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サボり魔王子の家庭教師  作者: 梨乃あゆ
第一部 出会編
26/183

第6章 サボリ魔王子と視察デート③

ショコライルについて向かった先は、家の裏口だった。

 玄関より小さな扉を抜けると、果樹園が広がっており、さらにその後ろは森となっていた。

 家の正面から見ると果樹園が隠れ、森だけが広がっているように見えるため、森の木々達がいいカモフラージュとなっていた。

 


「こんなに沢山!」

 ミルティアは想像してたより広い果樹園に驚いた。ここも4つに分かれており、季節や土を変更して育てているのがわかった。


 

 

「リリ説明いる??」

 答えなど分かっているのに、ショコライルは意地悪そうにミルティアに質問した。ミルティアは当然全ての話が聞きたかったので素早く返事をした。

 

「もちろんです!お願いします!」

 思っていた通りの返事が来たのが嬉しくて、ショコライルはつい口元を緩ませた。



 

 ショコライルは一つ一つを丁寧に説明し、ミルティアの質問にも全て答えてくれた。3つの場所の説明が終わり、残り1つと思っていたミルティアだったが、ショコライルは4つめの場所には行かず、家の中に戻ろうとしてしまった。4つ目の場所には見慣れない木が植っていたため、話を聞きたかったミルティアは不思議に思いショコライルに尋ねた。



 

「あの……チョコさん。まだ一つ残ってます。」

 ミルティアが懇願するような顔をしてきたため、ショコライルは狼狽えた。

 

 

「あれはその……まだ研究途中でうまくいってなくて……。ちゃんとできたら教えるよ。中途半端なものは見せたくないんだ。ごめんね。」

 

 

 ショコライルは歯切れが悪い言い方で誤魔化した。まだ話せない内容なら深掘りはできない、それ以上追求することをミルティアはやめた。


 

「村に行ってみようか?」

「ぜひ!!」

 少し気まずくなった空気がショコライルの一言で変わった。ミルティアは村を見てみたかったので楽しみでしかたなかった。


 自分の先程までの態度で、嫌な気持ちにさせてしまったかもしれないと思っていたショコライルは、嬉しそうなミルティアの顔を見て安堵した。



 

「ではリリ。一緒に行こう。」

 ショコライルはミルティアをより一層優しい目で見つめてきた。まるで愛する彼女の顔を見る彼氏のように。ミルティアは恥ずかしさのあまり、その視線から逃げ出したい気持ちになったが、ショコライルがチョコになりきっているんだと理解し、自分も迷惑をかけないようリリになりきろうと決意した。


 

 

「もちろん、チョコさん。」

 ミルティアも優しく微笑んだ。ショコライルが一瞬固まった気がしたが、すぐにミルティアに手を差し出してくれたため、ミルティアもその手を掴み2人で村に向かって歩き出した。



 

 

「いってらっしゃい!」

 畑の方からルースとエディルダ、アニスの声が聞こえてきたため、ミルティアは振り返ると大きく手を振りながら

「行ってきます!」

 と元気に答えた。



 

 楽しそうに笑っているミルティアと、耳を真っ赤にしたショコライルを見つめる彼らの目は生温かかった。



 

(ショコライル様、頑張って!)

 みんなが心の中で願うことは一緒であった。

 当のショコライルは先程のミルティアの笑顔にやられたことがバレず、これ以上間抜けな姿を見せないよう、どうにか挽回しようと心に決めて歩いていた。




 

 カルレッタ公爵領にショコライル達が作った村の名はファラフィラ村。


 

 小さな村のはずなのに、とても活気があった。皆とても明るく幸せそうに暮らしており、村の大通りにはお店が並んでいる場所もあった。可愛い雑貨のお店に美味しそうなお菓子のお店、レストランなど王都より規模は小さくても素敵なお店が並んでおりミルティアは心を踊らせた。




 

「気になるお店でも入ってみる?」

 ミルティアの楽しそうな姿を見て、ショコライルは嬉しそうに聞いてきた。つい我を忘れてはしゃいでしまったことに恥ずかしくなったが、そこで諦めたくもないためミルティアはショコライルの誘いに乗ることにした。



 

「ありがとうございます!」

「どのお店が気になる?」

 

 ミルティアの耳元に顔を近づけて、小声でショコライルは話した。ショコライルの行動にさらに恥ずかしくなり、耳を真っ赤にしたミルティアは心を落ち着かせるのに必死だった。そんな姿を見てショコライルは楽しそうな顔をしていた。


 

 

 (ショコライル様は恋人ごっこでわたくしの反応を楽しんでいるんだわ!)


