表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖姫  作者: 白龍
4/25

妖姫の好物

妖姫との生活は、やはり特殊なものだった。

風呂に入らなくても全く汚れない、トイレに行かなくてもいい…。

水道代は一切心配要らないようだったが、妖姫はある物にハマってしまっていた。

「なんなのじゃこれは!!」

目を輝かせながら彼女が口にしていたもの…それはプリンだった。

達郎が偶然にも親戚からもらって、いつ食べるか迷っていたもの。

目の前で美味しそうに頬張る妖姫に、達郎は初めて微笑んだ。

「美味しいのじゃ!おかわり!!」

「あ?もう無いよ。それだけだ」

妖姫は、右手に持った銀のスプーンを落とし、笑顔のまま肩の力を抜く。

スプーンがテーブルに落ち、小さな金属の衝突音が部屋にこだます。



「…買ってくるのじゃ。今すぐに」

「は?やだよ…」

「今すぐじゃああああ!!!」

妖姫は立ち上がり、全身から黒いオーラを放って今まで見せた事のない威厳で達郎を威嚇する。

これにはさすがの達郎も尻餅をつき、従うしかなかった。

恐怖しつつも、このあまりの傲慢さとワガママには心底呆れた。

こんなのと永遠に付き合わなくてはならないのか…!?

事の重大さに、ようやく気づく…。




深いため息をつきながら達郎が帰ってくる頃には、妖姫の怒りは静まり、テーブルに両手をついて大人しくしていた。

無邪気に笑顔を浮かべ、長い灰色の髪を揺らしながら待つ姿はまさに子供。

だが、先程のオーラのおかげでこれでも危険なやつだという認識がようやく持てた。

黄色いプリンが納められた冷やしたてのカップをテーブルに置く達郎。

妖姫は満面の笑みを浮かべ、ヨダレを垂らして目を星のように輝かせ、蓋を剥がす。

カップが倒れてしまいそうなほどの勢いだった。

黄色いプリンにナイフのごとくスプーンを突き刺し、そのまま口に入れ、口に染み渡る甘さを全身で堪能する。

「んんんぅぅ!んんんーんんーんんんんー!!!」

あまりにも凄い声をあげるので、達郎は苦しんでるのかと疑っていた。


ぐっ、と飲み込み、後味を堪能する妖姫の顔は天国にでも昇天したかのような笑顔。

体の周りにお花のオーラでも纏いそうな凄い勢いだ。

やれやれと肩の力を抜く達郎。

これからはこのプリンで機嫌をとれそうだ。


「達郎、もう一個買ってこい」

「もう嫌だー!!!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