No.190 幼児向けアニメの主人公
「ーー明日香……だったら俺たちが、お前の初めての友達になってやるよ」
俺のそのセリフに、明日香は目を見開くように驚いた。
「なっ!?なななな何いきなり恥ずかしいこと言ってるのよ!?ばっかじゃないの!?」
それもそのはず、いきなり友達になろうと言ってくる人間なんてそうはいない。
幼児向けアニメの主人公くらいだーー
ーーけれどあの時、あいつは俺をそうやって孤独の中から引っ張りあげてくれたんだ。
「確かに馬鹿な事かもしれないけど、そんな馬鹿なこと言われて喜んでるのはどこの誰だろうな?」
俺の目に映る明日香は、顔を真っ赤に染めていたが、目元があまりに嬉しそうだった。
「だ、だだっ!誰が喜んでるのよ!?」
素直になれない明日香に、隣で聞いていた奈留が更に眼を輝かせる。
唇を震わせて、明日香の手をガシッと握る。
「わわわわわっ!私もお友達にさせて下さい!」
ーー低姿勢が過ぎるだろ……!どんな友達だよ……!?
しかし大ファンの奈留からすれば、どんな形であれ、親しくなれる大切なきっかけだ。
そんな俺たちに、明日香はじとーっと半目で見つめながら、赤く染めた頬のまま強気に言い返した。
「ふ、ふんっ!まぁ、私とそんなに仲良くなりたいんなら、特別になってあげてもいいけど?お、お友達に……」
「絵に書いたようなツンデレかよ……」
「うるさいわねっ!私がお友達にしてあげたのよ!感謝しなさい!」
どうやらその瞬間、俺と奈留はこのーー宮野明日香という少女の初めての友達になったらしい。
友達になって早速で悪いが、話はまた今度ゆっくりするとして……
「じゃあ今度ケーキでも一緒に食べに行ってやるからーー」
今はルビーに言われた通り、早くこの場から明日香を退かさないとーーそう続けようとした所で、明日香はモジモジと恥ずかしそうに小声で言った。
「お……お昼を、い、一緒に……」
「あ?お昼?」