第4章 サボり魔王子は逃げ出したい①
ミルティアとショコライルの勉強は順調に進み、3日に1回だったのが気付けば2日に1回へと変化していた。
アレンが言ったように、ショコライルは勉強をサボることをせず、毎回まじめにミルティアの授業を受けていた。
(あのアレン様はどんな手を使ったのかしら?あんなにサボると噂されていた殿下を、こんなに素直に勉強させるなんて……。)
ショコライルがこんなに勉強するのはアレンのお陰だとミルティアは感謝していた。
勉強内容は任せると言うことだったので、基礎から始めたがどれも問題なくでき、さらに難しいところまでいっても涼しい顔をして答えてくれていた。
いくら幼少期から入学前まで王太子教育を施されていたとは言え、ここまで難しいことができるとは考えていなかったミルティアは、最近ある考えが浮かんでいた。
勉強中どこか悩んでいるような上の空のミルティアを、ショコライルは不安そうに眺めていた。
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「アニス。最近ミルティアに変わりはないか?」
夜の恒例となったアニスからのミルティアの報告で、ショコライルは最近何か思い悩んでいるミルティアに心当たりがないか尋ねた。
「特には。何か気になることでも?」
「いや、アニスが気付いていないなら私の勘違いだろう。」
「ショコライル様が1番ミルティア様のことをご存知なのです。私が気付いていないだけかもしれません。教えてくださいませんか?」
ショコライルに指摘されても思い当たることがないアニスは、自分の観察力が足りないと反省するばかりであった。
「アニス、そんなに落ち込むな。気のせいかもしれないから。」
「いかがなさいましたか?」
なかなか本題を離さないショコライルにアレンは催促するように声をかけた。
「最近勉強中、何かを考えて上の空の時がある気がしたんだ。思い当たることが分からないのでアニスに聞いてみたんだ。」
「上の空ですか。」
アニスはショコライルの言葉から考えを巡らせていた。勉強が始まってから、より楽しそうに過ごしているミルティアからは悩みなど感じ取れないでいた。
「勉強のことに関しては分かりかねます。」
「そうか。」
期待していた答えが得られず、ショコライルは肩を落とした。
「ですが……。他のことで思い当たることはあります。」
「それは?!」
先程の落第が嘘のように、ショコライルは早く次の言葉を聞きたいと焦って促していた。
「最近、ミルティア様はショコライル様が用意したドレスをよく眺めております。」
「そっそうか。」
予想外の言葉にショコライルは狼狽えた。アニスがミルティアに支給されたと伝えたドレスは実はショコライルからのプレゼントであった。
アニスから手持ちが少ないと言われてすぐ、個人的に手配したのだ。
まさか気に入らなかったのか?そんなことを考えているショコライルに、アニスは言葉を続けた。
「ご安心ください。大変気に入っておられます。」
「そっそうか。」
ショコライルは安堵したように小さく呟いた。ミルティアのことを考えて選んだドレスを気に入ってくれたことが、嬉しかったのだ。安心したショコライルであるが、一つの疑問が浮かんできた。
「気に入っているなら問題ないはずだが。アニスは気になることが?」
今ここで伝えてくるということは何か訳があるはずである。ショコライルからの問いかけにアニスは微笑んだ。
「はい。ある一つのドレスを着られると毎回恥ずかしそうにされるのです。」
ショコライルが選んだドレスはどれも露出は控えてあるし、体のラインを強調しているわけでもない。恥ずかしがる要素はなかったため、ショコライルはアニスの言うことが理解できなかった。
「どのドレスだ?」
「色が濃いドレスです。」
アニスの言葉に今度はショコライルが真っ赤になった。
色が濃いドレスは一つしかなかった。それはミルティアが最初の勉強会で着た青色のグラデーションのドレスであった。
「あー。あの独占欲丸出しのドレスですか。」
固まっているショコライルを横目にアレンが楽しそうに会話に入ってきた。
「はい、あの独占欲の塊のドレスです!」
アニスも負けじと応戦した。先程までの暗い雰囲気だった室内はいつしか明るい雰囲気へと変わっていった。
「お前達……。いい加減にしろよ。」
動かずに固まっている主をいいことに、言いたい放題の2人にようやく我に返ったショコライルは2人に文句を言った。
「いや、事実ではないですか?」
「事実です!」
2人は間違ってないと態度で示してきた。
「誰が見ても独占欲の塊と言うと思いますよ?」
「そっそうか?」
「あなたの瞳の色まんまですからね!自分の色を纏わせるなど独占欲でしかありませんよ!」
「やりすぎたか……?」
「結果的に意識してもらえてるみたいなので、成功なのではないですか?」
先程のアニスの言葉でもしかしてと考えていたが、第三者から改めて言われると勘違いではないと言われたみたいで嬉しかった。
「嫌がられてないんだよな?」
「嫌がられてはないかと思われます。」
「よかった。」
ショコライルは安堵したように微笑んでいた。
「ですが、そうなるとショコライル様が感じたミルティアさんの悩みはわかりませんね。」
「そうだな。」
3人はそれぞれ考えを巡らせていた。先程までの賑やかさが嘘のように部屋の中は静まり返っていた。
アレンはどこかのタイミングで探りを入れてみようと考えていたが、思いの外早くその答えを知ることになるとはこの時まだ知らなかった。
次は11時に更新予定です




