自宅訪問
夜ーー
「わたしソファーで寝ればいいですか?」
「ベッド」
「え?」
陽一は桜子を寝室へ連れていく。
「あの……」
「俺はソファーで寝る」
そっと彼女を寝かせる。
「あっ、待って」
部屋を出ようとする陽一を呼び止めた。
「寝るまでいて欲しい、です」
陽一は少し考えて戻る。
「寝るまでな」
「はい。ありがとうございます」
シングルベッドにふたりで横になるのは狭かった。
距離が近くて困惑する。
「......あの、今までお付き合いって......」
「ひとり。高校のときに。大学入るときに別れた」
「そう......なんだ」
桜子は彼に背を向けた。
チラッと彼女を見る。
どこまでしたんだろ......
キス何回もしたのかな......
「でも、何もしてない」
「えっ」
陽一は桜子の背中を抱き寄せた。
「キスは桜子が初めて」
桜子は目を見開いた。
「家に女性を入れたのも、女性と一夜を過ごすのも、桜子が初めて」
「初めて」という言葉が妙に色っぽい。
体がムズムズとうずくような気がする。
囁かれているからだろうか。
「だから安心してほしい。俺の初めて、全部桜子にあげる」
「っ......」
桜子は陽一の方を向いた。
「キス、して」
ゾクッ
陽一の顔が赤くなる。
「......うん」
どちらかともなく近づき、そっとくちびるを重ねる。
「ヤバイ......」
「え?」
陽一は体を起こすと、彼女にまたがり、もう一度キスした。
今度は一瞬じゃなく、短いキスを何度も繰り返す。
「ん......陽一さ......」
「陽一」
恥ずかしくて、視線をそらす。
すると、顔を彼の方へ向かせられる。
「陽一って呼んで」
熱を含んだ甘い声で言われ、何かが込み上げてくる。
「陽一......」
手を彼の肩に置く。
陽一が近づいてくると、腕を首に回した。
「桜子、愛してる。たまらなく愛おしい。こんな気持ち初めてだ」
「わたしも......不思議な気分」
苦しくなるくらい触れたいという気持ちが込み上げてきて、意識がふわふわする。
元彼と付き合ってた頃はこんな感情は芽生えなかった。
陽一がそっとくちびるを離す。
目が合って、離せなくなる。
「これ以上はダメだ。俺......」
離れようとする陽一だが、桜子が手を離さない。
「欲しいの。陽一が。欲しくて眠れないんだと思う」
「......あまりあおらないでくれ。俺も男だ」
「おかしくなりそうなの。お願い」
陽一は困った顔をした。
彼女の母に「無事に帰す」と約束してしまったからだ。
「......ごめん。今日はやめとこう」
「......わかりました」
桜子は寂しそうな顔をした。
「桜子を大事にしたいんだ」
「!」
「早く寝ろ。おやすみ」
陽一は桜子に軽く口付けて、部屋を出た。
反則......
桜子は手で赤い顔をおおった。




