No.194 秘密基地の入り口
「何かを開ける鍵になるんですか?」
マンションや車でさえ、スマホを鍵代わりにして開ける機種も増えている。
「その通りだターリア。流石は私の見込んだ眼鏡だ」
「いや、眼鏡は関係ないですよ」
「ふふ、可愛い眼鏡だ」
「もはやただの眼鏡の感想ですよね?可愛い眼鏡って、他に褒めるところなかった時に言うやつですよねそれ?」
ルビーは自分のスマートフォンを操作し、美術室の壁に手をかける。
「ターリアの言った通り、お前たちのアプリが鍵になる」
そう言って改めて周辺に人気が無いことを確認して、壁に飾ってあった額縁の絵をガバッと外す。
普段滅多に訪れない美術室だったが、その見覚えのない美術品に、俺は首を傾げて呟いた。
「……あれ?こんな絵なんて飾ってあったか?」
「知らなくて当然だ。これは昨晩、私が仕掛けたフェイクだ。本題はーー」
絵が掛かっていた壁に、アプリを起動させながらスマートフォンを翳した。
するとピピッと電子音が鳴り、次の瞬間信じられない光景が現れる。
「ーーこいつだ」
突如壁が音もなく静かに動く。
何も無かった所に扉が出現し、謎の通路が姿を見せた。
「おわっ!?な、なんだ!?」
まるでSF映画のような光景に、当然俺たちは固まった。
そんな驚く俺たちを見て、ルビーはニヤリと笑う。
「紹介しよう。これは先輩である私からの、ささやかな贈り物だ後輩たち。お前たちの秘密基地ーー”アジト”ってやつだ」
ついここが学校内ということを忘れてしまいそうな、非常識な光景と言えた。
「私たちの秘密基地……」
「……これいつどうやって工事したんだ?」
ルビーはフフンと胸を張るように言い返す。