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追放される氷の令嬢に転生しましたが、王太子様からの溺愛が止まりません〜ざまぁされるのって聖女の異母妹なんですか?〜  作者: 星井ゆの花(星里有乃)
正編 第三章

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第03話 タイムワープの経緯


 二十年後の未来では、隕石の衝突により永遠の氷河期の中に眠る魔法都市国家メテオライトを救い出すための、一大プロジェクトが設立されていた。


「時間移動技術がいくつか開発されたが、それを活かして過去を変えることはまだ行われていない。全てが氷で閉ざされて時間が止まっているメテオライトのみになら、この時間移動技術を用いても他国に影響を及ぼさないはずだ。隕石の衝突は免れないとしても、せめて人命だけでも救い出したいと思う」


 発起人はジェダイト財閥のネフライトであり、生き別れた兄アレキサンドライトや妻ルクリアの家族を救う意味でも私財を投げ打つ価値があると判断したそうだ。


 時間軸の法則では、本来あるべき姿を変えて過去を救い出すと、自分達の未来をも消滅させるためタブー視されている。だが、国ごと二十年間氷漬けになっているという特殊な環境を考慮すると、その失われし二十年間は他国と一切の出入りを封じるという条件であれば、人命を救い出せるという結論が出た。


 実験は、犠牲を伴いながら進んでいった。


「ネフライトさん、氷河期で人々が倒れた原因は避難先を用意出来なかったことにあると思うの。私が過去に戻って妹や王太子を説得して、一人でも多くの命を救ってみせるわ」

「ルクリア、まさかキミが最初の被験体になるなんて」

「私にもいろいろと未練があるのよ。追放された身とはいえ自分だけ助かった罪悪感もあるし、大丈夫……危なくなったら戻ってくるから」


 意識だけを逆行転生させる仮のタイムワープ方法で、ネフライトの妻ルクリアが過去に飛び意識が戻らなくなった。


「妻がいつまで経っても過去の世界から帰って来ない。やはり、故郷や王太子との思い出をずっと続けられる方が、心地よいというのか……。必ず、キミを連れ帰る……!」


 次に、大切な妻を追いかけてネフライト自身が過去に飛び、やはりその後、意識が戻らなくなる。


 眠り続ける発起人夫婦に、雇用されている研究者たちは不安を覚える。モニター画面には眠り続けるジェダイト夫妻の姿が映し出されており、表示される数値から彼らが存命であると分かるだけだった。そして、何故成功するはずの実験が失敗するのかを話し合った。



『どうして、ジェダイト夫妻は意識が戻らないのでしょうか? やはり、逆行転生ではなく無理を承知で肉体ごと飛ぶしかないのか』

『これは私の個人的な意見ですが、ルクリアさんもネフライトさんも二十年前の魔法都市国家メテオライトをよく知っている人達です。隕石衝突の前後に駆け落ち同然で逃げたおかげで、この夫婦二人だけが助かってしまった。もしかすると、再会した家族や知り合いに感情移入してしまい、輪の中から抜け出せなくなったのではないかと』


 さらに言えば、永遠の氷河期の影響はメテオライト周辺国にも広く及んだ。食料調達や電気やガスなどを工面するのも一苦労、財閥のお坊ちゃんだったはずのネフライトもそんな時代の奔流に振り回された一人である。

 兄が隕石衝突に巻き込まれ財閥の資産を自由に使えなくなり、海外暮らしだが健在だった両親とも氷河期到来の影響で連絡がとれなくなる。ネフライトは故郷に戻ったにも関わらず、頼る人を失った。財閥周辺の人々もそれを望んでいたように見えて、かつて自分が誘拐されて殺されそうになった原因を垣間見た気がした。


 本来であれば高校に通うはずの年齢から、闇市のような場所で働き、一から仕事を覚えた。三歳年上の妻ルクリアも、お嬢様育ちで世間知らずだったが、食べるのもやっとの暮らしをすることになった。

 お互いにとって良かったことは、環境の変化の影響ですぐに夫婦同然の暮らしを始めた事だという。急変した社会情勢に合わせて倭国の元服年齢を採用し、十五歳から成人扱いされるようになったのもネフライトを早く大人の男にした。

 子供にも早いうちに恵まれ、それが愛娘のレンカである。やがて、少しずつ財閥の資産を自分の元に取り戻して、没落した家を復興させた。



『それはつまり、二十年前はその時代に存在していない人物なら、輪の中に取り込まれないという見解になりませんか』

『えぇ。ですが、そうなると最後の被験者は……娘さんのレンカさんになってしまいますが』


 研究者達の中では、二十年前に魔法都市国家メテオライトに存在していなかった人物ならば、ループの輪に引き摺り込まれないという結論が出た。けれど、それは仮のタイムワープ方法である意識のみを過去に戻す逆行転生方法を捨てて、肉体ごとワープする方法となる。

 どちらにせよ、このプロジェクトの発起人夫婦が過去から戻って来れなくなれば、いずれ夫妻の娘であるレンカは存在ごと消えてしまうだろう。


「私、行きます! お母さんの故郷を救いに。戻って来れなくなった両親を連れ戻しに……。それから、写真でしか見たことのないカルミア叔母さまとお友達になって、お祖父様の音楽の演奏を聴いて、若い頃のお父さんとお母さんの姿も見たいし……」

「片道切符、いや下手をすればレンカさんの命も」

「お父さんとお母さんが結ばれなければ、私自身がこの世に生を受けられないのよ。当たって砕ける価値はあると思うの。それに……お母さんの初恋だっていうギベオン王太子様がどんな方なのか、本物にお会いしてみたいわ。王立メテオライト学園にも通ってみたいし、大丈夫……私、必ず解決策を見つけてみせるから!」


 研究者達はもう、他に方法は思いつかなかった。むしろ、最後の手段にして最善の策なのではないかと考えるようになった。


 * * *



 レンカがタイムワープするよりも先に、過去への通信手段で彼女の引き取り先を綿密に決めて、プロジェクト成功の暁には協力してくれた人々に二十年後の保証を約束した。


 未来人であるレンカが過去へ向かう事実を知る者は王立メテオライト学園の一部の人達と、レンカの叔父にあたるオークションハウスオーナーのアレキサンドライト、そしてギベオン王太子にも報せが入る。



「未来からの転校生は、ルクリアとネフライト君の娘さんなのか。もう完全に、僕とルクリアが結ばれる未来は用意されていないのだろうか? それでも僕は……ルクリアのことが……」



 プロジェクトの内容を知ったギベオン王太子は、自分だけは一つの未来に屈したくないと心に誓うのであった。


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* 断章『地球の葉桜』2024年04月27日。 * 一旦完結した作品ですが、続きの第二部を連載再開して開始しました。第一部最終話のタイムリープ後の古代地下都市編になります。よろしくお願いします! 小説家になろう 勝手にランキング  i850177
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