No.182 騒々しく始まった少女たちの昼休み
「お、おい愛菜……!起きろ……!1番はお前だぞ……!」
俺はなんとかバレないように愛菜を起こそうとするがーー
「んっ……ひ、ヒーローさま……そこはダメですぅ……そンな所咥えちゃダメですってば……それは生クリームじゃありません。シャンプーですぅ……」
むにゃむにゃと寝言を呟いたまま、愛菜は起きる気配がない。
ーー授業中にどんな夢見てんだ!?っていうか夢の中の俺は、一体どんな間違え方してんだ!?
起きる様子のない愛菜に、俺はとっておきのおまじないを試してみた。
「愛菜!昼ごはんだ!」
そのワードを聞いた瞬間、愛菜は目をガッと見開いて、跳ね起きるようにいきなり立ち上がった。
「ご、ごはんーっ!!」
それはクラス全体の注目の的になり、冷たい視線が一気に愛菜に集まった瞬間だった。
顔全体をパーカーのように真っ赤に染め、両手で恥ずかしい表情を隠しながら、震え声で声を漏らした。
「……き、きりぃつ……」
それから数分後ーー
恥をかかせた愛菜に泣きながら怒られた後、俺は一人学校の食堂で、注文した定食をしくしく食べていた。
「……ったく、なんで俺が怒られなきゃならないんだ……」
定食のトンカツを口に入れながら、食堂の角の席で、左手でスマートフォンを操作していた。
SNSで今日のニュースをチェックしている。
ーー主に『藤田組』についてだ。
わざわざ端っこの席を座っているのは、周りに俺が『オーディナル』だと悟られないため。
念には念をーーキョロキョロと辺りを見渡し、人気が寄り付かないのを確認する。
「……ヤクザについてなんか調べてるのを学校の連中に知られたら、変な噂になりかねない……」
自分一人な事を確認し、再び箸でトンカツを口に運ぶ。
その時だったーー
「お行儀が悪いんですね。ヒーローさん」