プロローグ
朝目覚めると眩しいぐらいの日差しが降り注ぐ。季節は花が咲き綻ぶ春から、新緑が美しい夏へと移ろぎ、陽が高くなったことで光が部屋中を明るく照らしていた。
気持ちよく目覚め、寝台の上で窓から入る陽の光を見つめるのは、ミルティア・リリアージュ。16歳の男爵令嬢である。
ここは自然豊かなリンレッド王国。リンレッド王国には四季がある。王都は四季がはっきり存在しているが、広い国のため雨が多いところや、雪が多いところなど、領地により様々な気候が存在している。
ミルティアが生まれ育ったリリアージュ領は年間を通じて気温の差が少なく、比較的暖かい場所であった。またリリアージュ領は雨が多いため、晴天の日が多い王都は陽の光で目覚めることができるため、ミルティアは朝のこの時間が大好きだった。
ミルティアは王立学園に通い、淑女教育と教師となるべく勉学に励む普通の男爵令嬢であった。
その生活が一変したのは数ヶ月前。父親のバーナードの親友である、現国王のエクラより直々に依頼された、王太子の家庭教師になったことだった。
ショコライル・リンレッド。ミルティアと同い年の、王立学園に通う5年生。だが彼は勉強からも家庭教師からも逃げ、「サボり魔王子」という不名誉なあだ名がつけられた王太子であった。
渋々引き受けた家庭教師であったが、サボり魔王子の真実に触れ、ショコライルと心を少しずつ通わせることで、いつしかショコライルに惹かれていったミルティア。ショコライルもまた、昔からミルティアに惹かれていた。
お互いなかなか気持ちを伝えられず、時間だけが過ぎていったが、リンレッド王国が国をあげて開催するオシリス祭で、ミルティアが襲撃されたことから、遂にショコライルが気持ちを伝え、晴れて恋人同士となった。
恋人同士となったが、2人の目の前には様々な問題が立ち塞がっていた。その一つが、ミルティアが襲撃された時に言われた、隣国スーピナ国に気をつけろだった。
ミルティアを守るため、ショコライル達はミルティアを24時間警護している。
「おはようございます、ミルティア様。」
「おはよう、アニス。」
ミルティアが目覚めた事に気付いたアニスが、朝の挨拶をし身支度を手伝ってくれる。
身支度が整い寝室を後にすると、愛しい人が眩しい笑顔で迎えてくれる。
「おはよう、ミルティア。」
「おはようございます、ショコライル様。」
王城に住み、愛しい人ができ、護ってくれる。
これが数ヶ月前まででは考えられなかった、ミルティアの日常である。
ミルティアを護るため住み込みで警護をしている、ショコライルやその部下達。
ショコライルはミルティアと付き合えたことで、今まで我慢していた触れ合いを隙あらばしてくる。
嫌ではないしむしろ嬉しいのだが、それでも他の護衛の人がいる目の前で平気で頬に口付けを落としたり、抱きしめてくるため、流石に恥ずかしくなったミルティアは、せめて口付けだけは2人っきりの時とお願いし、なんとか我慢してもらっていた。
今日も朝の挨拶をするとすぐにミルティアに近づいてきて、抱きしめてくれる。幸せそうに抱きしめるショコライルと、恥ずかしそうにしているミルティア。それを温かい目で見つめるのが、部下達の日課にもなっていた。
「ミルティア。すまないが昼は父上と会食が入ってしまった。しばらく側にいられないが大丈夫か?」
「もちろんです。アニスにエディルダさんもいますし、他の皆さんもいてくださいますから……」
「だから安心してください」そこまで伝えたいはずだったのに、ショコライルの顔色が急に曇るので言葉が続かなかった。何故顔色を悪くしたのか……ミルティアは先程の自分の言葉を思い浮かべて、一つの結論に至った。
「あの……ショコライル様と離れるのはもちろん寂しいですよ?」
ショコライルがいない間不安にさせないよう、アニスやエディルダの名前を出して、1人でも大丈夫と伝えるだけだった。だが、それがショコライルには面白くなかったのかもしれない。
「本当か?」
拗ねた子供のような態度と、他の人には聞こえないような小さな声。どうやらミルティアの予想は当たっていたようだった。今までずっと1人で国を想い、何を言われても挫けず行動していたショコライルが、ミルティアの一言で簡単に落ち込み拗ねる。ミルティアにはそんな彼がたまらなく可愛く、そして愛しく感じてしまった。
「本当ですよ。ですが、ショコライル様には、大切なやるべきことが沢山あります。わたくしが足を引っ張ることはしたくないのです。だからここで、アニスやエディルダさん達と一緒に待っています。」
そっとショコライルの手を握って伝えると、ショコライルは嬉しそうに微笑んでくれた。
「ありがとう。私も頑張るよ。今日はここで大人しくしてて。明日にはファラフィラ村に行こう。」
「楽しみにしています!」
ファラフィラ村に行けるということは、ショコライルと2人っきりの時間が取れるということだ。ショコライルがいない間、明日の服装や、ショコライルとやりたい事など考えることができる。待ち時間もあっという間に終わるかもしれない。ミルティアは寂しい気持ちが和らいでいくのを感じながら、ショコライルと朝食を共にするのだった。
第二部 恋人編のプロローグ
お読みいただきありがとうございます
ミルティアとショコライルの話はまだまだ続きます
恋人になった2人がこれから紡ぐ物語を
どうぞよろしくお願い致します
明日も11時に更新予定です




