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追放される氷の令嬢に転生しましたが、王太子様からの溺愛が止まりません〜ざまぁされるのって聖女の異母妹なんですか?〜  作者: 星井ゆの花(星里有乃)
第二部 第三章

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第03話 再び巡る命


「それにしてもレンカちゃん、今どうしているのかしら?」


 天使ペタライトがポツリと呟く。

 それは歓迎会が無事に終わり部屋を与えられて、ベッドの潜った時にふと出た独り言だった。この部屋はレンカが使っていたはずだが、未来人のレンカにとって将来のフラグが折れることは存在意義が消されるも同然。

 だからレンカの自室もレグラス邸に用意されていた予備室という設定となり、そのまま天使ペタライトの部屋となった。


 コンコンコン!


「ペタライト様、まだ就寝されていないのですか」

「ごめんなさい、ローザさん。何だか寝付けなくて」

「まぁ! 慣れないベッドのせいかしら。ちょっといろいろ準備しますね」


 部屋のドアを叩く音が聞こえて、声を掛けてきたのはメイドのローザだった。天使が寝付けないというのも不思議な話だが、実体化すると人間とさほど変わらない機能になるらしい。



「このライトに水をいれてアロマオイルを垂らして、しばらくすると心地よい眠気がやってきます。ラベンダーのアロマには安眠効果があるんです」

「ふふ。私、ローザさんの娘になったみたい」

「私なんかで良ければ、マリア様の代わりになりましょう。だから今だけは、天使様も普通の子供のように過ごしていいんですよ」


 手際よくアロマオイルを準備するローザはお母さんのようで、母親のいないペタライトからするとくすぐったい感覚だった。天使にとって聖母マリアをイメージするのみで、実際には存在していないからだ。


「ありがとう、ローザさん。私、鉱石の中にいたときは、持ち主さんを見守るのがお仕事だったから。自分のことはあんまり考えたことがなかったの」

「新しい持ち主のルクリアさんは、とても優しい方ですよ。けど、ペタライト様のことは妹のように扱っているし、ご自身を大切にされても良いのでは。きっとそれがルクリアさんのためにもなります。一応、私はルクリアさんの義理のお母さんでもありますからね」

「そっか。じゃあ、私は今日からルクリアお姉ちゃんの妹になるのかな。ふふっ家族っていいね」


 いなくなってしまったレンカには、家族がいたはずだ。それに、お母さんとも離れてしまったはず。寂しくはないのだろうかと余計に可哀想になる。

 ラベンダーの香りがベッド周りを包み込んで、次第に眠気がやって来た。


「では、今日はゆっくりお休みなさい」

「ローザさんもお休みなさい」


 ドアが閉められて、ペタライトは再び部屋で一人きりとなる。眠りにつく前に、ペタライトはお祈りをすることにした。

 

「せめて、レンカちゃんの魂が安らぎの場所へと導かれますように」


 かつて自分のマスターだった少女を想い、個人として祈りを捧げる。ベッドサイドのランプは天使の祈りに呼応するように、柔らかな光を帯びたのち静かに消えた。



 * * *



 さて、天使とはぐれた魂は一体何処へと向かうのだろうか。


『嗚呼、私……このまま消えちゃうのかな? こんな風に吹雪に混ざって空を彷徨うなんて。何処かで休めると良いのだけれど』


 古代地下都市アトランティスから地上へと昇ったレンカの魂は、光の粒となって氷の欠片のように氷河期の天空を浮遊していた。隕石の大量落下という災害により、メテオライトという国は事実上の滅亡となっている。予言を信じて古代地下都市に逃げ仰た人々は、既に先祖帰りともいうべきか地下暮らしに馴染み始めていた。


 だが、人間というものはそう簡単には居なくならないらしい。

 どうやら奇跡的に隕石落下の被害から生き延びた人々がいるらしく、新たな集落を形成しているようだ。


『あれは何。雪の中で、小さな町が形成されている。ロッジがいくつかと作業用の小屋、まだまだ町と呼ぶには頼りない集落のようなものだけど。でも、人が住んでいる気配があるわ』


 吸い寄せられるようにレンカは集落の灯りの方へと近づいていく。徐々に見えて来たのは、狩りをして得たであろう貴重な鹿肉を保存用に加工する人の姿。


「明日の朝は早いからもう寝ないと」

「あとちょっとで仕込みが終わるから、先に寝てていいぞ」

「そう。無理しないでね、お休み……って。えっ……誰かしら、この子。行き倒れっ? けど、こんな辺鄙な集落にどうして人が」


 仕込みについて会話をしていた夫婦二人が、食料準備室を出てすぐに異変に気づく。少女が学生服のままロッジの入り口で倒れているのを発見する。


「格好からして学生さんか。メテオライト魔法学園の制服だけど、今はもう閉校しているし……」

「こんな寒い中にコートも着ないでいるなんて、不自然だけど。魔法実験か何かのミスで飛ばされて来たとか? うん、まだ息があるわ」


 少女の正体は、先ほどまで光の粒として空を浮遊していたレンカだ。以前のようにカルミアに似せて金髪にするわけでもなく、正真正銘銀髪のナチュラルな状態のレンカ。光の粒から再形成された肉体と服は、地上で暮らしていた頃の以前のレンカを再現したものだった。


「このままじゃ凍死しちゃうぞ。とにかく中に運ぼう」


 幸い、親切な夫婦に保護されたレンカ。地上の小集落で、改めて得た肉体はとても頼りない。けれど、それでも魂から肉体へと変化した彼女は新たな一歩を踏み出したのだった。


 再び巡る命として、レンカは何を見るのだろうか。


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* 断章『地球の葉桜』2024年04月27日。 * 一旦完結した作品ですが、続きの第二部を連載再開して開始しました。第一部最終話のタイムリープ後の古代地下都市編になります。よろしくお願いします! 小説家になろう 勝手にランキング  i850177
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