三話
やってしまった。今からでも取りに戻りたいが家は門限がある。現在時刻も門限も五時、あの女が制服に気が付いてないことを願うしかない
「帰ったか英人。今日も人助けをしたようじゃな」
自分の部屋に入ろうとした所を爺に話しかけられる。御年百二十になるまだまだ動ける化物みたいな年寄り。この爺こそが俺に忌々しい呪いを掛けた張本人だ
この爺どういう能力か知らないがこの爺は自分が呪いがどう発動したかわかるらしい
「おい爺、頼むからおっ死ぬ前にこの呪いは解いて逝けよ?この呪いのせいで今日バレたかもしれねぇし。
いつと口うるさく自分で言ってるだろ?俺達の力はもう平和な世界にはいらないから世間にはバレないようにしろって」
「あぁ、それなんじゃがな英人。最近治安が悪いじゃろ、それが能力による物なのでは無いかという報告が入ってきてな。もしそれが本当なら儂も最期に仕事をしなければならん」
そーいや最近は殺害だの強盗だの性的暴行だのが増えてきてたが能力のせいなら辻褄が合わないこともない
「それでじゃな、お前の父は戦闘系ではないし儂の娘を戦わせるわけにもいかんし血筋も絶えてきておる。じゃから英人、手伝ってくれんか?」
「は?ちょっと待てよ爺、俺は今人生で最も大事と言っても過言ではない高校生だ。中学の悲劇は知ってるだろ?だから俺はもうあんなああああぁ!?」
手伝わないと言おうとしたら何故呪いが!?
「ほら英人、これも人助け。儂に頼まれた時点でお主は断れんのじゃよ。すまんのぉ」
にっこり笑顔でそういう爺。殺したい、この笑顔
「ち、ちょっと待ってくれ爺。爺の時代は無かったから知らねーだろうが高校って義務教育じゃないんだぞ?成績とか単位とか取れないと学年上がれないし大学の推薦とかも」
「ほら英人、そこはうちには金があるし最悪ニートでもいいんじゃないか?」
「い、嫌だ!それだと俺は一生コミュ障みたいじゃないか!留年しても良いからそれは絶対嫌だ!」
「よし言質は取ったぞ。それじゃあよろしく頼むの英人。安心しろ、命の危険があるようなことは流石の儂もさせんよ」
「こんの、クソ爺め!」
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次の日、早朝に家を出て昨日の通りを見に行ったが制服は無くなっていた
名前が書いてあるわけじゃないからバレる事は無いと思うがもしもの場合は爺の能力か誰かの力を借りないとな
それにあの女に拾われたわけじゃなくて誰が捨てただけかも知れないしな。下手に慌てると逆に怪しいからこの件はもう気にしないことにしよ
電車に揺られている間に昨日の爺の話を思い出してスマホでニュースを調べる
確かに事件が数ヶ月前より多い。俺が解決した事件もいくつか見られる
そして小さくだが、マスクを着けた男が助けた、という記事を見つけた
こういうのを見ると嬉しくなるがそれも爺が俺に人助けを積極的にさせようとする策のような気がして来て素直に喜べない
色々調べていると降りる駅まで着いたようだ。ここから学校までは十分ほど、大丈夫だ。まだ取り返しはつく、はずだ
俺の高校生活は、これからだ!