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サボり魔王子の家庭教師  作者: 梨乃あゆ
第一部 出会編
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第10章 動き出したそれぞれの想い①

いろいろありすぎた外出からようやく王城に戻って来たミルティアは、安心したのか酷く疲れが出てきた。

 まさか久しぶりの実家での食事で、こんなに疲れるとは思わなかった。


 食後、リリアージュ家の馬車でエクラをお忍びで送るついでに馬車に一緒に乗るか聞かれたが、エクラと一緒にショコライルとミルティアが帰ったことがどこかで知られてしまうと、いろいろ詮索されそうなので丁重に断り、転移魔法でミルティアの部屋に戻ってきた。

 今すぐ父親達から離れたかったのが本音であるため、ようやく帰ってこれたことに安堵した。



 

「ミルティア疲れたでしょう?連れ回してごめん。一旦休むといいよ。」

「お気遣いありがとうございます。」

「私はこれから用事があるから、お茶は夜でもいいかな?」

「構いませんが、ショコライル様もお疲れでしょう?今日は早めにお休みされた方がよいのではないですか?」

「疲れたからこそ、ミルティア、君とお茶をしたい。俺はミルティアといられると落ち着くんだ。」

「……分かりました。」


 ショコライルから思いもよらない言葉をかけられ、鼓動が聞こえるのではないかと思うほど、ミルティアの胸は大きく鳴った。


 


「アニスを呼んだからゆっくり休んで。ではまた後で。」

「あっありがとうございます。」



 ショコライルを見送るとミルティアはそのままソファにしな垂れた。

 ショコライルのことを好きと自覚してから、ショコライルの言葉一つでミルティアの心は踊ってしまう。



 

 

 先程のサラダのソースや今の「ミルティアといると落ち着く」などの言葉は、ショコライルの表情からお世辞とは思えないし、庭での急な抱き上げや先日の寝室までの横抱きなど、思い出すと胸が苦しい出来事も、ショコライルはとても穏やかな目で楽しそうにしていた。



 

 ショコライルの気持ちがミルティアに向いているのではないかと、勘違いしそうになる行動や言動の数々に、ミルティアの頭は考えが追いつかずにいた。


「自惚れていいのかしら……。」

「問題ありませんよ。」


 独り言で小さく呟いたはずの言葉に返事が来てミルティアは慌てて姿勢を正した。




 


 アニスはショコライルに呼ばれてミルティアの部屋に着くと、ミルティアが真っ赤な顔をしてソファに沈んでいたためしばらく様子を見ていた。

 きっとショコライルのことを考えている。ミルティアが己の心と対峙する間は見守って応援しようと思っていたが、「自惚れていいかしら……。」と自信なさげに言うためつい声をかけてしまった。


 


 側から見たらミルティアはショコライルに一途に思われている。ショコライルの部下は誰もが気付く態度なのだが、肝心のミルティア本人には全く伝わらずにいるのが歯痒かった。






 

 ミルティアは驚くほど自分自身に対して自信がない。不思議に思ってアレンに相談したアニスは、そこでミルティアの心の傷を教えられた。




 

 ミルティアは学園に入学した当初は、貴族階級で分けられるせいで下のクラスであった。

 そこから持ち前の努力で勉強に励み、テストでは上位貴族を差し置いて上位に食い込み、2学年からは男爵令嬢であるにも関わらず、上位貴族達が在籍する1番成績がいいクラスに席を置くことになった。

 

 それを面白いと思わなかったのが、一部の上位貴族令嬢である。

 勉強ができることで、男子学生からも頼られるミルティアを男に媚びていると悪い噂を流したり、男爵令嬢のくせに勉強するなとバカにした。また少しだけいつもよりしっかりとお化粧をして登校した際には、似合わない、身分を弁えろと嘲笑った。



 

 それでもミルティアをしっかり見てくれ、支えてくれる友人は沢山いたし、教師も男子学生も、優しい上位貴族令嬢もミルティアを気遣い支えてくれたお陰で、悪意ある生徒から守ってくれた。そのお陰でミルティアは明るさを取り戻し学園生活を送ることができていた。


