No.195 俺たちだけの空間
ルビーはフフンと胸を貼るように言い返す。
「私のアプリをナメるなよ」
恐る恐る通路を進むと、そこには大きな部屋にたどり着いた。
複数のPC設備や、壁一面に張り巡らされた学園内を移すモニター。
部屋の中心に、会議室を思わせる巨大な机。
それだけでなく、部屋の隅にキッチンシンクや、黒光りのふかふかソファー、そしてシャワールームなんてものもあった。
「……何処だここは」
完全に学校とはかけ離れた、何処かのオフィスか、それとも高級マンションの一室を思わせる秘密基地だった。
こんなものまで創り出せるアプリケーションに、改めて感服する思いだった。
キョロキョロと見渡していた奈留が、思い出したように尋ねる。
「美術室の裏側って、確か視聴覚室があったはずですが……?」
「いや、ここは圧縮空間と言うやつだ。壁の中に部屋を創り出しているから、例え視聴覚室が爆破されようが、壁が無事ならこの部屋は無傷だ」
「視聴覚室が爆破って、どんなおぞましい例えだよ」
「このアジトはお前たちオーディナルと、私だけ入れるセキュリティにしてある」
「ん?Jewelryのメンバーも入れないのか?えらく徹底してんだな?」
「念には念をってやつだ。まぁJewelry内部も色々あるって事だ。機会があれば話すよ」
「アメシストさんにも話さないのか?」
「あいつに限らず、Jewelryには誰にも言うな。いいか?絶対にだ」
下を俯きながら、ルビーは何かを思い詰めたようにそう言った。
「ふーん……」
ルビーがJewelryについてあまり話さないが、それは時が来れば自分から話してくるだろう。
なにより、ルビーはその件に関して、あまり自分から話したがらないのを気づいていた。
ーーそう言えば、あの男……エメラルドが初めて俺の前に現れた時も、ルビーは酷く睨んでいたな……