No.170 『眠り姫』
「滑稽過ぎるだろ?そこに転がってる大門という敗北者に、リベンジの機会を与えてやったのも僕だ。君達は、まんまと僕が用意した台本の上で、無様に踊ってくれたってわけ」
「……あんたは一体何のために!?」
「僕?僕はただ、そうだな……一言で言うなら、『愛のため』かな?」
「な、何言ってるんだあんたは……!?」
「これ以上君に話しても仕方ないよ?舞台の幕はもう既に降りたんだ。エキストラはーーさっさと退場してもらわないとね」
そう言って、右手の平をすっと早坂の顔前にかざすーー
次の瞬間、早坂の身体は吹き飛んで崩れ落ちたーー
※
翌日ーー
終業のチャイムが鳴り響き、俺は学校の屋上で夕焼けの下、2人の少女を呼び出していた。
「集まってもらってすまない。内容は、先日メールで知らせた通りだーー」
俺は黒マントと仮面を身にまとい、ナンバービーストとして2人の前に立っている。
赤いフードパーカーの少女と、緑の眼鏡の少女。
赤髪愛菜と露草奈留の二人だ。
「ヒーロー様!どんな事でもいい!私は貴方様に会えて幸せですっ!」
目をハートマークにさせて歓喜する愛菜だったが、俺は咳払いをして話題に戻す。
「愛菜……いや、ナンバー”メイジー”。改めて君に紹介する。オーディナルNo.3の誕生だ。これはーー本人の意志による、彼女が決めた選択肢だ」
俺の台詞の直後、確かな覚悟を持ったNo.3ーー露草奈留が口を開ける。
「私は、もう誰かを傷つけたくない……!誰かが傷つくのは見たくない……!弱い私でも、私なりに愛ちゃんやヒーローさんの力になれるなら……!どうかこの私を、みなさんのお仲間に加えて下さい!」
深々と頭を下げるーー
それは願いと謝罪の篭った、奈留の強い意志だった。
俺と愛菜は、そんな奈留の肩に手を置き、身体を起こしてニコッと笑う。
「奈留……!これからはよろしく頼む!お前のコードナンバーはーー”ターリア”だ!『眠り姫』の名のもとに、チームを癒し、人々を平和と安息に導いてくれ!」