八話
翌日の土曜日、俺は爺の指示で街のパトロールもとい能力を悪用している奴を探していた
爺は犯行現場に犯人がいると考えているようだけど俺にはどうもそうとは思えない
俺も含めてそうだが能力は必要時以外使う事は禁止されている。これはそれぞれ家の長が厳しく言いつけているはずだ
昔は政府によって育てられ従順な忍や暗殺者に仕立て上げたようだが、平和になり国のトップが何代も変わると俺達の事を知っている血族じゃない人間はほぼ居なくなり抑制は無くなった
無くなったとは言っても自由に使っていいはずが無く家の長が躾、それでも使った場合は他の血族から秘密裏に消されたり死ぬほどの思いを味わう事になる
だからこの犯人は単独犯、しかも戦争を知らない俺みたいな若い世代のはずだ
一応爺は複数犯の事も考えていたが、もしそうなら若者の能力者集団。それも爺の同世代の連中を倒して反感を起こす強力な能力をほとんどが持っていることになる
だけどそれだとしたらおかしいことがある。爺はもうすでに日本は全て、海外はあと少しといった所まで連絡を取れていてそのような集団が出たという報告は受けていないのだ
だからその線は無いと考えていい。だから俺の今の仕事はパトロールついでに能力者を見つけたら良いくらいの軽い物だ
爺に緊急連絡が行く専用のスマホも貰ったし安全極まりない。これのロックを解除するだけで爺の当時の弟子達が一分以内に駆けつけてくる。保険があるってのは気楽なもんだ
ビルの屋上から屋上へとピョンピョン飛んで耳を澄ませる
今日はマスク一枚じゃなく俺の能力が最大限使えるように作られた専用のスーツを着ている
これを着てるとかっこいいし気分も上がって何でもできそうになる
実際このスーツの恩恵は凄い。俺の能力を高めるだけでなく衝撃耐性やら炎耐性やら色々詰め込まれて銃弾なんか余裕で止められてしまう世には出せない代物だ
後は視覚のズーム機能とか遠くの音まで聞いたりとか、俺は理屈じゃなく感覚で使う能力だから詳しいことは知らないけど脳を強化する能力何かだと天才を超えるこういったものを作れるらしい
勿論これは能力によって作ったもの。言わば普通の人間のものではない。いつかは技術力が追いつくかもしれないがそれまでは知られる事すらしてはいけない物だ
そんなオーバーテクノロジー君が何らや悲鳴を感知したみたいだ
友達ができて心に余裕が出来たお陰でこの事件の多さの異常さに気が付く
一昨日も放課後に、昨日は無かったがそれは夜に行われているのは含まれていない。今日は真っ昼間から堂々と犯行だ
これは能力者の説が濃厚になってきやがったな
声の方向へピョンピョンとまた飛んでいった