く。なにかが、起ころうとしている。

 早く離れなければ。そう思うが体が言う事を聞かない。そこに――。


「悠馬! 立てる?」


 声の主は澪だ。俺を見かねて助けようとしているのだろう。

 なんとか立たせようとするが、相手は平均よりやや重いくらいの俺だ。引きずるのも一苦労だろう。


「俺はいいから! お前だけでも先に──」


「バカ! そんな事言ってられないっしょ!」


 俺なんか放って、なんて言ってるところにもう一人やってきた。


「大丈夫!?」


「煌城さん!? 何してるの! 早く逃げなきゃ!」


「ほっとけないっしょ! あんたも逃げなきゃ」


 二人がかりで俺を引っ張ろうとする。流石に二人いれば男の体とはいえ動かせるだろう。

 だが非常事態に加え、運搬の技術のない女の子二人が引っ張るだけでは、力が足りない。俺の脇がちぎれそうになるだけだった。

 そうこうしているうちに床の光が強まっているのが分かった。多分時間がない。


(この感じ、なんか読んだことあるぞ……。クラス転移、だったか?)


 だとしても。そんなものを現実と受け入れて達観するなど出来るわけもなく――。


「俺はいいから! 二人とも逃げて!」


 なにが起こるかは知らない。でもこの二人をその何かに巻き込むのはよくない事だと思った。だから逃がしたい。逃げて欲しい。そう願ったが。


「無理! そんなの出来ない! アタシは――」

「イヤ! あんたにはまだ――」


 なんて言って、俺の手を離さなかった。

 だが無常にも、床の輝きがどんどん増していく。やがてまぶしいくらいになり――。


 視界の全てが真っ白に染まった。


「……」


 目を閉じていても分かる光の強さ。多分目は開けられない。

 そこへ無機質な”声”が響く。


『因子特定:G.Y.A.L.-Major ランク:S

 第七次元魔術素養付与。”色位”の魔力構成、編纂工程通過(カット)

 基本構成<極性>を付与。理論による”証言”を先送り』


『因子特定:G.Y.A.L.-Minor ランク:S

 第八次元魔術素養付与。”候位”の魔力構成、構築工程無視(パス)

 基本構成<虚影>を反映。理論による”証言”を適当こじつけに』


『……特筆因子無し。特性付与無し。ランク:F

 右脚部の老朽デメリットを修繕。構成は……


 警告:特殊事例インシデント発生。G.Y.A.L.因子に多大な影響を及ぼす可能性有り。

 次に呼び起こすG.Y.A.L.因子所有者と生涯を添い遂げる運命収束を観測。誤差0.01%以下。

 因子測定を再計算。特別権限において”未証言”の理論で対応。

 再出力:付与される因子は――』

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