No.188 Alice先生は優しく笑う
「柚くん小説とか読まなそうですもんね……ですが安心してください。Alice先生はコミカライズ作品も出版しています。今度一緒に本屋へ行きましょう」
奈留が紹介した”Alice先生”こと、目の前の少女はそれに否定する訳でもなくーーそれどころか少し嬉しそうに言い返した。
「……あんた、私の事知ってるんだ?」
「はい!今もAlice先生の本持っています!サインいただけないですか!?」
そう言ってカバンから、Alice先生作画作品の小説を取り出した。
俺はその小説に書かれたAlice先生の名前と、目の前に広がっているイラストと同作品である事を見比べる。
ーーす、すげぇ……本物なんだ……
Alice先生はふふっと笑みを浮かべた。
「ありがとっ。けど学校では先生って呼ぶの止めてくれない?私、本名は宮野明日香って言うのよ」
そう言って奈留の本を手に取り、表紙に手馴れた手つきでAliceのサインをした。
「わっ、わわわわっ!ありがとうございますっ!で、では宮野さんで!」
「明日香でいいわよ?それに、私一年生だから”さん”も要らない」
「そ、そんなっ……恐れ多いです!」
奈留は顔を真っ赤にして首を左右に振った。
確かに大ファンの相手を前にしたら、誰だって緊張でおかしくなるか。
「俺も今度明日香さんの本読んでみるよ。あっ、俺の名前は音羽柚木だ。こっちは露草奈留な」
「明日香でいいわ。ここは学校で、私たちはそれに通う同じ生徒よ。対等の立場で話したいの。さっきは酷い言い方してごめんなさい。私のファンに悪い人はいないわ」
Alice先生こと宮野明日香は、優しい笑みでそう言った。
「分かったよ……えっと、明日香?」
「えぇ、あんた達上級生よね?先輩って呼ぶわ。お願いだから、私がこの仕事してるって言うことは内緒にしてもらえない?」
「安心してくれ。勿論他言無用にしておくよ。いいよな奈留?」
「は、はい!勿論ですっ!例え爆弾魔に脅されたとしても言いません!」
ーーお前がその例え使うと冗談に聞こえないんだが……
新キャラの登場です!!