第12話 古代地下都市の地図
【速報・隕石衝突時の移住先、古代地下都市の地図が見つかる】
オークションハウスにて、我が国の未来を左右する地図が出品された。地図の名は『古代地下都市アトランティスの地図』だ。アトランティスの名は正式名称ではなかったが、幻の都市ということで今回からその名が付けられた。
魔法都市国家メテオライトは、過去に隕石の衝突により氷河期を迎えており、伝承では人々は地下に移り住んで氷から耐え凌いだとされている。
架空と思われていた伝説の地下都市は、氷の精霊ベイラの封印により守られているとされており、氷河期の際には絶対零度の聖女がその扉を開けたという。
出品者は【未来からの来訪者】を名乗る謎の団体で、隕石衝突の解決策が見つかったため、探索する気のある組織に落札して欲しいとのこと。隕石衝突時の避難先としては一つの可能性に過ぎないが、王宮はこの地図を高額で落札し、本格的な調査に乗り出すという。
* * *
古代地下都市アトランティスの地図が発見されてから、数日後。
まるで初めからそういうシナリオが用意されていたかのように、カルミアは家を出て寄宿舎へと移っていった。
ルクリアからすれば五月蝿い異母妹と家庭内で顔を合わせなくなるだけでもホッとするが、彼女の現状が分かりにくくなってしまったのも事実。話はあっという間に、他の生徒にも回ったようで、早速ルクリアはクラスメイトから質問責めにあった。
「ねぇ、生徒会役員のカルミアちゃんって、どうして突然寄宿舎暮らしをすることになっちゃったの」
「ごめんなさい、カルミアが一体どういうつもりで家を出て寄宿舎暮らしを選んだのかは、私にも分からないわ。うちはの父親は本人の意思を尊重する方針だし、私も憶測では何も言えないの。知りたければ、本人に訊いてちょうだい」
異母妹のことは分からない、本人に訊いてほしいという返答しか出せないルクリア。入学早々姉妹で仲良く登校していたため、それほど不仲には思われていなかった二人だが、ここに来て関係性が複雑化したのではないかと憶測を呼んでしまう。
『……やはり、ギベオン王太子の婚約者という肩書きを、異母姉妹で共有するハメになったために別居するのでしょうか?』
『えっ継母とカルミアさんが上手くいっていないから、すぐに寄宿舎に移動したんじゃないの』
『最初から入学したら寄宿舎に入りたいって希望してたのかも知れないじゃない?』
一番の注目理由はやはり、これまではルクリアのみがギベオン王太子の婚約者だったのを撤回して、カルミアも婚約者候補となったことだ。妾の子という立場だったカルミアは、実のところレグラス伯爵の籍に入ったのはつい最近だ。
元からレグラス伯爵の娘のいずれかと結婚するという契約内容なら、カルミアがすぐに婚約者候補になっても特段問題ないという王宮側からの正式な発表があった。
『けどさ、ルクリアさんに王妃になって欲しかった理由って、隕石衝突で起こる可能性の氷河期に備えて氷の加護持ちが必要だったんでしょう。カルミアさんって聖女試験に合格しているけど、氷河期に強いわけじゃないんじゃない?』
『それがさ、万が一の時に避難出来る氷の地下都市アトランティスの地図がオークションハウスに出品されて、王宮が買い取ったんだって。ルクリアさんには、その入り口を開ける氷魔法さえ完成させて貰えれば、王妃になる必要はないらしいよ』
『地下都市アトランティスって、ご先祖様達が前回の氷河期を凌ぐのに潜んでいたっていう例の? まだ、使える状態で残ってたんだ』
『さあ? けど、かなり広い居住地域らしいから、地上の人が全部移動しても大丈夫なんだって。長期間住むのであれば、住人が住む家とか食料調達を検討するようなんじゃないか』
隕石衝突に関する直接的な解決策が提示されたのも、状況が変化した理由である。過去の隕石衝突時には、地上での暮らしを捨てて地下都市を作り氷の世界が明けて春が訪れるまで耐えたとされている。
だが、そんな話しは架空の作る話で、現在の魔法都市国家メテオライトの住人はよその地域からの移民の子孫だと考えられていた。
しかし、オークションハウスに出品された地図の存在が、これまでの常識を一気に覆した。
『何処かに眠る地下都市に移り住めば、隕石衝突後も国民は全員助かるらしい。地上を去るのは哀しいが人間が死滅したら元も子もない。そもそも、地下都市は古代文明の叡智を集結させたもので、現代の地上に引けを取らない設備だという。上手く見つけて移動すれば我が国は安泰だ』
この展開には、未来からやって来たレンカでさえ驚いていた。寄宿舎の自室で、隣の部屋になったカルミアと共に、号外新聞の一面記事を広げて話し合う。
「まさか、未来から古代都市の地図がこの時代に送付されるなんて。だって、今までは夢見の薬で延々と仮死状態で夢を見続けるか、カルミア叔母さまの聖女の魔法で乙女ゲームのシナリオをずっと繰り返すかのどちらかだったんですよ」
「へぇ……レンカ、あんたタイムリープの秘密をさっくりと話しているけど。まぁこれが、夢オチから全員が救われるための解決策ってことね。ただ、プレイヤーの未亜である【私】は良くても【この乙女ゲームの主人公カルミア・レグラス】は、永遠の女子高生で無くなる展開をどう思うかしらね」
「どうって、そこは可哀想ですが夢が醒めてもループを終わらせてもらいましょう。けど……この解決策が生まれてしまうと、ルクリアお母さんの結婚相手は一体誰になるんでしょう?」
レンカは両親の結婚フラグが下がった際に消えかかった自分の腕を見て、これから始まるルクリア結婚の選択肢について疑問を呟く。
「レンカ……」
「私、まだ消えたくないな……」




