第11章 サボり魔王子護衛になる④
今日は朝からハミルダの研究のために学園に来ている。
研究はだいたい週に2回来ており様々なことを行ったが、今回が1番難しいと事前に伝えられていた。
いつものように目の前に置かれた水に手を翳す。
色水から泥水、海水、様々な水を行ってきたが今回はどんな水か教えてもらえなかった。とにかくきれいになることを想像し、指先に魔力を込めていく。
最近わかったことだが、水を浄化する間は指先が熱くなるが、浄化が完了すると指先の熱が落ち着く。そのお陰で浄化が完了したのかわかるようになっていた。
いつもは1分もかからず終わる浄化が今日はなかなか終わらない。時間にしてはそんなに長くないのだが、指先がどんどん熱くなってくるため、それだけ魔力を注ぎ込んでいることだけはわかった。
なかなか浄化が終わらず、目を開けないミルティアのことが心配になったショコライルは、ミルティアに声を掛けようとしたが、その行動をハミルダは手で制した。無言で首を横に振りもう少し待てと態度で示していた。
いったいこの水は何なのか……ミルティアはそんなことを考え始めた矢先、ようやく熱かった指先から熱が無くなっていく感覚を覚えて目を開けた。ショコライルがいたく心配そうな顔をしているので、ミルティアは微笑んで安心させようとしたが、反対にショコライルの顔を見た瞬間力が抜けたように、膝から崩れ落ちそうになった。
崩れ落ちなかったのはショコライルが片手で抱き止めてくれたからである。ミルティアはすぐに起き上がるつもりであったが足に力が入らない。その瞬間ショコライルは、いとも簡単にミルティアを抱き上げてソファの上に寝かせた。
「大丈夫、ミルティア?どこか辛いところは?」
必死に聞いてくるその姿は、ミルティアをとても心配していることが伝わってくる。ミルティアは今度こそショコライルを安心させるように微笑んでみせた。
「ご心配おかけして申し訳ありません。こんなに魔力を使ったのが初めてで少々疲れたみたいですが、なんともありません。」
「本当に無理してない?」
「はい……。」
ミルティアはもう一度微笑んでみたが、ショコライルは納得できなかったのかハミルダにも尋ねていた。
「師匠、本当に大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。彼女の魔力は枯れていないし、まだ余裕がある。本当にただこれだけの量を使うのに慣れていなかったせいだと思うよ。」
「そうですか……。」
「心配なら君が助ければいいじゃないか?」
ハミルダからの提案に今まで忘れていたことに気づいたショコライルは、慌ててミルティアの手を握った。
「えっと?」
急にショコライルの両手で包まれた手をただ見ることしかできないミルティアであったが、やがて繋がれた手から徐々に全身に温かさが伝わる不思議な感覚に襲われた。何が起きているか分からないが、全身を温かく包まれるような感覚にひどく安心感を覚えていた。
「これで大丈夫。」
「ありがとうございます。えっと何をなされたのですか?」
何も分からないミルティアは、一つづつ確認しなければいけなかった。
「私はいろんな魔法が使えるが、その一つに私の魔力を相手に注ぐことができる。ミルティアの使ってしまった魔力を補わせてもらったよ。」
「そんな凄いことができるのですか?」
「魔力を補うことができる人は本当に少ない。だが彼はさらにすごいことができるんだよ?」
ハミルダがミルティアの疑問に答えるよう話に入ってきた。
「凄いことですか?」
「ああ。彼は自分の魔力を注いだら、注いだ相手に対して、相手が使える魔法を起動させることができる。」
「……よくわかりません……。」
ハミルダの言ってることが理解できず、首を傾げたミルティアに今度はショコライルが分かりやすく説明してくれた。
「たとえば怪我をして意識が無い者が、治癒魔法が使えたとする。私が魔力を注げばその者の意思と関係なく、彼の治癒魔法を発動させて、回復させることができると言うことだよ。」
「つまり一時的に、ショコライル様が自由に操れるということですか?」
「そういうこと。だから今ならミルティアの浄化魔法を発動させることができるよ。内緒だけどね。」
ショコライルは簡単に言うが、とんでもない魔法である。正しい使い方をすればとてもいい魔法なのであるが、邪な気持ちを持てば、敵を操って身内内で争わせることもできるということだ。
ショコライルは決して後者のようなことは絶対行わないと断言できるが、この話を知った者がショコライルを利用することだって有り得る。だからこそ内緒なのだろう。
ミルティアはショコライルの魔法のことを考えていたため、ショコライルがミルティアの前に手を翳したことに気付かなかった。「おやすみ」そんな声が聞こえたと思った矢先、ミルティアは意識を手放していた。
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