生活域の変化2
ヴァルタン村への馬車(ロバ車)代を集めるため、俺はいまだ似たような生活を続けている。最近ではお得意の鍛冶屋やその他の店での買い取り単価が上がった。
相変わらず、腹が減るので、スキルは使っていない。
そして、今の所持金は450セルちょっと(四万五千円相当)だ。目標の50デル(500セル)まであと少しである。
「あと少しだな。もうひと頑張りだな」
ヴァルタン村に行ったら戸籍がなくても、就職して、金を集め、一時は諦めていた住居まで買えるかもしれない。
それに「克服」スキルが加われば魔王討伐も夢じゃない。本音をいうと魔王軍と仲良くなりたいのだが、無理だろう。
そこで俺は背伸びをして、もう少し頑張ることにした。
「さて、ガラクタを漁りに行くか。」
1週間後
「はい。10デルをお渡しいたしますね。」
やっと50デルが貯まった。
「はい。こちらこそいつもありがとうございました。」
今持っているのは、520セルだ。
これでヴァルタン村までいける。そう思っていた。
馬車に乗って2日目の昼、ヴァルタン村に着いた。
「では、ここで降ります。」
「お気をつけて。」
馬車から降りると俺は背伸びをした。
「やっと着いた。」
転生してきて1ヶ月、ようやく安心して金を稼げるであろう場所についた。その村、ヴァルタン村は白川郷のような、茅葺き屋根の家や、レンガの家、木瓦ぶきの家など様々な材質の家が立ち並ぶ村だった。
「さーて、早速就職先を探すか。」
そういい俺は村の中に入った。
村を探索して、10分程で薬の研究をしている所を見つけた。そこで助手として働き、生物の死骸などを取ってくるのはどうだろう。
「すみません。この研究所で助手として働きたいんですけど、できますかね。」
「今すぐは無理だな。だが試練を越えれば考えてやらんこともないぞ。」
「そうですか。ちなみに試練とはなんですか?」
「そうだな。村の東にある沼地からヒカリオウレンという黄色い輝きをおびた花を咲かせる、薬草を明日までに取ってきてくれないか?」
「分かりました。」
「では失礼します。」
村の東と言っていたな。ヒカリオウレンとでもいうのだから、オウレンの仲間なのだろうか。
オウレンとは日本にも生息する、白い花を咲かせる草で苔の多い湿った杉林などに生える。湿地には通常は生えない。オウレンの根っこは黄色く、胃腸に効く漢方薬にもなる。
そんな事を考えながら5分ほど歩いていたら、沼が見えてきた。
「これはまた随分大きな沼だな。」
そこには尾瀬の様な湿地が広がっていた。地面を見ればモウセンゴケの様な植物が生えていることから、植生も尾瀬に似ていることがわかる。尾瀬は高いところにあるが、高緯度だからか低地でも似た様なことになるらしい。
「早速探すか」
そう思い靴を脱いで沼に足を入れると一気に沈んだ。
「おーっとここまで歩きづらいとは。」
ここは撤退した方がいいと思い、作戦を立てることにした。
「まず棒を3個ほど集めてその上を渡る。」
単純だが効果的だと思われる。
それを実行に移すため、棒を探すことにした。
「おっ、これでいいか。」
まず1本ゲット。中が腐っているから軽くて浮きやすそうだ。
「これも良さそうだな。」
2本目ゲット!
「ないなー、まぁ2本でもいいか。」
そう思い2本の枝を使い、橋渡し式で探索することにした。
「っと、そこまで沈まないな。」
そんな感じで沼地の中の2m四方ほどの島に渡った。
「島の上だったら少し沈むけど普通に歩けるな。」
そんな感じで沼地の島を探索していると水芭蕉の様な葉っぱがあったり、尾瀬と似ている部分を時々発見できた。
「おっ、これぽいな。」
島を渡り探索していると、ある島の縁にそれらしきものがあった。オウレンの様な花を咲かせ、黄色く輝いている。
「オウレンなんだし、根っこもとった方がいいな。」
そんな事を言いながら帰るために再び島渡りを始めた。
「痛っ!」
沼をを歩いていると、激痛が走った。何かに噛まれた様だ。
「沼地なんて破傷風菌の倉庫じゃん」
「やべっ、足がふらふらしてきた。毒でもってんのか?」
非常にまずい。このままでは死んで蛹状態になってしまう。
「とりあえず島に。」そう思い向かっているとぷにっとした何かを踏んだ。
「痛って」
また噛まれた。反射的に踏んづけてみると、またぷにっとしたものにあたった。今度は噛まれない。
「仕留めた...か?」
そう言うと意識が途絶えた。
今回はAIを使っていません。
健一が踏んだ生き物の設定。
ヌマオコゼ ナマズ目ナマズ科ヌマオコゼ属
浅い湿地帯や川、池などに生息し、水辺の動物(鴨や、カワウソ、サギや川鵜、小魚など)を食べる。普段はじっとしているが振動を感知すると、噛みつき、麻痺させ食べる。普段は狩のために使う毒だが、天敵(健一など)にも効く。飲み込めないもの(健一)は食べない。毒は人に対しても効くが、麻痺するだけで、死には至らない一方、窒息の危険がある。オコゼとあるがナマズの仲間である。