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追放される氷の令嬢に転生しましたが、王太子様からの溺愛が止まりません〜ざまぁされるのって聖女の異母妹なんですか?〜  作者: 星井ゆの花(星里有乃)
正編 第二章

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第15話 お父様の再婚相手


 ルクリアが無事に高校二年生の最初の学校を終えて帰宅すると、珍しく父親が早く仕事から帰って来ていた。それどころか珍しく亜麻色の髪を整えて、洒落た黒い革のジャケットとシルバーとは思えないほどの高額で知られるブランド物のアクセサリーで色気付いている。


(お父様、何だか今日はいつもの安全そうな中年風じゃないわ。数ヶ月前までウクレレ演奏を生き甲斐にしているフレンドリーなおじさんだったのに、今じゃ生涯現役のロックアーティストのよう。一体、何が? ウクレレからジャンルを変更してバンドを結成するのかしら)


 まるでその姿は、ロックミュージシャンかイケおじを目指すファッション雑誌の表紙のモデルのようだ。いつの間にか、ダイエットに成功していたのか腹回りもスッキリとスリムになっていた。近づくと高そうなメンズ香水の香りまで漂わせていて、いよいよ違和感がピークに達する。


「やぁルクリア、お帰り。せっかく同じ学校になったのにカルミアは一緒じゃなかったのかね」

「ただでさえ異母姉妹で目立つのに、一緒に登下校までしたらそれこそ学校で話題になっちゃうわ。それに、あの子生徒会からスカウトを受けたらしくて、まだ学校のはずよ」

「生徒会? そうか、エスカレーター式の学校だからカルミアみたいに外部からの入学生は貴重なんだったな。では、先にルクリアに報告しておくか……まぁ座ってくれ」


 咳払いをして居間のソファにルクリアを促し、何かを改まって報告するつもりらしい。気がつくと、異母妹カルミアからいつも【モブメイド】と渾名されていた住み込みメイドのローザが、現れた。これまた珍しくバッチリメイクで栗色の髪を巻いて下ろしており、黒いスリット入りのスカート姿で色気を隠さずにそっとレグラス伯爵の横に座った。

 まるで愛人とそれを囲う悪い大人の男が、将来を案じてそろそろ落ち着こうとしているような、そんなオーラが漂っている。


(一体、何なのこの二人。家では温厚そうに演じていたけど実は裏で結構遊んでた? それとも普段の数倍、気合いを入れてるだけなの。はっ……まさか)


 嫌な予感がして、ルクリアの背筋が真冬でもないのに凍りつく。別にルクリア自身は父親が誰とどうなろうがどうでもいいが、父親に甘えている異母妹のカルミアからすれば一大事だ。まさか実はモブメイドと……なんて判明したら情緒がどうにかなるのでは……と不安になる。



「それで、あまり見かけない組み合わせだけど、二人揃って何か……?」

「うむ。実はだな、ルクリア。お父さんも将来が不安になってね。カルミアを自分の娘として正式に戸籍に入れるにあたって、再婚しようと思うんだよ。ルクリアは前妻の娘で嫡出子として登録されているからいいが、カルミアは認知の子で戸籍上は向こうのお爺さんの養子だった。このタイミングでローザを妻を迎えてきちんとしようと思ってな」


 そういえば、カルミアは妾の子なのできちんとレグラスの戸籍に入っていないのだと思い出した。体裁上はカルミア・レグラスで通していたが、本籍の方は別の苗字のはずだ。けれど、王立メテオライト魔法学園に入学する際に、戸籍調整は済ませたのだと思っていたが、どうやらまだだったらしい。


「えぇと……ローザさんと再婚するのは反対しないけど、私はこれまで通りの亡くなった前妻の娘という戸籍のままなのよね。けどカルミアは、お父様の戸籍に移動するタイミングで、ローザさんの養子になるってこと?」

「ああ。弁護士と相談して、手順をきちんとしようと思ってな。まずはワシとローザが再婚して正式な夫婦となり、両親が揃っている状態でカルミアを養子として迎え入れる。まぁワシとカルミアは元々親子だが、ローザは養母になるわけだな」

「……あっ。もしかして、それであの子の入学説明会にはローザさんが保護者役として一緒に出席していたのね。意外と学校関係者の方が先に勘づいていたのかも知れないわ」


 考えれば考えるほど、ここ最近の行動は辻褄が合う部分が多い。お付きのメイドは何人かいるのに、メイド長を差し置いてモブメイドと呼ばれるポジションのローザが、王立メテオライト魔法学園の入学説明会に出席したのだ。よく考えてみれば、その頃には再婚が決まっていたであろうことにルクリアはようやく気づく。


「えぇ。ですが、カルミアお嬢様は私が養母になるとは夢にも思っていない様子でした。まぁ私と旦那様がお付き合いする流れになったのは、今年に入ってからなので気づかないのも無理はないのですが」


 てっきりルクリアだけが省かれていて、養子縁組予定の三人は新しい家族として連携しているのかと思いきや、実はカルミアにも何も聴かせていないという。そもそも交際そのものが今年からなら、カルミアの受験シーズンから入学の今日まで話すタイミングすらなかったのだろう。


「そっそうだったの? じゃあ随分とスピード結婚なのね、でもメイドとしては住み込み歴が長いから、お互いのことはよく分かっているか」

「生活スタイルは同居が続くだけですのでそこまで影響は無いのですが、まだ我々以外ではメイド長しか知らない話ですので。なるべくカルミアお嬢様を刺激されないで頂けると有難いのです。詳しくは旦那様から直接説明すると……」


 いくらカルミアだって、この二人の普段と違う様子をみれば説明がなくとも何となく察しが付きそうではあるが。ルクリアとは違いカルミアに関しては戸籍上もローザが義理の母親ともなるわけで、父親の方からきちんと説明を入れた方がいいだろう。


「分かったわ。それとお父様、ローザさん、結婚おめでとう。カルミアも納得してくれるといいわね。じゃあ自分の部屋で休んでくる」

「うむ。夕食の時間になったら、降りておいで」


 一応、取り繕った笑顔で結婚を祝い自分の部屋へと戻るが、カルミアがこの話を聴かされたのちの展開が不安で気が気では無かった。


(あれ……攻略本に、この展開……載っていたかしら?)


 そして今回の父親の再婚が、通常ルートではあり得ない展開であることにルクリアはふと気がつくのであった。


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* 断章『地球の葉桜』2024年04月27日。 * 一旦完結した作品ですが、続きの第二部を連載再開して開始しました。第一部最終話のタイムリープ後の古代地下都市編になります。よろしくお願いします! 小説家になろう 勝手にランキング  i850177
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