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サボり魔王子の家庭教師  作者: 梨乃あゆ
第一部 出会編
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第14章 静かな警告④

「それにしても今回の狙いはミルティアなのか?」

 

 エクラの疑問は今回の騒動で皆が1番考えていることだった。



 


「ミルティアだけが狙いなら、わざわざあの場所で接触しなくても、大会中接触する機会はあったはずです。だがあえて、あの王族専用の場所でミルティアに接触したことに意味があると考えています。」





 ショコライルの言葉に皆が納得していた。わざわざ1番入りずらい王族専用の通路で、わざとショコライルの目の前で接触してきているように感じ取れたのだ。本当にミルティアが狙いだったら、いくら護衛がいたとしても、もっと他に簡単に接触できる機会はあったはずだ。






 

 

「それと……一つ気になることが。」

「気になること?」

「はい、ミルティアが先程教えてくれたのですが、奴は最後に、彼女に『スーピナに気をつけろ』と言ったそうです。それもひどく哀しそうな顔をしていたと。」

「スーピナに気をつけろ?!」

「これはあくまで私の予想ですが、奴はスーピナを欺くため指示に従い、私達に接触。それが失敗したという事実を表向きに作り、スーピナを油断させる。だが本当は自分の意志で行動しスーピナの内情を探っているか、はたまた別の理由があるのか……。そう考えると私達に接触してきた理由は、脅しではなく、この国の危機を伝えに来たのではないでしょうか?」






 

 ショコライルの仮説をただ静かに部屋にいる全員が聞いていた。話終わっても異論は出てこない。少なからずあの場にいた者達は、同じ気持ちであったのだ。





 


「確かに、あの時ミルティアさんを連れ去ることは可能でした。だがそうしなかったのは、はなから連れ去る気などなかったと考えると辻褄が合います。」


 アレンは言葉を選びながら、自分達が護れなかった事実を淡々と告げた。本当はそんなこと話したくない。だが今後のことを考えるときちんと伝えるべきであった。



 


 ショコライルはその言葉をただ黙って聞くことしかできなかった。反論することもできない……だって事実だから。



 

 あの時ミルティアを連れ去られると本気で思った。目の前で愛しい人が離れていく……あの時は全身の血の気が引く感覚を初めて味わった。そしてその後現れた感情は絶望……2度とミルティアに会えなくなるのではないかという恐怖であった。




 だからまさかすぐに帰ってくると思わなかった。受け止めた身体はあまりにも軽く、恐怖で震える身体はこのまま壊れてしまうのではないかと本気で思った。

 あの瞬間もう2度とこんな目には合わせないと誓った。もっと強くなりたい……そう思うようになっていた。



 


 ショコライルは気付けばいろんな感情を押し殺すように、拳を強く握っていた。






 



「ではラナは敵ではないと?」

「まだ断言はできません。それに少々厄介な物を持っていたようです。」

「厄介な物とは?」

「気配を消す魔力が篭った魔石です。」

「それは!」


 今まで静かに話を聞いていたロンダが珍しく大声を出した。冷静沈着なロンダが取り乱すほど、問題がある魔石だったのだ。




 


 気配を消す魔法は高度魔法の一つである。ほとんどの者が使えることのない魔法は、使い方を間違えれば犯罪になるため、魔石に魔力を注ぐことはこの国では禁忌となっており、犯した場合は非常に重たい刑罰の対象となってくる。

 魔力を注がれた魔石を使えば、魔力さえあれば誰でも付加された魔法を使えることができるからだ。




 


 そもそも魔石に魔力を注ぎ込むことはものすごく難しい。その注ぎ込む魔力が高度魔法など、歴史上成し得た者がおらず、不可能だと考えられてきた。





 


 だがそれが現実問題起きてしまった。信じられないが、真剣な表情のショコライルと、ただ黙って頷くハミルダ……2人の態度が嘘ではないと物語っていた。





 

 


「待て、先程ラナという人物は魔力がないと言った。なのにどうして魔石を使える?」

「何者かが一時的に魔力を分け与えたようです。」

「それで魔石を使えたということか……。」

「恐らくは……。その力を利用して、見張りをすり抜けたようです。」

「なるほど……。」






 


 リンレッド王国の騎士団はどこの国よりも強い。そしてそれ以上に強いのが魔法騎士団である。警護に当たっていたのはショコライル率いる騎士団であり、表向きは発表されてないが、ショコライル自らが選んだ人選のため、凄腕の持ち主ばかりの最強軍団だった。

 そんな彼らの見張りを一時的ではあるが突破できるとなると……その答えは恐ろしいものであった。





 

 その事実にいち早く気付いたのは、ロンダであった。







 

「ショコライル殿下、お待ちください。今までの話をまとめると……我が国の、しかも王城内に勤める王族に近い者の中に、内通者がいるということになりませんか?」

「王族専用の通路の場所を知っており、ミルティアが私の家庭教師であることを知っている。そして禁忌である高度魔法を使えた……この事実だけでも、充分にその可能性はあると考えられます。」



 


 万が一、見張りを抜ける前に気配を消す魔法が切れた時のために、窓の外に時間で強風が吹くよう、魔法陣が描かれた痕跡があった。時間で発動し消えるよう書かれていたらしい。証拠は消えてしまっていたが、ハミルダが痕跡を読み取ってくれたおかげで知ることができた。

 見張りの彼らが聞いた音は、この魔法陣によって生み出された風によって引き起こされていたのだ。


 




 身近な者に裏切り者がいる。禁忌を犯してまでのなりふり構わない姿勢は、目的が分からない分不気味さが際立っていた。うかつな会話はこの国にとっても命取りとなる。





 


 そしてもう一つ厄介なのはスーピナ国である。この国は昔から王族が争いごとを好み、近隣諸国を力で捩じ伏せて領土を拡大した歴史がある。それは今現在も続いており、リンレッド王国を取り込もうと画策しているという情報まで、最近は上がってきている。




 

 そんな両者が手を組んでいるとなると、今まで魔法騎士が怖く、手を出してこなかったスーピナ国が乗り込んでくる可能性が出て来た。最悪リンレッド王国が争いに巻き込まれることとなる。それはなんとしても止めなくてはいけなかった。




 

「ですから父上、宰相、どうか周りに気をつけてください。」

「心得た。この話は私とロンダだけが知ることとし、他言無用にしよう。」

「ありがとうございます。大々的には動けませんので、この件に関しては、私の部隊とハミルダ先生で動きます。」

「くれぐれも無茶はしないよう。何かあった際はすぐに伝えるように。」

「心得ておきます。」

「ショコライル殿下、必要な物などは遠慮なく伝えてください。国の危機です、いくらでも資金は調達します。」

「助かります。」




 


 エクラもロンダも惜しみなく協力を願い出てくれた。身内に裏切り者がいる以上、騎士団や魔法騎士団などは動かしずらい。ここはショコライル達に頼るしかできなかったのだ。



 こうして話し合いはあっという間に進んでいったが、ショコライルにとって1番大切な問題がまだ終わっていなかった……。

次は17時に更新予定です

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