甘い
陽一は桜子を見た。
「足大丈夫か」
「はい」
桜子は水槽を眺めた。
魚たちが自由に泳いでいる。
「桜」
「はい」
「……何でもない」
陽一はメガネを押し上げた。
「?」
桜子は不思議そうに首をかしげた。
陽一は手のひらをジーパンに擦った。
「陽一さん……?」
「……」
陽一は息を吐くと、少し桜子に近づいて座った。
「桜」
桜子は不思議そうに陽一を見た。
彼は彼女に口付けた。
そのくちびるは拒否されることに怯えているかのように、おそるおそる触れてきて、すぐに離れた。
「悪い」
桜子から目を逸らす。
え?キスされた?
えぇ!?
一気に顔が熱くなる。
今絶対顔が真っ赤だ。
「あ、あの……」
「同意のないキスは良くなかった。すまない」
「えっ、えっと……」
桜子はつんと人差し指で彼の左腕をつついた。
「!」
陽一は驚いた顔でこちらを見た。
その瞬間、彼女の方からキスをする。
「……お返し」
「桜、お前さ……」
「ん?」
「何でもない」
陽一は小さく息を吐く。
「もうちょっとしたら行くか」
「はい」
ふたりは恥ずかしそうに下を向いた。
✱✱✱
一通り見終わり、ショップに入る。
「かわいいぬいぐるみがいっぱい!」
「そうだな」
「キーホルダーもかわいい!ん?」
桜子はあるものを見つけた。
「どうした?」
「イルカのネックレスですって。これペアなのかな?」
陽一もそれを見る。
「ペアネックレスみたいだな」
「へぇ〜」
興味深そうにネックレスを見る桜子を陽一は見た。
「欲しいのか?」
「えっ、あっ、えっと……」
「記念に買うか」
「えっ」
陽一はイルカのペアネックレスを手にレジへ向かう。
戸惑いながら桜子は後をついていく。
「あの……」
「何だ」
「いや、何て言ったらいいんだろう」
「俺が欲しかったから買った」
桜子は目を見開く。
「そのペアネックレス、カップルさんに大人気なんですよ。ふたつを合わせるとハートになるんです」
「そういうことなんだ」
「はい!」
ふたりはショップを出る。
「陽一さん欲しかったんですか?」
「お揃いは嫌いか?」
「そういうわけじゃなくて……!憧れはあるけど、陽一さんそういうイメージがないというか……」
「……」
陽一は複雑そうな顔をした。
近くのカフェスペースにあるイスに座る。
「今付けるか?」
「はい!」
桜子がテーブルに置いたネックレスに手を伸ばす。
「俺が付ける」
陽一はネックレスを手に取ると、彼女に近づいた。
桜子は顔を赤くして、目を逸らす。
「……付けれた」
「後ろに回って付けてくれたらいいじゃないですか」
「?」
「今のわざとでしょ」
桜子は赤い顔のまま彼をにらんだ。
「……あぁ、悪い。キスしなくて」
「もう!」
陽一はクスッと笑った。
釣られて桜子も笑みを浮かべた。