 


 ミルティアを馬鹿にして虐めた生徒達は皆、学園より罰を与えられて、淑女としてあるまじき行為ということで自主退学もしくは落第していた。



 

 悪意ある生徒はいなくなっても、ミルティアにはその件が忘れられず心に深い傷を作っていた。心の傷は蓋をしているはずなのに、ふとした瞬間に蓋が開いてしまい、当時の感情に戻されてしまう。

 男爵家令嬢だから何をやっても無駄であり、思い上がってはいけない。自分は可愛くもないし、着飾るのは無駄なことと考えてしまうため、いつまでたっても自分に自信が持てなかった。



 


 アニスはその話を聞いて激しい怒りを覚えた。あんなに気遣いができ、周りを気にかけるミルティアになんてことをしたのかと、くだらない女のプライドのせいで傷つけたことが許せなかった。 

 

 アレンも同じ気持ちだったらしいが、1番その事実に怒り心頭だったのはもちろんショコライルであった。だからこそ、ミルティアを虐めた令嬢を全て詳らかにし、エクラにも伝えた。王立学園は王族が管理する学園のためエクラは学園を管理する立場にある。だからこそ学園の風紀を乱したという名目で令嬢の家にも罰金の罰を与えさせ、育てた親にも責任を負わせた。

 

 これはミルティアだから特別ではない。虐めが学園で起きれば同じ対応を必ずとるのだが、相手がミルティアとあってエクラもショコライルもいつもより早い対応をした。





 

 アニスは少しでもミルティアが自信を持てるよう、沢山声をかけてミルティアの魅力を伝えた。最近お化粧や髪型にも興味をもってくれたので、少しは伝わったと思っていたが、まだまだであった。



 

 ショコライルの気持ちに薄々気付いているはずなのに、見て見ぬふりして諦めようとしている。

 アニスはミルティアに本当の意味で幸せになってほしかった。

 だからこそ今は手を差し伸べて前へ進むお手伝いをしようと決意した。






 

「アニス!聞いていたの?」

「すみません。ですがミルティア様は素敵な方です。ご自分の気持ちに素直になってください。」

「でも、ショコライル様にご迷惑をかけてしまうかもしれないわ。」

「いっぱいかけてください。散々迷惑をかけられたのですから、今度はミルティア様が迷惑をかける番です!」

「そうなの??」


 アニスからの言葉にミルティアは目を見開いていた。そんなこと考えたこともないと顔に書いてあるようだった。





 

「大丈夫です!ショコライル様はそんなことで怒りません。むしろ喜ぶかもしれませんよ?」

「そっそんなことは……。」

「ミルティア様の中で解決しないでください。どうぞ私に接するようにありのままのミルティア様で接してみてください。」


 ミルティアはアニスの言葉でしばらく黙ってしまった。




 

「確かにアニスの言う通りね。わたくしいつも自分の中で解決していたかもしれないわ。アニス本当にありがとう。あなたのお陰で少しは自信がもてるかも。」

 ミルティアはアニスの目をまっすぐ見つめて微笑んだ。その笑顔は何かを吹っ切れたように清々しかった。





 

「お役に立てて嬉しいです。」

「これからもよろしくね、アニス。」

「もちろんです。さぁミルティア様一度休まれますか?」


 ミルティアはアニスからの提案を首を横に振って断った。



 

「アニス時間はあるかしら?一つお願いがあるの。」

 ミルティアはアニスの顔をじっと見つめた。ショコライルからは休ませるようにと言われているが、そんな顔で見られたらどんなお願いでも叶えたくなってしまう。


「私はミルティア様の侍女です。ミルティア様のためならいつでも時間はありますよ。」


 アニスが微笑むとミルティアは嬉しそうに顔を綻ばせ、お願いを伝えた。

 あまりに可愛らしいお願いに、アニスは益々この可愛らしい主を側でずっと支えていこうと心に強く誓った。

 

次は11時に更新予定です

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