No.193 またもや痴漢扱い
「変態!痴漢!もう最悪最低!!」
「待て!これは事故だろ!?それに痴漢はおかしくないか!?」
ーーそれにどこかで聞いたワードだった。
「信じらんないっ!こんなの誰にも見せた事無いのに!もうお嫁に行けないっ!」
明日香は机の上の物を抱き抱え、急いで泣きそうな顔で部屋を飛び出して行った。
泣き声と走り去る足音が、廊下の向こうへ消えていく。
「あぁ……Alice先生とせっかく親しくなれたチャンスが……」
奈留が隣で寂しそうな声をあげる。
しかしこれに関して、俺が無実なのは分かって欲しい。
俺は深いため息を吐きこぼし、待たせていたルビー電話をかけた。
「……悪いルビー。待たせたーー」
そこまで言ったところで、その瞬間勢いよくーー教卓の机が、上に跳ね上がった。
ドカーン!!
今の今まで教卓の裏に隠れていた赤髪の女ーールビーが、こちらを険しい顔で睨んでいた。
「遅いぞお前らー!!」
※
ルビーはスマートフォンを操作し、メールを作成して送信する。
「……今お前たちと、メイジーの端末にインストールしてあるアプリーー”エージェント”Ver.オーディナルに、専用の追加パッチを送った」
「追加パッチ?」
通常コンピュータの一部分を更新して、機能変更などを行うアップデート。
「これがこれから、お前たち専用の電子パスになる」
「パス?何に使うんだよ?」
スマートフォンは機種によって多彩な機能を備えている。
主な例としては、これ一つで買い物ができ、電車や飛行機も簡単に乗れてしまう。
それだけでなく、セキュリティの管理もスマホ一つでこなせるようになった。
奈留がキョトンとした顔で手を上げた。
「何かを開ける鍵になるんですか?」