No.199 改めて気がついたこいつの可愛さ
「ねぇねぇ柚木くん!今度はこのお店見てみようよ!」
訪れたのは、文具や雑貨が立ち並ぶ複合百貨店ーー
主に趣味性の高い商品が並び、日用品からアニメグッズまで幅広く取り扱っている。
「すごい……天井近くから足元まで、ぎっしりと商品が並んでる」
「でしょ?凄いでしょ?ただ狭いからはぐれないようにね?」
「あ、あぁわかったよ愛菜」
俺はそう言って、見失わないように後を追いかけた。
ずんずんと奥に進む愛菜だったが、言い出した本人にも関わらず、目の前で本棚に足を引っ掛けて躓いた。
「うわっ!」
「なっ!?危ねぇっ!」
俺は咄嗟に愛菜の手を握り、引き寄せるように体制を整えた。
「きゃっ!」
けれどしっかりと握った、温かな幼馴染の手ーー
ほのかに漂う甘いフローラルな香りーー
目前に近づいた、綺麗で美しい美少女の顔ーー
そしてそれらを映した映像が、俺の真上で流れていた。
「なっ……!」
手書きで書かれた『監視中♡』の文字。
おそらく防犯のための監視カメラだが、ふざけたハートマークから、カップルや友達同士で来た客を楽しませるためのものだと予想出来る。
まるで恋人同士のように映っているそれに、俺と愛菜は顔を赤くして戸惑った。
「わわっ!ちょっと……!?」
思わず愛菜は手を離し、赤くした頬を隠すようにパーカーのフードを深く被った。
「ご、ごめんっ!」
「ううんっ!私が悪いから……ありがとうーー」
愛菜が声を震わせてそう言ったが、続いて聞こえないような小声でボソッと呟いていた。
「ーーな、なにドキドキしてるのよ私は……!私はヒーロー様一筋なのに……!」