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第2話、説明書を読もう。


 ※前回のあらすじ、説明書を読むことにした。





 多分だけど、こう思っていると思う。(誰が?)


 説明書ってなんなん? つーかそもそも説明書そんなもんがあるならもっと早く読んどけよ。


 ――みたいな。


 そう言いたい気持ちは解るし、何なら俺もそう思っている。


 でも罵る前に、俺の言い訳を少しだけ聞いて欲しい。五分だけでいいから(長いな)


 そうだな……例えば赤ちゃんが生まれてきた瞬間だ。その瞬間を考えてみてくれ。


 良く知られているように、産まれてきた瞬間、赤ちゃんは泣く。


 別に悲しくて泣いてるわけじゃ無くて、そうすることで呼吸をする訳だな?


 でも稀に泣かない、つーか呼吸をしない赤子がいる。


 所謂”新生児仮死”という状態だ。


 大仰な名称だが、別に言うほどヤバいことでは無いらしい。


 というのも、新生児10人に1人は新生児仮死の状態で生まれて来るらしいのだ。


 昔ならともかく現代では産婦人科の医者や看護師が泣くのを促してくれるから問題にはならないのである。


 ――とまぁ、そんな感じ。


 つまり今の俺はそれと同じこと。ダンジョンマスターに産まれた奴には、当然ダンジョンマスターとしての本能がある。


 それは説明書を読むという事だが、俺は人間からダンジョンマスターに移行したせいで思い至らなかったのだ!!


 だから決して俺のせいという訳では無い。人間からダンジョンマスターになったら誰でもこうなるんだよ! サンプル数、俺しか無いけど!!


 確かに最初から読まないのは拙劣だったのかもしれないけど、何事も始めるのに遅すぎるということは無い訳で……


 ほらよく言うじゃん、”今日が一番若い日”だって。


 という訳で今から説明書を読んでダンジョンマスターとしての第一歩を刻んでいきましょう。(おー!!)


 ……さて、”説明書”と便宜的に呼んでいるが、実のところそれは“書”ではないっぽい。


 なんで分かるのかと訊ねられたら困ってしまうのだが、分かるものは分かるのである。まぁ、俺の中にあるっぽいしな”これ”。


 そもそも紙だったら今の俺じゃ読むことは無理だ。その時点でゲームオーバーである。


 さっきも言ったが、今の俺は“思念体”とでも言うべき物になっていて、実体というか身体は無かったりする。


 だから、何かを食べることは出来ないし、寝る事も、運動する事も、勿論R-18な事も出来やしない。




 ……いや、あの、泣いていいっすか?




 冷静に今の自分の状態を認識すると、なんか死にたくなる俺なのであった。(もう死んでるけど)


 つーか俺の、人に言えないコレクションが入ってる2TBのHDDとかどうなってんだろ? 遺品として親に送られたりするんだろうか? それだけは勘弁して欲しいんだが???


 ……うん、前世の事を考えたら駄目だわ。駄目な奴だわこれ。そこには地雷しかない。地雷原の上でタップダンスを踊るようなものだった。(足無いけど)


 もはや俺には前向きにダンジョンマスターロードを歩いて行くしかないんだよ!!(足無いけど)


 身体が無いのは完全に理解したけど、じゃあ、このダンジョンそのものが俺の身体なん???


 というと『……う~ん?』って感じで、それはそれで微妙なところだったりする。まぁ、ぶっちゃけよく分からんっ!


 “俺の物”であることは確かだが、”俺その物”かと言うとそれはそれで違う気がする……例えるなら髪の毛とか爪とかに近いかもな。


 ダンジョンマスターものだとダンジョンコアって物に意識が宿ってる設定が多いが、少なくとも俺が転生したこの世界じゃ違うらしい。




 ――閑話休題。




 ……で、何の話だっけ?


 あぁ、そうそう! “説明書を読む”って話だったな、忘れてたぜ!!


 書じゃないことは分かっても、じゃあ何が出てくるのかは分からない。脳に直接送られるのか、それとも大穴で石板だったりするのか?


 どっちも違う気がするが、まぁ、出してみりゃわかるだろ……


 という訳で、さっそく俺は『説明書よ出ろ』と念じてみる。 なんとも不思議だが、そうすることで説明書が出てくると理解できた。


 喋れるなら言葉に出せばいいだろ?って思われるかもしれないが、それはしない俺である。


 いや、それでなにも出てこなかったらどうするよ? こっ恥ずかしいじゃんね。


 まぁ、誰も見てないんだけどさぁ。誰かに話してる体で思考してるけど、よく考えなくとも俺一人なんだよねぇ……はぁ、寂しい。


 等と思いながら、説明書を出そうと、一人寂しくうんうんと念じる俺であった。




 ――ポンッ。




 するとなんとも気の抜けたような音と共に、四角い画面が目の前に現れた。


 ……そうだな、例えるなら“フローティングウィンドウ”だな、ブラウザの。


 それはSF映画に描かれている未来技術みたく、青白く、仄かに光りながら宙に浮いていた。




「おぉ……」




 俺は少しだけ感動する。そして歓声を上げた。


 それも無理も無いだろう。なんせ今までなんもやって無かったからな。


 グダグダと、あーでもないこーでもないと一人で脳内会話を延々と繰り広げていただけだ。もしラノベだったらその時点で読者がブラウザバックしていた自信があるね。


 それがようやく一歩前進したのだ。説明書を出すという実に小さな一歩だが、これは俺にとっては大きな一歩だ。だから感動しても何らおかしくは無いのである。


 だが何時までも感動に浸っている訳にもいかない。硬直もそこそこに、俺は説明書に書かれている内容を読むことにした。


 以下がその内容。




―――――――――――――――――



 『説明書』


(1)

 貴方は『ダンジョンマスター』に転生しました。

 

(2)

 貴方の目的はダンジョンを経営して、ダンジョンを大きくすることです。


(3)

 『DP』(ダンジョンポイント)を消費して行動し、更にDPを入手しましょう。


(4)

 DPは『冒険者』をダンジョンの内部で殺すことで入手できます。


(5)

 DPを消費する事で可能な自発的行動は『モンスタークリエイト』、『アイテムクリエイト』、『アーキテクチャー』の三つです。


(6)

 DPが0になると死にます。


(7) 

 以上です。頑張ってください。



―――――――――――――――――




「……えっ、これだけ?」


 説明書とやらを読み終わった俺はそう呟く。


 いやいや、30秒で読み終わったぞ? タイマーで計ったわけでは無いけどさぁ。いくらなんでもあまりに短すぎないか?


 俺は読む前と同じか、あるいはそれ以上の絶望を感じた。


 いやだって、もっと効率的な経営の仕方とか丁寧に教えてくれてもいいと思わない????


 説明不足過ぎて第8項目を空目したわ。


 『(8)死ね』――みたいな奴。


 そうは書かれてないけど、行間を読めばそう書かれているのは明白だった。


 放置プレイも甚だしい。児童保護団体に訴えたらネグレクトだと認定してくれるんじゃないかな、これ?


 これ本気マジ? やる気あんの?? 書いたの誰か知らんけども。


 いや、ねぇーんだろうなぁ。あったらもっと長々と書いてるはずだし。


 はぁっ……ヤベーよこれ頭回んねぇ。語彙も死ぬってもんよ。ヤベー。


 つーか、やっぱ人を殺さないとDP得られないんじゃん……詰んだわこれ、完全に。






投稿するのが遅れてすみません。

3話は出来れば明日には投稿したいですねー(するとは言ってない)

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