No.169 不気味に笑う緑の男
「ほら起きて起きてー。起きないと殺しちゃうよー?」
ハッと気がついた早坂は、目の前のエメラルドに向けて言い返す。
それは初対面ではない、怒りの想いを叫んだ。
「あ、あんたは……!くそっ!は、話が違うじゃねぇか!」
「おや?なんの話かな?」
エメラルドは変わらず笑顔で言い返す。
「ふざけんな!あんたが言ったんだろ!?シークレットコードは音羽柚木って言う餓鬼が持ってるから、そいつを攫ってくるだけの簡単な仕事だと!何なんだあの黒マントの連中は!?あんなの出てくるなんて聞いてないぞ!!」
「うんうん、怒る気持ちも分かるけどさ。失敗を人のせいにしないでほしいな。けど、さすがは”元”藤田組ーー爆破のスペシャリストの早坂林太朗だ。あの手この手でオーディナルを追い詰め、更にはあんな女子高生を脅して従わせるなんて。まぁ……最後はまんまと裏切られちゃったんだけどさ」
「あの眼鏡の女を使えって言ったのもあんただろ!?」
「いやぁ悪いね?おかげで面白いものたくさん見れたよ。そう怒らないでよ?君の爆弾はどれも凄かったよ特にーー駅爆破は見物だった」
「ふ、ふざけるな!!あれは俺じゃない!!俺はやってない!!」
「あれぇ?おかしいなぁ?」
ここに来てエメラルドの笑みが強くなり、月光を影にその不気味さはまるで悪魔のようだった。
「ま、まさかあんた……!俺を嵌めたのか!?」
「あそこで僕が駅を壊したのは、僕の後輩を更なる強者に育てるためさ。分かったかい踏み台君?」
「意味が……分からない……!」
「だからわざわざ、あの場にヤクザの強ーいを三人向かわせたんだ。ウチの後輩君が死ぬ可能性もあったけど、あれでくたばるような男なら、僕はもう面倒見切れないよ」
エメラルドの一人語りに、早坂はただ唖然と首を左右に振るしか出来なかった。
「知らない……!俺は何も知らない……!」
「滑稽過ぎるだろ?そこに転がってる大門という敗北者に、リベンジの機会を与えてやったのも僕だ。君達は、まんまと僕が用意した台本の上で、無様に踊ってくれたってわけ」
「……あんたは一体何のために!?」