No.165 "コンポジットカスタムライフル"
そのずっしりとした外形から、ルビーは首を傾げて考察した。
「これはスナイパーライフル……!M40シリーズに造形が似ているが……!いや、しかしこれはーー」
ここまで言ったところで、それを持つ奈留は思わず言い返す。
「な、なんの事ですか!?私、銃なんてアニメや映画でしか見たことないですよ……!?」
しかし何も分からない奈留でも、このライフルの有り得ない特徴に気がついた。
「いいか露草奈留!よく聞けよ!?お前のそのアプリ、『コンポジットカスタムライフル”』は、使用者に最も適応する形として現れる!その証拠にこのライフルはーー銃身が通常のライフルの倍以上長く、そして本来ライフルの眼となるはずのスコープが存在していない!」
本来射程限界距離を引き延ばす役割の銃身だが、これが倍以上長いということは、それだけ遠くの標的を狙い撃てるという事になる。
しかし肝心のスコープがそもそも無いということは、いくら射程が長かろうが、標的を見ることが出来ない。
「と、とりあえず……えっと……これでヒーローさんを助けられますよね!?」
奈留は分からないまま、それを持って床に伏せた。
そして映画か何かを思い出しながら、見様見真似でライフルを構えた。
「お、お前……!」
「考えている時間は無いみたいです……!大丈夫です!スコープは無くても私、しっかり”見えてます”!」
これは露草奈留に最も適応されるライフル。
奈留の超視力がスコープ不要と判断し、そして遠距離狙撃を可能にする長い銃身となった。
一見馬鹿げた話だが、奈留の助けたいという想いがひしひしと伝わってくる。
「お前……そこまでしてあいつを」
「私は弱くて小さいただの高校生でした……!ですがヒーローさんやルビーさん達に出会って、それだけじゃ駄目!変わらなくちゃ!って思ったんです……!悲劇のヒロインはもう嫌なんです!もう何かを失うのは嫌なんです!」
奈留は覚悟を決め、涙を袖で拭いーー肉眼で数十メートル先の敵を狙い付けた。
ルビーはたった今誕生した後輩に、思わず笑って言い返した。
「あぁそうだな!奈留!一緒にあの馬鹿を助け出そう!」