No.179 キッチンスキル
「は!?何勝手にーー」
俺が言い返す途中で、ルビーは構わず強引に遮って言い残した。
「黙れ。私はエッグベネディクト食べてみたいのだ。ふわふわトロトロのやつで頼むぞ。そこの巨乳で性欲発散もいいが、早く作れよ思春期男子」
そう言いながら、俺の返答を聞かずに部屋を出ていった。
※
1時間後。
食器を洗い終えた俺は、ため息を吐きながら振り返る。
「……平日の朝からしっかりとエッグベネディクト作った俺を褒めてくれ。ってか崇め奉れこの野郎……」
それを聞いていた、フォークとナイフを持って満足気に食べ終えたルビーは、笑顔で隣に座る小香に言った。
「小香!お前の兄貴の料理”だけ”は凄いな!」
「そうでしょー?お兄ちゃんは料理”だけ”は一流シェフ並なんだから!」
小香が口の周りに卵をつけながら、自信満々に胸を張ってドヤっていた。
俺は当然、声を大にして言い返す。
「”だけ””だけ”うるせぇお前ら!小香ちゃま?もっとお兄ちゃんの素敵ポイントいっぱいあるだろ……!?」
「うーん……えっと……」
しばらく腕を組んで考え込み、ハッと思い出したように続けて言った。
「ーーあっ!お菓子作りも上手だよね!」
「結局キッチンスキルじゃねぇか!少し悩んだ挙句にようやく絞り出した素敵ポイントがそれかよ!」
兄妹のやり取りを聞いていたルビーが、急に真顔に戻って俺に問う。
「何!?柚木お前、お菓子もいけるのか!?」
小香がルビーに、満面の笑みで答えた。
「そうなんだよ!お兄ちゃんの作れないものはこの世にないよ!」
「何だって!そ、それじゃ……!す、スコーンとやらは作れるか!?」
「もちろん!何でも作れちゃうよ!」