No.185 見せたいものがある
呆れ顔で言ったところで、俺のスマホが鳴り響いた。
ルビーからの着信だった。
俺は興奮気味の奈留を一旦落ち着かせ、スマホを耳に当てて応答した。
「はいもしもし?どうした?」
«柚木すまない。今通話大丈夫か?»
ーーそう思うなら真っ先に掛けてくるなよ……と言いたいが
「……どうした?」
«今お前一人か?大事な話がある»
今現在目の前にオムライスの精がいたが、この女は俺をビーストと知っている人物だ。
構うことなくルビーに続けさせた。
「あぁ、まぁ1人みたいなもんだ。どうかしたのか?」
«放課後。美術室に来てくれ。見せたいものがある»
「見せたいもの?いいけど放課後はあの教室、美術部が使ってるはずだけど?」
俺が電話の向こうのルビーにそう言うと、向かいにいた奈留が、思い出したように口にした。
「あっ、いえ、今日は確か美術部がお休みの日だったような気がします。毎週月曜日と土曜日が休みなんです。美術部の友達がそう話してました」
今日は週の始まり月曜日。
俺は頷きながら、電話のルビーに言い返した。
「分かったよ。俺とあとターリアを連れて行く。放課後落ち合おう」
※
放課後。
終業のチャイムが鳴り響くと、俺は急いで教室を飛び出した。
一応奈留に、愛菜にも声を掛けてもらったのだが、今日は部活の練習があるとの事。
緊急事態となれば、その時愛菜を招集する事にして、今は俺たちだけで十分だった。
ーー昼休みのルビーの話し方から、それほど重要任務でもなさそうに思える。
「失礼します……っと」
俺はノックをして、言われた通り美術室のドアを開けた。