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サボり魔王子の家庭教師  作者: 梨乃あゆ
第二部 恋人編
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第4章 サボり魔王子と秘密の魔法陣④

あれからミルティア達は2日で報告書をまとめ上げた。何も解決策もない問題点だけが浮き出た報告書であるが、ショコライルは完成した報告書を携えて、急いでエクラに報告しに行った。



 ようやく訪れた休みにミルティアはホッとしたのか、急な眠気に襲われてしまった。アニスに頼んで寝台を整えてもらい仮眠することにしたミルティアは、すぐに深い眠りについた。



 ――――――――――――――



 またあの不思議な夢を見た。今回も勉強はしていなかったが何か本を読んでいるようであった。しかしその本の内容が見たいと思えば思うほど、本の文字は霞んでしまい全く読めない。何を読んでいるのかは全く分からなかったが、夢の中のミルティアは、とても楽しそうに目を光らせながら本を読んでいるため、その本がとても好きであることだけはわかった。



 場面は変わり、今度は刺繍を行っていた。刺繍は完成間近であり、見たこともない不思議な花の刺繍を刺していた。夢の中のミルティアはとても刺繍が上手く、まるで絵画のような完成度であった。

 ミルティア自身は勉強に時間を割いていたため、あまり刺繍は刺した事がない。夢の中の人物はミルティアと全く似ていないと再認識すると目の前が真っ暗になった。






 ミルティアはそこで目を覚ました。沢山寝たと思っていたが、時計を確認するとまだ一時間程しか時間は経っていなかった。



 喉が渇いたため水差しが置かれたサイドテーブルへ移動しよう動き出した時、様子を確認に来てくれたアニスがすぐに水差しからコップに水を注ぎ持ってきてくれたため、ミルティアは有り難く受け取った。



 喉を伝って体の中に入ってくる水は程よく冷たく、寝ぼけていた身体を起こしてくれる。おかわりを尋ねるアニスに断りを入れると、一つお願いを頼んだ。ミルティアのお願いを叶えるべく、アニスは急いで部屋から出て行ったのであった。



 アニスはすぐに部屋に戻ってきたが、ミルティアからのお願いは少し時間が欲しいことと、ショコライルが帰ってきてくれたことを教えてくれた。

 ミルティアは寝るために解いていた髪をアニスに整えてもらうと、急いでショコライルの待つ部屋に向かうのであった。


――――――――――――――――――


「ショコライル様、お疲れ様です。」

「ミルティアもお疲れ様。疲れてない?」

「先程少し仮眠いたしましたので、すっきりしております。ショコライル様こそお疲れでは?」

「うーん、確かに疲れているかも……。」

「あの……わたくしにできることは何かございますか?」

「何でもいいの?」

「はい!」



 その言葉を待ってましたというように、ショコライルは口角をあげた。



「じゃあ、ミルティアから抱きしめてほしいな。」


 甘えるような上目遣いの表情に、ミルティアは思わず見入ってしまう。何でもいいと言ったが、自分からなど恥ずかしくて仕方ない。どうすべきか己の心の中で戦っているところに畳み掛けるように、ショコライルは追い討ちをかけてくる。



「本当は膝枕とかお願いしたいんだよ?」


 冗談か本気かわからない態度に、ミルティアはさらに混乱していた。百面相のように表情を変えるミルティアを、面白そうに眺めているショコライル。ミルティアの反応だけでも疲れが吹き飛びそうであったが、それを引き留めたのは恐ろしい一言であった。




「膝枕なら私がいたしましょうか?」

「えっ?!」


 声がする方を恐る恐る振り返ると、今にも青筋が浮かびそうなほど引き攣った笑顔を浮かべるアニスがいた。目が笑っておらずむしろ血走っているようにも見える。

 ミルティアの膝枕ならいつでも歓迎であるが、アニスに膝枕などしてもらっては、息の根を止められそうである。



「さあ、ご遠慮なさらずに!」

 ものすごい圧を発しながら近づいてくるアニス。ショコライルは恐ろしすぎてついミルティアの後ろに隠れてしまう。




「本当にあなたは何をやっているんですか!ミルティアさんもお困りですよ。感情の暴走はお控えください。それからアニス、このポンコツにあなたの膝など貸さなくて結構ですよ!」



 棘がある言葉であるが、今はこの場を鎮めてくれる救世主のようにも感じる。ようやく落ち着いたことにショコライルはホッと胸を撫で下ろすのであった。



「それよりもミルティアさんにお伝えすることがおありでは?」

「そうだった。ミルティアこれ。」


 アレンから言われて慌てて思い出したかのようにミルティアに一通の手紙を出した。

 受け取った封筒には王家の紋章が入っており、差出人が王家からというのは一目で分かるものであった。中を開けるとカードが一枚入っていた。


「これは……お茶会の招待状?」

「そう、君には直接渡そうと思って。本当はこんな会なんて開催したくないけど、どうせやるなら楽しんでほしい。嫌な気持ちには絶対させないから。」



 バーナードがよく受け取っていた招待状は、水色で縁取られた招待状が多かったが、ミルティアが受け取った招待状は深い青色で縁取られた招待状であった。可愛らしく銀色で箔押しされた一輪の薔薇が描かれていた。




「王家からの招待状は初めてかな?」

「はい、わたくしは初めてです。お父様のを見たことはありますが……。」

「王家からの招待状には暗黙のルールがあるんだ。父上が主催だと水色、隣国の王族が出席する場合は銀色、と招待状を一目見れば主催や目的が分かるよう色分けされている。そしてこの招待状は……私が主催というわけだ。」




 王族には生まれた時にその人物を示す色があてがわれる。その人物を象徴する色であるため、瞳の色をあてがわれることが多いらしい。王族と言っても遠縁まで入れてしまうと膨大な人数になってしまうため、臣籍降下した者達は含まれない。現在では直系の国王陛下、王妃、王太子、国王の弟である王弟殿下のみに色が与えられている。



「知りませんでした。でも……初めていただいた招待状がショコライル様からなんて……嬉しいです。宝物にしますね。」

「そんなに喜んでくれるならミルティアのためだけに、2人だけのお茶会に招待状を毎回書くよ。」

「ふふっ……どうしましょう。保管場所を考えなくては。」




 そんなささやかな幸せが当たり前のようになる日常を早く迎えたい……。2人はお互いの言葉に笑いあいながらも心ではそう願っていた。



 ショコライルが渡してくれた招待状に書かれたお茶会の日時は約3週間後。ミルティアはその日までになんとしてもやりたい事を見つけていたため、時間を見つけては励む日々が続くのであった……。

お読みいただきありがとうございます

第4章はこれで終わりです



明日からは第5章に入ります



続きは明日の11時に更新予定です




引き続きよろしくお願い致します

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