学院入学
ーーーー2年後、
ヘリオドール学院入学式まであと1か月。
この2年。アルト様からたくさん甘やかしてもらって、贈り物をいただいたり、隣国に旅行というものにも行ったわ。父様も母様も驚いていたけど、公爵様ご夫婦とも仲がいいみたい。
私もさすがに自分の心が向いているのを感じるわ。
アルト様ご自身は学院を飛び級で卒業。
公爵様の領地のお仕事を補佐として行いつつ、つい最近就任された王家直属の精鋭隊:ルロードナイトの隊長職に勤しんでいるらしい。
「優秀ねぇ・・・」
「次期公爵様の事?」
「そうよ。私にはもったいないくらい。リュイその前にその呼び方どうにかならないの?」
「僕は関わりが薄いんだからいいでしょ。はぁーあ!いいですね!僕の婚約者殿は、季節の変わり目に定型文とよくわからないまじない物を贈ってくるくらいですよ。」
リュイの婚約者様は、リュイと同い年になるアンリーナ・コメット様。
コメット家は、同じ伯爵家で祖先が商家らしく国内でもその流通力は上位とのこと。
彼女自身の社交界での噂は良くも悪くも、といった感じ。
「まぁ、贈り物なんて素敵じゃない?」
なんてわざとらしく大げさに言う
彼女には最近義理の兄ができたそう。
そのお義兄様ととても仲が良い様子。
「まじない物なんて怖くてつけられたものじゃないよ…。ほらこれ見て」
「薄い桃色の生地にリボンやフリルがあしらわれ、それはそれは素敵なものじゃない。
あら?柄が個性あふれているわね。」
「変な柄に趣味の悪いまじない物って言ってもいいから…。それになんか持っているとぼーっとするような頭痛がするんだよなぁ」
”まじない物” 最近庶民の間から流行っているもの。
意中の相手に自分を彷彿とさせるように模した一種の飾りのようなものを渡すと相手と縁に恵まれるという噂。
そんなもの気休め程度で押しつけがましいと考えないのかしら?
そこで嫌われる可能性もあるというのに。。
「ん?ぼーっとする?体調でも悪いの?」
「これが届いた日と、持っているというか身に着けている日はなんか身体が重い感じがして、でも持っていたくなってしまうような。ぬるい水に浸かっているような。」
持っていたくないのに、身につけたくなる。ねぇ・・・。
変ね。明らかに。そんなもの存在するのかしら?
「とりあえず外しておきなさい。婚約者殿のものは全て侍女に処理させて。」
嫌な予感はよく当たるものなのよ。