第4章 サボり魔王子は逃げ出したい④
「おはようございます!アレン様!」
人もほとんどいない朝5時の食堂で、まだ少し寝ぼけていたアレンは、聞こえるはずのない声が聞こえて一気に目が覚めた。
「ミルティアさん!どうしたのですか?こんな朝早く!」
普段のミルティアはもう少し遅い時間に食堂に来るため、朝アレンと会うことは一度もない。だからこそこんな時間に彼女がいることに戸惑っていた。
ミルティアも普段完璧な装いのアレンが、深い緑色のシワひとつないいつもの制服ではなく、私服のラフな格好に少し寝癖のある髪のままでいるため、アレンも普通の男性であるんだと感じていた。
「朝早くにすみません。ここよろしいですか?」
ミルティアはアレンの対面に座れる椅子を示して尋ねた。
「もちろんです。どうぞ。」
アレンは頷きながら席をすすめた。
「ありがとうございます。」
2人は向かい合って朝食を食べだした。
「こんな朝早くどうしたのですか?ただの早起きではないですよね?」
食事をしながら、アレンはどうしても気になることを確認した。
ミルティアはアレンから話しかけてくれるのを待ってたのかのようにニコリと微笑んだ。
「さすがアレン様。実はお話がありまして。あまり人に聞かれたくない内容なので、できれば2人っきりでお話したいのですが……。」
2人っきり……この言葉にアレンは反応してしまった。ミルティアに深い意味はないだろうが、ショコライルの顔が浮かんでしまいつい慎重になってしまった。それに聞かれたくない話というのも気になる。アレンは仕事前に解決しようと決め、食後執務室に来るように伝えた。
食堂で一度分かれ、部屋で身支度をしてから執務室に向かったミルティアは、執務室の扉を叩いてから中に入った。
まだショコライルはおらずアレンだけがいた。執務室のソファに座るよう促されたミルティアは、素直に従った。
「ショコライル様は本日は少し早く7時にこちらに来る予定です。」
アレンにそう言われてミルティアは部屋の時計を確認した。まだ1時間はあるためミルティアは安心して話し出した。
ミルティアの言葉にアレンはただ驚き、頭に手を置いてしばらく動かなかった。
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アレンとの話が終わり部屋に戻ると、アニスが真っ青な顔でミルティアに駆け寄ってきた。
「ミルティア様。よかった。どこかお怪我などありませんか??」
ミルティアはアレンと話すため、普段より早く部屋を後にしていた。男爵家にいた頃は当たり前だったので身支度も1人で行ったが、アニスに置き手紙をするのを忘れていた。
きっといつもの時間に部屋に来たアニスは、部屋がもぬけの殻で驚いたのだろう。今にも泣きそうな顔をしているアニスにどれだけ心配をかけてしまったのか、ミルティアは反省した。
「ごめんなさい、アニス。少しアレン様とお話ししたくて早起きしたんです。あなたを起こすのも悪いと思って1人で準備してしまったけど、アニスに手紙を残しておくべきだったわ。心配かけて本当にごめんなさい。」
未だミルティアを心配そうに見つめてくれるアニスに、ミルティアは謝ることしかできなかった。
「私のことなどお気遣いなく。ミルティア様がいらっしゃらないことが1番嫌です。今後は必ず何時でも、このアニスをお呼びください!」
アニスは力強くミルティアの手を握って自分の思いを伝えてくれた。少々手を握る力が強く、アニスが力持ちであることにミルティアは驚いたが、それよりももう2度とアニスを悲しませたり困らせて、こんな辛い顔は見たくないと思った。
「ごめんなさい、アニス。次からは必ずあなたを呼ぶわ。でも、寝ていて来れない時は置き手紙を必ず置くようにするからね。」
アニスにもしっかり休息してほしいミルティアは、提案してみたが、ミルティアの手をさらにアニスは強く握って拒否の姿勢を示した。
「必ず起きますので、ベルを鳴らしてくださいね!!」
アニスは机の上にあるベルを目で示した。小さなベルなのに手に持って鳴らすとアニスはどこにいても来てくれる。毎回アニスの聴力に関心していたが、寝ていても聞き分けるのは無謀ではないかとミルティアは考えていたが、アニスの力強い手と目を見ると、アニスならそれが可能なのだと妙に納得してしまった。
「分かったわ、アニス。必ず鳴らすわ。だからその……少し手の力緩めてくれないかしら?」
アニスによって力強く握られた手はそろそろ限界に近づいていたため、ミルティアは申し訳なさそうに呟いた。
アニスは慌てて手を離すと謝罪を繰り返していた。
「気にしないで、元はと言えばわたくしがいけないのだからね。」
謝り続けるアニスにミルティアはもう謝らないよう伝えた。
「アニス、あなたにお願いがあるの。」
ようやく落ち着いたアニスに、ミルティアはあるお願いをした。ミルティアからのお願いを聞いたアニスは目に闘志を宿したようにやる気に満ち溢れていた。
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