No.184 好物を語る女子高生は止まらない
俺が料理名を口にすると、奈留は前のめりで語り出した。
「オムライスです!特にここの学食で食べられるオムライスは、神の一皿と表現したくなるほどの絶品なんですよ!」
今までの物静かな奈留とは一変し、まるで人が変わったように、目をキラキラと輝かせている。
「な、奈留……!?どうした……!?」
「どうしたもこうしたもないですよ!柚くんは食べたことあります!?いや改めて、私はオムライスという料理を開発した人は天才だと思うんです!ケチャップライスを、ふわふわトロトロのふっくら卵で包むんです……!包むんですよ!?」
「分かったよ。何で2回言ったよ?」
「普通包むという発想が思いつきますか!?私も包まれたい!私にとってきっとそれは、シルクの高級ベッドに匹敵します!」
「なんか言ってるよこの女……!オムライスのベッドって何!?身体中卵でベッタベタになるわそんなもん!」
「オムライス好きじゃないんですか……!?甘くて美味しいんですよ!?」
「いやオムライスくらい食べた事あるよそりゃあ。ただ俺は、その料理でお前のキャラが激変した事に驚いてんの」
「よくそんな落ち着いていられますね!?それでも私たちのリーダーですか!?失望しました!」
「リーダー関係ないからね!オムライスがきっかけで崩壊する信頼関係なんて聞いたことないからね!」
「分かりました……!柚くんにオムライスの魅力について教えてあげます!」
「いいって別に!オムライスが美味いってことは俺もよーく知ってるから!」
「これを見てください。私がブログでオムライスの魅力について纏めた記事です。あっ、食べながらの説明失礼します」
そう言って奈留は、自身のスマートフォン画面を俺に見せつけながら、スプーンを口に咥えながら語り出した。
「いやお前の方がよっぽど行儀悪いんだけど!?」
「失礼しました。オムライスはまさに、玉子とご飯で生み出す神々の騒乱なんです」
「大暴れしてんじゃん!なんだよお前!オムライスの妖精かよ!」
「オムライスは素晴らしいオム。毎日必ず食べるオム。とっても美味しいオム」
「オムオムうるさっ!何その可愛い語尾!?なりきらなくていいんだよ!そのキャラ絶対後で後悔するからな!?」
呆れ顔で言ったところで、俺のスマホが鳴り響いた。