第11章 サボり魔王子護衛になる③
それからは文字通り、夜眠る時以外は一緒に過ごしていた。主に2人きりの時は部屋で一緒に過ごしたりしているが、きちんと仕事もしているため、完全に2人になる時間は少ない。
朝食から夕食まで当たり前のように一緒に食べるが、なるべくアニスやアレンを交えて食事をすることにしていた。
今日はアニスが忙しいということで、アレンと3人で昼食を摂りに来た。いつも混雑する時間をずらして食堂に来ているが、何故か今日はずらしたはずなのに混雑していた。それも若い職員ばかりである。
何か研修でもあったかと考えてみたが、思い当たらない。しかもやたらと視線を感じるため、彼らの目的はショコライルとアレンであるとミルティアは気付いた。
席についてすぐ、ミルティアはフォークを取り忘れていることに気がついた。慌てて取りに行き戻ると、ショコライルとアレンは女性職員に囲まれていた。
「お昼ご一緒にいかがですか?」
「この後少しお茶しませんか?」
恋する乙女は強い。全く彼女達の会話を聞かず食事を進めている2人にもめげず、ここぞというチャンスを逃さないように、自分を売り込む姿をミルティアは羨ましくさえ感じた。どの女性も皆綺麗で、ミルティアは引け目を感じ席に戻れず遠くで眺めていた。
「ねぇ君。」
不意に後ろから聞こえてきた声にミルティアは振り返ると、ミルティアより少し年上の青年3人がいた。騎士服をきているため、騎士ということは分かったが知らない顔のため、何故声をかけられたかわからなかった。
「何か御用でしょうか?」
騎士なのでもしかしたら、ショコライルと近しい人かもしれない。無下にはできないためミルティアは最低限の返事で返した。
「前から気になってて……。そのよかったら僕らと食事しない?」
「えっ?」
言われている内容が理解できずミルティアはどう返せばいいか分からなかった。
「あっ怪しい者じゃないよ?ほらここの騎士。僕らは今年から騎士団に配属になったんだよ。」
騎士になるためには、成人後士官学校に入学し、2年間訓練した後騎士団に配属されようやく騎士となれる。彼らは配属されたと言っていたため、新人の騎士であった。
「騎士様でしたか。」
「君ミルティア嬢だよね?」
「わたくしのことご存知なのですか?」
「もちろん!学園で有名だったからね。それに社交界でも有名だよ?」
名前を知られていたことも驚いたが、社交界で有名とはどういうことか?以前ショコライルが言っていたことなど知らないミルティアは、何故自分が有名なのか見当もつかない。立ちすくんでいるミルティアをいいことに、彼らはミルティアと話せる絶好の機会を逃すべく、奮起した。
「君と話してみたかったんだよ。今休憩時間でしょ?一緒に話そうよ。」
お昼ご飯もまだ食べていないミルティアの返事などお構いなしに、彼らは自分たちの席にミルティアを誘導すべく手を掴んだ。
「あっあの……。」
ショコライル以外の手に触れられることがこんなに嫌なのかと感じ、拒否をしたいのに言葉が出てこない。それをいいことにずるずると彼らはミルティアを引っ張っていく。
「辞めろよ。」
適当に話して逃げようと諦めかけていたその時、ひどく低い声が聞こえてきた。声の主は、怒りの表情を隠しきれず騎士達を睨みつけているショコライルであった。
「君は確か王太子殿下の側近の方の従兄弟?」
まだライとしてここに来てから1週間も経っていないのに、やはりアレンと一緒にいるショコライルは目立つのか認識されていた。
「彼女が嫌がっている。」
低い声で淡々と話すため、騎士達は言葉を返せずにいた。
「いつも君達が彼女を独占してるから、少しぐらい話せればなと思ってね、それだけだよ?」
1人の騎士が、ショコライル達が座っていた場所に目をやった。ショコライルやアレンと話したい女性達と自分たちは同じだと、言うかのようだった。
「俺は彼女の許可をもらっていますし、仕事の付き合いもあります。彼女の許可もなく、自分達の希望を叶えるために強引に連れて行く……彼女は物ではありませんよ!」
ショコライルやアレン達に群がってきていた女性達にも聞こえるよう、わざと大きな声で話したため、気まずくなった者達はゆっくりと自分の席に戻っていった。
「悪いことをしていないのに無理やり連れて行くなど、騎士の教えに反していませんか?ねぇ?アレン様?」
わざとらしくアレンを呼ぶと、アレンはため息を吐きながらゆっくりこちらに近づいてきた。
「ええ。大いに反していますね。士官学校で習ったはずなのにおかしいですね。……さぁあなたたちはどこの隊に所属かな?これから騎士団に用事がありますので、上司の方にご挨拶に伺わないといけませんね。」
アレンの方が騎士達より年下のはずなのに、態度は逆に見える。実際アレンは王太子の側近のため、彼らより地位は高い。
そんなアレンが上司に挨拶に来るとなると、どんな処分が降るか分からない。彼らは恐ろしくなったのか、慌てて用事を思い出したと言って逃げて行った。
「やれやれ。ご挨拶に伺う機会を失いましたね。まあ私たちは大切な仕事をしているわけですから、余計な仕事が増えなくてよかったです。」
遠回しに近づくなと釘を刺したアレンは、それはそれは恐ろしい微笑みを浮かべてきた。食堂にいた全員がこれ以上近付くのは危険と判断できるには、十分過ぎる効果を発揮した。
「さぁご飯を食べよう?」
先程までの形相が嘘のように穏やかな笑みを浮かべ、ショコライルはミルティアを元の席に案内した。あんな笑顔が見えるなら、遠くからでも拝んでおこう。邪な思いを抱いていた女性達は、ショコライルやアレンにはこれ以上近付くことは断念し、遠くから眺めることにすることにした。
少し目を離しただけでこれである。ミルティアの魔法を狙う者の他に、ミルティアに言い寄る輩まで対処しなければいけないことを痛感したショコライルは、この一筋縄ではいかない想い人の護衛に、さらに気を引き締めるのだった。
次は17時に更新予定です。




