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サボり魔王子の家庭教師  作者: 梨乃あゆ
第一部 出会編
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第1章 4年ぶりの再会③

ミルティアが父親であるバーナードを睨みつけた同じ時、王城でも睨みつけられている青年がいた。

 

 青年の名はアレン。カルレッタ公爵家の次男であり18歳。

 カルレッタ公爵家は代々国王を支え続ける家系であり、父親のカルレッタ公爵は現国王であるエクラの右腕の宰相として国王を支えている。

 

 アレンは次男であるため家督を継ぐことはないが、幼少期より共に育ったショコライルを支えるため、側近として仕えている。ショコライルのために国政などの勉強に励み、側ですぐに護れるようにと魔法と騎士の鍛錬も行っているため、護衛も兼ねている。

 ショコライルのことを誰よりも案じ、時に彼の兄のような存在であるが、そんな彼は今その主であるショコライルに睨まれている。

 

 

「何故睨むのですか?」

「当然だろう?また寄越すなんて!」

「文句ならお父上である陛下におっしゃってください。」

 ショコライルは執務室に入ってきてすぐ、アレンより家庭教師がこの後登城することを聞き不機嫌になっていた。

 

「全く、父上も何人寄越せば気が済むのか。」

「今回も面会しないのですか?」

「いつも通りだ!」

「本当によろしいんですか?」

 

 ショコライルはいつも家庭教師が来ても最初の面会すらしなかった。アレンはいつも通りでいいのかの確認をしたが、つい含み笑いをしながら尋ねてしまった。いつもそんなことを聞いてこないアレンにショコライルは怪訝な顔をした。

 

「……どういうことだ?」

「陛下にはショコライル様の気持ちが分かっているのかもしれませんね。」

「なに?」

「お名前ぐらい聞くべきかと思いますよ?」

 アレンはそう言っていつもの穏やかな顔ではなく、不適な笑みを浮かべてショコライルの顔をみた。

 

 (こいつ、何を企んでる?)

 長い付き合いの2人にとって、お互いの少しの変化や表情で言いたいことが分かる時がある。ショコライルは直感で今のアレンの表情は今まで見た中で1番の悪巧みの顔だと気付いた。

 

「お前がそこまで言うから……名前ぐらい聞こう。」

 アレンの手のひらで踊らされている気分になったショコライルは少しバツが悪そうに答えた。その返答を待ってましたとばかりに今度はアレンが満面の笑みを浮かべて言葉を続けた。

 

「今度の家庭教師はリリアージュ男爵家のご令嬢、ミルティア嬢です!」

「なっ!」

 名前を聞いてショコライルは椅子から立ち上がり口を開けて立ちすくんだ。

 

 

 (朝からいい顔が見えた!)

 ショコライルのあまりに間抜けな表情にアレンは笑いを堪えるのに必死だった。今まで一緒にいてこんな表情は見たことがなかったからだ。

 

「王太子がなんていう顔をしているのですか!」

「……しっ仕方ないだろう!」

「あー、あなたがのんびりしているから先に陛下が動いたのですよ、きっと。あなたの気持ちなどお見通しだったのですねー。」

「そんなわけ……父上が分かるはずないだろう!」

「そうでしょうか?子供の時のあなたはそれはそれは分かりやすかったですよー。」

 

 兄が弟を揶揄うように、アレンは主であるショコライルを揶揄うように話した。普通なら不敬にあたりそうであるが、2人は兄弟のように育ったのでこれぐらいでは不敬になったりしない。それぐらいこの2人は強い信頼関係で結ばれているのだ。

 

 

「分かるものか!あっあれだ、父親同士が仲がいいから頼んだのだろう!」

 

 ショコライルは自分を納得されるようにそう慌てて言った。その慌てようにアレンはもう我慢ならないと声に出して笑い出した。


 

「ハハッ……あなたがこんなに慌てるとは、あーだめだ、止まらない。フフッ」

「お前、俺で遊ぶな。」

「失礼しました。……っでどうされるのですか?」

「何が?」

「面会」

「……っ」

 アレンの面会という言葉にショコライルは狼狽えた。


 

「いつも通り面会しないでもいいですよ。でもそれをやったら今度こそミルティア嬢には幻滅されるでしょうね。」

「うっうるさい!だいたいなんでこんなことに……」

「あなたが拗らせすぎなんですよ。もう何年ですか?拗らせて……。」

 

 アレンは最後の言葉を笑ってしまいうまく言えなかった。


 

「拗らせてなど……いない!」

「断言できないじゃないですか!」

「……とにかく、面会はする。応接間に通すように。」

「わかりました。仰せのままに。」

 

 アレンは笑いながら礼をすると準備のために部屋を後にした。扉が閉まったと同時にアレンはまた耐えきれなくなり笑い出した。


 

 

「ショコライル様があんな顔をするなんて。あの方にはあの様な表情をさせることができる人が必要です。このきっかけがショコライル様の心を穏やかにできるよう全力を尽くしましょう。」

 そう小さく呟いて、歩き出した。



 

 アレンが出て行った扉を見つめながら、ショコライルはゆっくり椅子に座った。

「何故こんなことに……。俺はどんな顔で会えばいいんだ。」

 右手を強く握りしめ、ショコライルは小さく呟いた。

ようやくもう1人の主人公サボり魔王子のショコライルが出てきました!


本日はもう1話アップしてます。

引き続きお読みくださると嬉しいです!

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