 

 ミルティアはショコライルの行動の意味を推察し、少し悔しそうな顔をしながらショコライルを睨んだ。


 


 ミルティアがショコライルに文句でも言おうと口を開いたが、言葉は出る前に村人からの声で遮られてしまった。


 

「チョコ!お前本当に彼女いたんだな!」


 ミルティアが声がした方を振り返ると、ショコライルより年上の男性が手を振りながら近づいてきていた。

 

 (これで何人目かしら?…)

 ショコライルが言ったように村に出てから、会う人会う人にショコライルの彼女かと聞かれ続けていたため、ミルティアは内心またか!と思いながらバレないように笑顔を浮かべた。



「ノラさん。……いるともいないとも言ってないですよ。」

「なんだよ。照れるなよ。いやー、びっくりした。お前があんな顔で女の子を見るなんてな!人前で見せつけてくれるね。」

「そんなつもりはありません。」

 

 先程のミルティアとのやり取りを見られてしまったことに、少しバツが悪そうな顔をショコライルは浮かべていた。


 

「でも本当に彼女がいてよかったよ!お前ちっとも女の子の影が無いくせに、村の女の子のアプローチをかわすから、女性に興味がないと思ってたよ。」

「アプローチされてたのですか?」

 

 ミルティアはつい口を挟んでしまった。静かに話を合わせるのが正解なはずなのに、気になってしまい口が滑ってしまった。慌てて口を塞いだがもう言葉は出てしまっているので後の祭りだ。ミルティアは申し訳なさそうにショコライルを見つめた。ショコライルは呆れたようなため息を一つ吐いていた。

 

「アプローチされてなどないです。」

 

 アプローチされていると言われているのに否定するなど、ものすごくショコライルは鈍感なのではないかとミルティアは心配になった。王太子の立場で自由に恋愛はできないだろうが、それでも好意を寄せられているのか分かるぐらいは、持ち合わせていてもいいのにとミルティアは考えていた。



 

「お前、気づいてないとか嘘だろ?」

 ミルティアと同じようにノラと呼ばれた男性も呆れていた。

 

「思い当たらないですが。」

 ショコライルは本当に分からないというように、真顔で答えていた。


 

 

「はぁ……。まぁそうだよな。こんな可愛い彼女なんていたらそりゃ他の子なんて目に入らないよな。」


 

 ミルティアは慣れない言葉に慌てた。彼女のフリをするのも大変なのに、社交辞令でも褒められると恥ずかしくなる。


 両親には可愛いと沢山言われたが、他人からは言われることはないためくすぐったい気持ちになっていた。

 そんなミルティアを察してかショコライルが口を開いた。



 

「そういうことです。ほら彼女が困ってしまってます。ノラさん仕事あるでしょ?こんな所で油売ってないで仕事しましょう。」

 

 ショコライルは否定することなく、話題を切り替えた。ショコライルが否定しなかったことに驚いたが、今は彼氏であるため否定するのは確かにおかしいとミルティアも納得した。



 

「まあそうだな。新しい仕事できたから、今から頑張って村中歩かないとな!」

「余計なことしませんよね?」

「しないしない!ただチョコが可愛い彼女と歩いてると、村の女の子達に伝えるだけさ。」

「それが余計です!」

「大切なことだぞ!だってお前に恋心を抱いている子達に、新しい恋へと進んでもらわないとな。独身の男なんて沢山いるんだ。チョコが独り占めするのはよくないからね。」

「もとより独り占めしておりません。」

「そうだよなー。こんな可愛い彼女独り占めしてるんだもんな。」

「いい加減にしてください!!」

「悪い悪い!じゃあなチョコ、彼女ちゃん。デート楽しんで!」

 ショコライルを満足するまで揶揄い、ノラは颯爽と消えていった。


 


「ごめんね、リリ。楽しみにしてくれてたのに邪魔されて。なんだか嫌な予感がするから、気になるお店に入ったらすぐに帰ろっか。」

 ショコライルはミルティアに申し訳なさそうに呟いた。自分の対応のせいで、ミルティアの村散策を中止しなければいけなくなったからだ。


 

 

「謝らないでください。ではあちらのお店だけいいですか?」

 ミルティアはショコライルの気遣いがただ嬉しいと思ったため、謝らないでほしいと思っていた。



 

「もちろん!」

 気になるお店に目線を送ると、ショコライルは気付いてくれたのか、ミルティアの手を取りお店に入って行った。




 

 ショコライルの読みは的中し、頑張って村中に2人のことを話したノラのお陰で、1時間後には村中がショコライルとミルティアの話題で持ちきりになっていた……。

次は17時に更新予定です

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