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妖姫  作者: 白龍
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かまいたち

達郎の部屋に、つむじ風が入ってきた。

窓を開けていたら、豪快なつむじ風が妖姫と達郎を叩きつけたのだ。


風は二人の髪を揺らし、そのまま光のような速さで過ぎ去っていった…。



「いやあ凄い風じゃったのお」

「そうだな」




「ええええ!!?」

ほんの僅かな会話が終わった時、二人はお互いの異変に気がつく。

二人とも手に切り傷がついているのだ。

それもかなり大きい。こんな傷はさっきまでついていなかった。

達郎は仕事場で道具を使う際、頻繁に怪我をするので慣れているが、妖姫は痛くて泣き出した。

「わらわを看病しろ達郎!!」



妖姫の手に湿布を貼りながら達郎は思った。

(悪霊なのに怪我すんのかよ!)

だが、手の甲のその傷は黒く、血はでない。

もう死んでいるから、血も止まっているのだ。

湿布を貼ってもらい、一瞬で体制を立て直す妖姫。

窓の外をしばらく見つめた後、この現象が誰の仕業か直ぐ様見抜く。


「これはかまいたちの仕業じゃ!」

「あー、聞いた事あるな」


かまいたちはつむじ風と共に肉眼で捉えられない程の速さで飛んできては人の手足を切り刻む迷惑な妖怪。

先程の風もかまいたちがのってきたものだったのだ。

プライドの高い妖姫はこのままでは済まさない気だった。必ずかまいたちに復讐してやると怒りを満面に浮かべたのだ。

「またあいつが来たら、逆に引っ捕らえて八つ裂きに…」


その時、またつむじ風が差し込んできた。

達郎は今度は窓から離れ、かまいたちの襲撃を回避する事に成功した。


「…痛いのじゃー!!」

今度は足を切られた妖姫。

着物をめくって足の傷を見せ、早く治せと合図を送る。

達郎は、また一枚湿布を使う事になった…。



「かまいたちめ。もう許さん!!必ずやつを捕まえ…」

かまいたちは馬鹿にするように何度も妖姫に傷をつけていった。

その度に妖姫は怒りに怒り、窓を叩いたり壁を蹴ったりと大暴れ。

「窓から離れれば良いだけだろ!!」

「黙るのじゃ!!わらわは!!復讐するのじゃああ!!」



それから窓の前でかまいたちを受け止めようと待ち構え続けた妖姫だが、結局かまいたちが来る事はもうなかった。

ある程度切り刻んで満足したのか、妖姫のあまりの学習能力のなさに呆れ果てたのか、どこかに行ってしまったらしい。


「やってやるのじゃ…必ず!!」


いつまで待っても、かまいたちは戻ってこなかった。

妖姫の怒りは徐々に小さくなり、傷の痛みも忘れて眠ってしまったのだった。


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