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俺は、英雄になりたい  作者: りんぬごろごろ
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六話




 陸上部、部活と言えば嫌な思い出しかない。中学は部活に強制入部だったから仕方なく一番緩そうな美術部に入ったが今思えばそこで友達が作れたのかもしれないな


 「現在部員は十九人、大会にも何度か出てるけど目立った成果は残してないね。まあ僕もそうだけど、大会に出て優勝したいって志の人が少ないからなんだけどね」


 そういって里は準備体操に向かってしまった



 

 十分ほど準備体操をしたあと何グループかに別れた。残念ながら里は一人だけど

 顧問に数人、競い合うのか生徒同士でもいくつかのグループ、後は里と同じような一人が何人か


 短距離、長距離と俺の知らないものまで色々あるんだろうけど総じて言えるのは、遅すぎる

 俺には能力があるからだろうが全員の速度が酷く遅く感じた

 

 俺がこの部活に入ったらすぐに一番、部活だとスタメンとか言うのか?本気で部活をしてたのとか小学生の時のサッカーくらいだからわかんないけどすぐになれそうだな


 てか第一印象最悪でも部活がめっちゃ出来たら注目されて友達も出来るんじゃね?あれ、俺って視野が狭まってただけでもしかして友達を作る機会はいくらでもあったのか?

 ま、まぁそれはいい。それを考えすぎると死にたくなる。それに今から実行すれば良いだけだし


 そうと決まればすぐに入部、の前に爺に聞いたほうがいいかな?この前能力を使う機会があるみたいな事言ってたしもしかしたら学校でも少しは使って良いって言うかもしれない


 やばい興奮してきた!早く帰りてぇ!



 「おい、おい!おいそこの一年!それ以上そいつ見るのはやめとけ!」


 ん?一年って、今は俺しか居ないよな。何を見るなって?


 あ、なるほど。生徒グループの一つの女が集まっている所を偶然見てたのか。こっちを睨んでる、こわっ


 慌てて視線を外すと俺に声をかけてきた男が目に入った


 中肉中背で下半身が大分引き締まった男だ。こっちに近付いてきて肩を回して来る


 「おい一年、あいつらの身体がだぁ〜いぶ魅力的なのはわかるがそんなにじっとり見てるとあいつらにボコられるぜ。これは脅しじゃなくて本当にあったことだからな?」


 「あぁいや、見てたわけじゃなくて考え事をしてたらたまたま」


 「言い訳するなって、大丈夫だ俺も偶に目が離せなくなるからよ」


 確かに魅力的だけど今は本当に違うんだけど。いや待て俺、これはここで友達を作るチャンスなのでは?自分の殻に籠もるな俺!ここで勇気を出さなきゃ一生友達増えねぇぞ!


 「あー、バレちゃいましたか?あはははは」


 「ふへへへ、やっぱりそうだよな?そこでお前に良い提案がある」


 お?いい感じに会話が続いてるぞ、そうだ俺その調子だ頑張れ俺!


 「えっと、提案って何ですか?」


 「お前、陸上部入れよ。ここに入ってたら合法的に見放題だぜ?しかも走ってる所とか最高だぞ?」


 「今部活見学中何ですけど一応どうやったら部活に入れるか教えてもらっても良いですかね?」


 「おっ、積極的でいいぞぉ!まず職員室へ部活入部希望書ってのを出す。昨日か今日貰ったろ?そこに陸上部入部希望って書いて担任に出せばOK、それで入部完了よ。

 あ、でも先輩の代だと入部試験とかあったらしいけど今はもうなくなっちまってな」


 「もしかして何ですけど、俺を誘った本当の理由って大会に真剣な人が少ないからですか?」


 「あれわかっちゃった?誰から聞いたのか知らねぇけどその通りだ。俺は二年だから四年前の世代の全盛期を知ってるからこんなにマジになってるんだけどよ、最近は入部してもすぐ辞めたり気軽な運動気分で続けたりして大会で全然活躍出来なくてな。

 だから、本当の事言うとお前に才能が有ろうが無かろうが入れてそれを見た一年がいっぱいはいってきてくれたらな、と。

 悪い、俺隠し事苦手でよ。入る気無くしちまったか?」


 里も言ってたが大会で優勝したいという人は少なくなりやる気のない人も増えている。そこで俺をだしにしようと思ったわけか

 俺はもう三年間部活を真面目にやったこと無いから何故こんなにも本気になれるかわからないけど、その熱意は伝わった


 だけど言っておかなければいけない事がある


 「先輩、悪いんですけど俺同級生の友達一人も居ないっす。どころか第一印象最悪なんで逆にマイナスイメージになるかもです」


 

 




 「えぇっ!?お前たったの二日で何したの!?」


 一泊おいて凄い声で驚く


 俺は、多分この人なら友達になれる気がする、そう直感で何となく思ってどうやって自己紹介したのかを話した


 そして予想通りこの先輩は別に嫌煙する事もなく、それどころか笑い飛ばしてくれた。そんなので友達が出来ないなんて可笑しい、と


 瞬間、俺はメス堕ちした。嘘だ。だけど普通に嬉しかった

 まだ一週間すら経っていないがやっぱり自分を受け入れてくれない環境で過ごすのは俺にとって大分ストレスだったみたいだ

 中学の時はそもそも自分を曝け出してなかったから耐えれていたが、今のままだったら不登校になってたかもしれない


 それもこれと全部里のお陰だ。あ、でも里を脅していた奴等が居なければ友達になれてなかったからあの三人組にも感謝だな

 でも助けなきゃいけない原因は爺の呪い、つまり爺に感謝しなければいけない?それは断固として嫌だな。でも今なら少しはできるかな



 「で、先輩さっきの話なんですけど、俺陸上部入っても良いですよ。勿論大会に本気で挑む形で」


 「え、本当か!?いやーありがとう。他の人はどうか知らんけど俺はお前大歓迎だよ。話聞いた感じ他の奴等もお前の事勘違いしてるだけだろうし、そんなにマイナスにはならねぇよ」


 うん、このほっこり感たまんねぇなぁ。これをもっと俺は味わいたい。だから勇気を出して言え俺!


 「でもその、条件というかお願いというか、ありましてね」


 「おっ?いいぜ何でも言えよ。あいつらの下着とか?それはちょっと厳しいけどタオルとかドリンクとかなら何とか」


 「いえ、その。俺と、友達になってください!それと、出来れば俺に友達が増えるように手伝ってもらえると助かるというか何というか」


 

 どうやらこの先輩は含みグセがあるらしくまた一泊置いて、爆笑した


 「ぶっははははははっ!お前本当に友達に飢えてるんだな!ふへへへへっ!よし、良いぜ!どっちもな!

 まずは俺と友達だな。俺は鈴木雄也(すずきゆうや)!よろしくな、えっと」


 「漆川英人です。よろしくお願いします雄也先輩!」


 「おいおいお前が求めたのは先輩後輩関係じゃなくて友達だろ?呼び捨てにしろよ、英人!」


 あぁ、こんな幸福感を日に二度も味わってもいいのだろうか。そしてこの感覚はこれから何度も訪れるかもしれない


 今なら爺にすら優しく出来そうだ



 「うん!よろしく雄也!」




 俺は満面の笑みで握手した




 

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