第10章 動き出したそれぞれの想い②
ショコライルとは別で先に執務室に戻ってきたアレンは、すぐさま父親であるロンダの執務室に向かうべく、準備を始めた。
しばらくするとショコライルが執務室に戻ってきたため、制服を着替えさせ、とりあえず急ぎの仕事を任せると部屋を後にした。
ロンダの仕事場は王城の中枢であるため、ショコライルの執務室から少しだけ離れている。今から歩いていけばきっとエクラとの話し合いも終わるだろうと見越して、少しだけゆっくり歩きながら向かった。
ロンダの部屋に行くと、まだ少し早かったのかエクラに呼ばれて不在であったためしばらく部屋で待つこととした。
ショコライルのことで探りを入れられないよう、最近は極力接しないようにきていたため久しぶりの部屋であったが、すっきりと片付いて華美なものがない部屋は、ロンダの生真面目な性格を表しているようであった。
そんなことを考えているとほどなくして扉が開きロンダが帰ってきた。
「おや、珍しい来客だね。」
ロンダは知っていたであろうにわざとらしく声をかけてきた。後ろに控えている部下に人払いをさせるよう指示を出すと、部屋はアレンとロンダ2人っきりになった。
何も言わずとも伝わる関係はやはり親子だなと感じながら、アレンは防音魔法をかけた。
「国王陛下から話を伺ったと思い参りました。」
親子といっても仕事上は立場が違うため、アレンは仕事の一環としてロンダに接した。
「ああ、今聞いてきたところだ。……アレンよくやった。誇りに思う。」
「兄も一緒でしたので。」
「そうか。では2人に何かしてやらんといかんかな。」
久しぶりの親子の会話なので話がうまくできるか不安であったが、自然と言葉は口を紡んでくれるお陰で、穏やかな会話ができていた。
「時間がないから簡潔に言おう。国王陛下の執務室に来るようにとのことだ。表向きは今度のオシリス祭についての話し合いだ。人払いは済ませておく。」
「分かりました。」
オシリス祭についてとわざわざ伝えてきたということは、その資料をもってこいと言うことだ。手ぶらで王太子が国王の部屋を訪れるなど何か問題が起きたと伝えるようなものである。
オシリス祭の資料を持って歩くことで人の目を欺けれる。つまりそのための準備をしろと伝えられているのだ。
アレンはすぐに踵を返すと、ショコライルの執務室に戻っていった。
アレンを見送ったロンダはそのままソファに腰掛け目を閉じ昔のことを思い出していた。
幼いアレンはいつかショコライルを支えるためと言って、ロンダの後ろをついてきては仕事を盗もうと必死だった。成長するにつれ後ろについてくることはなくなったが、必死に勉強していることは知っていた。ショコライルがサボり魔王子と言われた辺りから、急に距離を置くようになり、2人で秘密裏に動いていることは何となくわかっていた。
エクラに何度か相談しても、とりあえず見守ることで落ち着いていたが、ようやく真実を知ることができた。
アレンは親の想像を遥かに超え、先を見越してショコライルと行動を共にしていた。噂を間に受けた貴族達に何度ショコライルの元を離れるよう言われても靡かず、己の信じた道を突き進み、ショコライルを支える姿は、親としてとても誇らしかった。
真実を聞いたら守ろうとエクラと話していたが、守る必要はなかった。ただ彼らを信じて見守ればこの国は安泰だと素直に感じていた。
「少し主に当たりが強いところは似てしまったか。」
ショコライルに対するアレンの対応は、ロンダとエクラのようであった。やはり血は争えないのかと笑うしかなかった。
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――トントン――
「誰だ?」
「ショコライルです。」
「入れ。」
「失礼します。」
国王の執務室にショコライルとアレンが入ったことでメンバーが全て揃った。人払いがきちんとされていたが、念のため防音魔法は施させてもらった。それほどこれからの話は大切な内容なのだ。
それぞれ親子で対面する形でソファに座ったが、エクラ側にはもう1人バーナードも座っていた。
ショコライルはバーナードの同席は頼んでなかったため無言でエクラに視線を送り退室を願ったが、エクラはそれに対して首を横に振った。
「ミルティアのことなのだろう。これから話す内容は。」
「はい。」
「だったら彼にも聞く権利はある。いいね、ショコライル?」
「……はい。」
わざわざ場所を変えて話す場を設けたのは、ミルティアに内容を聞かれたくなかったからだ。だからこそ慎重になっていたが、父親にはお見通しだったようだ。
父親だから聞く権利があるなど言われたら断ることはできない。バーナードはミルティアのこととなると必ず協力はしてくれるはずであるため、バーナードの同席を認めることとした。
ミルティアのことを守りたいからこそ、ショコライルは相談するし、皆彼女のために協力を惜しまない。
エクラとロンダは赤ちゃんの頃からミルティアを知っているので我が子のように思うし、バーナードにとっては愛する娘である。アレンはまだ出会って日は浅いが、ミルティアには笑っていてほしいと願うし、ショコライルは何よりも大切な女性である。
この部屋にいる全員がミルティアのために気持ちを一つにして、今後について考えだした。
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