No.18 ダークマント
漆黒の炎が、スマホを包むように燃え上がる。
けれど俺は怯えること無く、炎に身を委ねるようにーー腕や肩を伝って、すぐに俺の全身を漆黒の炎が包み込む。
俺の脳裏には、小香の取り戻したい笑顔。
そしてそれを奪っていった奴らへの、怒りの炎。
ーー俺をもっと燃やしてみろよ
ーーその炎!使ってやる!
右手の炎を掴み、振り払う!
すると漆黒の炎がーー漆黒のダークマントへと姿を変えた。
「マント!?これは……!?」
「エージェントの炎は、その人に一番合うアイテムに姿を変える。柚木の専用アイテムはマントか」
「なっ!急に呼び捨て!?」
「いいだろ柚木。お前も、私の事はルビーと呼べ」
「お前だけコードネームじゃねぇか!」
全く公平ではないが、俺は渋々黙ってマントを背中に羽織る。
ルビーはそんな俺に、もう1つアイテムを放り投げた。
「これは私からの餞別だ。一般人終了の餞別だ」
「これは?」
「何の変哲もないただの仮面よ。それで素顔を隠しておけ」
「カッコイイなこれ……」
ルビーがそんな俺を見て、コホンと咳き込んで釘を刺した。
「浮かれてる場合じゃないぞ柚木」
「なっ!浮かれてねぇ!」
思わず赤面した表情をマスクで隠す。
ルビーは順序よく、まずこのアプリケーションについての説明事項。
「柚木が今起動したアプリーー”エージェント”は、組織に登録されるのと同時に、身体能力は飛躍的に向上するし、身体は今より頑丈になるアプリだ」
つまりこれで俺は、組織の一員という事だ。
小香を救う力になる。
何だって俺は利用する。
「これで俺はスーパーマンにでもなったわけ?」